収益の半分を「サブスク」で稼ぐ、動画メディアの試行錯誤:2万7000人の有料会員を持つTYTネットワーク

デジタル動画ニュースパブリッシャーであるザ・ヤング・タークス・ネットワーク(The Young Turks Network:以下TYTネットワーク)は2017年8月、ハリウッドの大御所であるジェフリー・カッツェンバーグ氏の持ち株会社WndrCoから2000万ドル(約22億円)を調達した。これはTYTネットワークが有するサブスクリプションビジネスを拡大するためだ。そして1年後のいま、彼らは見事に成長を見せている。しかし、苦難がなかったわけではない。

TYTネットワークは、「2万7000人を少し上回る有料会員」を抱えている。有料会員たちは1カ月に5ドルから10ドルを支払い、彼らの番組を広告なしで視聴することができ、また限定番組といった特典を受けることができると、CEOのセンク・ウイグル氏は言う。昨年の8月の段階でTYTネットワークは3万人の有料会員がいると述べていたが、ウイグル氏は現時点では、あれは間違いであったという。「ウェブサイトの技術的な問題が原因で、誤った数字を報じてしまった」とのことだ。有料会員数の減少は起きていないと付け加えた。

今年はじめには、より低い月額の有料会員オプションを導入したTYTネットワークだが、サブスクリプション収益には増加が見られている。これまで、社全体の収益の30%程度がサブスクリプション収益から来ていた。これは広告やマーチャンダイズも含まれる。しかし、ここから成長を見せ、いまではウイグル氏によると、社全体の「ほぼ50%」がサブスクリプション収益となっているという。実際の数字、そしてビジネス自体が利益を出しているかについては言及しなかった。

価格をめぐる試行錯誤

しかし、常にビジネスが成長していたわけではない。2018年4月にはTYTネットワークはモバイル向けアプリをローンチし、サブスクリプションビジネスを拡大しようと試みた。彼らが抱えるコンテンツすべてが1箇所で見られるようになったのは、このアプリがはじめてだった。サイト上でのペイウォールコンテンツ、無料ビデオ、そしてYouTubeやFacebook、Spotify(スポティファイ)といったプラットフォームで配信されているポッドキャストといったすべてのコンテンツだ。非サブスクライバー向けのコンテンツも含んでいるものの、アプリを利用するユーザーたちが有料会員へとなってくれることを期待しての試みだった。しかし、月額10ドルの壁は高く、思ったような成果は出なかったようだ。

有料会員数は長らく、比較的停滞した状態が続いていたが、2018年6月に変化が起きたと、ウイグル氏は言う。6月には特典の一部にアクセスできない月額4.99ドルのプランを導入したのだ。イベントや特典グッズなどが特典から外されている。テストの結果、月額が下がったことでユーザーは2.4倍も登録する傾向にあることが分かったと、ウイグル氏は言う。既存の月額10ドルを支払っている有料会員たちにも新しい低額のプランについて告知したところ、「2万3500人のうち、たった60人だけが低額プランへと移行した」とのことだ。そこから2カ月間で、有料会員数は15%も成長し2万7000人へと到達した。この大部分は10ドルプランの会員であるとウイグル氏は言う。

とはいえ、ウイグル氏の目標は、サブスクリプション収益が収益の80%を占めることだ。これを達成するためにTYTネットワークは、会員数をさらに増やす必要がある。そのためには、新しいオーディエンスを引きつけるために、いままでにないタイプの番組制作に投資するのがひとつのオプションとして存在している。TYTネットワークはそれも試したが、上手く行っていない。彼らは政治ニュース関連のコンテンツでもっとも知られており、そのなかでポップカルチャーについての番組へと拡大しようと試みたのだ。これらのポップカルチャー番組のうちいくつかは最近になって停止され、その結果スタッフの一部は解雇されている。解雇されたスタッフの人数は不明だ。

「これらの番組は個人的にはすごく気に入っていた。けれど、我々にとってのコアにフォーカスする必要がある」と、彼は言う。TYTネットワークのオーディエンスは政治的な感心が高く、先進的な考えを持っている層だ。

ユーザー体験にも投資

コアオーディエンスにフォーカスを絞り、そこからサブスクリプションへと加入してもらうために、TYTネットワークは先週ウェブサイトをモバイルアプリに似せる形でアップデートした。これによってウェブサイトでも、すべてのコンテンツが表示されるようになった。9月第1週から、5カ月間に渡る会員増加キャンペーンもはじまっている。

「我々のネットワークの歴史において、信じられないことに16年にもなるのだけれど、ウェブサイトはガムテープとワードプレスで継ぎ接ぎしたようなものだった。いまやっと、すべての番組、記事、ポッドキャストを見に来てもらえる本物のウェブサイトが手に入った」と、ウイグル氏は語った。

Tim Peterson(原文 / 訳:塚本 紺)