デジタルメディアたちは、常に収益を最大化しようと、自らが抱えるインベントリー(広告在庫)の活用法に工夫を凝らしてきました。
数あるテクニックのなかでも、特に頼りになるのが「ウォーターフォーリング」といわれています。日本語で「滝」を意味するウォーターフォーリングとは、パブリッシャーがインベントリーをマーケットからマーケットへと動かし、売上を最大化すること。
ただし、この戦術は、販売の自動化によって効率化できるという謳い文句とは裏腹に、時として非常な困難を伴うことがあるのです。
デジタルマーケティングの未来に示唆を与える用語をわかりやすく説明する、「一問一答」シリーズ。今回のテーマは、媒体側の広告販売テクニック「ウォーターフォーリング」です。
デジタルメディアたちは、常に収益を最大化しようと、自らが抱えるインベントリー(広告在庫)の活用法に工夫を凝らしてきました。
数あるテクニックのなかでも、特に頼りになるのが「ウォーターフォーリング」といわれています。日本語で「滝」を意味するウォーターフォーリングとは、パブリッシャーがインベントリーをマーケットからマーケットへと動かし、売上を最大化すること。ただし、この戦術は、販売の自動化によって効率化できるという謳い文句とは裏腹に、時として非常な困難を伴うことがあるのです。
Advertisement
エコノミストでレベニューオペレーション(売上管理)担当ディレクターを務めるダニエル・パウエル=リーズ氏は、次のように語ります。
「業界には、『プログラマティック』と言えば、簡単に実施できて、間接費も少なく済むという思い込みがある。だが、必ずしもそうとは限らない。場合によっては、異なる種類のコストが必要になり、同規模の直接取引と同じくらいの時間を要することもあるのだ」。
しかし、ウォーターフォーリングはやはり、パブリッシャーが検討すべき戦略のひとつです。今回は、一問一答形式でその初歩を説明しましょう。
ウォーターフォーリングとは何でしょう?
ウォーターフォーリングは、インベントリーから生み出す利益を最大化するために、パブリッシャーが利用するテクニックのひとつです。
どのように機能するのですか?
パブリッシャーがウォーターフォーリングを編み出したのは、アドネットワークに託した売れ残りのインベントリーから最大の利益を得るためです。ちなみにアドネットワークは、それぞれ得意分野も売上金額の歩合もさまざまです。
まずパブリッシャーは、インプレッションからできる限り多くの売上を引き出そうと、最初に歩合がもっとも高いネットワークからインベントリーの委託を開始します。それが売れ残った場合、より歩合が低いネットワークへと順に移動していき、すべてのインプレッションが売上につながるようにします。
このように、滝が上流から下流へと流れ落ちていくように運用されるので「ウォーターフォーリング」と呼ばれるのです。
でも、パブリッシャーの多くは、アドネットワークから離れはじめていますよね? いまはSSPが主流では?
確かにサプライサイド・プラットフォーム(SSP)が主流です。けれども、ウォーターフォーリングは、いまだによく実施されています。パブリッシャーは現在、アドネットワークの代わりにSSPを移動しているのです。
まずは、販売価格の高いSSP/アドエクスチェンジ(たとえば、Googleのダブルクリック・アドエクスチェンジ)にインプレッションを託すところからスタートします。そこで売れ残れば、2番目(たとえば、ルビコン・プロジェクト)や3番目(たとえば、パブマティック)のSSPへより低価格で委託し、販売できるのを待ちます。
複雑ですね。SSPは物事を簡略化するはずでは?
複雑です。複数のSSPを対象にした最適化では、テストをたくさん行う必要が出てきます。複数のプラットフォーム上には、同じインベントリーを巡って競合する可能性のある複数の買い手がいるからです。
また、それぞれのSSPの後ろには自社のマーケットシェアを増やそうとしているアドテク企業が存在するという現実が、事態をさらに複雑にしています。こうした事情から、それぞれのSSPにはお互いにうまくやっていこうという積極的な気持ちはなさそうです。
「あるSSPでは機能するが、ほかのところでは使えない技術があることは事実だ。その結果として、より複雑なインベントリーの分布に行き着いてしまう」と、先述のパウエル・リーズ氏は説明しています。
収益が増えることはよいことですが、デメリットは? 何にでもデメリットはありますね。
ウォーターフォーリングを下手に実行すると、費用がかさんでしまう可能性があります。複数のSSPが同じインベントリーを扱うため、買い手は別々のSSPを経由して同じインベントリーに対して入札をしてしまうのです。
B2B広告で知られる企業、インサイシブメディア(Incisive Media)のトレーディングデスクを統括するダレン・シャープ氏は、次のように述べています。「自分がやっていることを慎重に見極める必要がある。やり方を間違うと、別のプラットフォームならもっと高い収益を上げられたかもしれないのに、それほどでもないネットワークでインプレッションを販売してしまうことも起こりえる」。
パブリッシャーが望んでいることは?
SSP同士がそれぞれにやり取りをして、お互いのインベントリーに買い手が入札できるようにしてくれるのが理想だ、とパブリッシャーは言います。誰もが同じインベントリーを同時に目にするとすれば、販売しようとしているインベントリーの価値を上げられる、とパブリッシャーは考えます。SSP側もまた、より多くのインベントリーを見られるようになり、高い歩合での販売が容易になります。
「でもそれは、あくまでも理想に過ぎない」と、パウエル・リーズ氏も認めています。
Ricardo Bilton(原文 / 訳:ガリレオ)
Image by Dave Edens/Flickr