ヘッダー入札において、「サーバー・トゥ・サーバー接続」という手法が注目を集めてきました。今回、デジタルマーケティングの未来に示唆を与える用語をわかりやすく説明する「一問一答」シリーズでは、「サーバー・トゥ・サーバー接続」が実際にはどのように機能するのか紹介します。
プログラマティックインベントリから少しでも多くの収益を得たいパブリッシャーのあいだで、ヘッダー入札はこのところずっと話題でした。しかし、オンラインで買い手に一斉に広告入札させる、その方法には欠点があります。
ラッパータグに追加するデマンドソースが多くなるほど、ページ読み込み時間は長くなり、特にアドブロックが蔓延している昨今、パブリッシャーにとって悪夢になりかねません。ヘッダー入札を採用していないパブリッシャーは、常にそこを気にしているようです。
だからこそ、「サーバー・トゥ・サーバー接続」という手法が注目を集めてきました。これは、新しい技術ではありません。ヘッダー入札のような、一元化されたオークションという進化の方向性において着目されなかっただけで、それがふたたび開放されたといえます。
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一部の企業では、マーケット主導でサーバー・トゥ・サーバーは存在しています。業界のほかの企業は、ヘッダー入札は短期的なソリューションであり、「ハック(裏技)」と考えているようです。今回、デジタルマーケティングの未来に示唆を与える用語をわかりやすく説明する「一問一答」シリーズでは、「サーバー・トゥ・サーバー接続」が実際にはどのように機能するのか見ていきましょう。
――サーバー・トゥ・サーバー接続とはいったい何ですか?
サーバー・トゥ・サーバーは、異なる技術とプロセスの使用で、ヘッダー入札の原則的な進化をはかるものです。一元化されたオークション(ウォーターフォールではなく)が可能であり続けますが、パブリッシャーのブラウザ上でその入札が行われる代わりに、サーバー・トゥ・サーバー接続を提供する、独立したアドテクベンダーもしくはAmazonのようにこの分野を発展させているより大きなテック企業といった、その提携企業のサーバーで行われるものです。素晴らしいですね。
――でも、それはどういう意味?
「つまり、そのベンダーが手間のかかる仕事を引き受けるということを意味し、パブリッシャーはその必要がなくなる。我々には処理能力があり、インフラストラクチャを取り込むことが可能だ」と、プログラマティックプラットフォームとヘッダー入札プロバイダ、パブマティック(Pubmatic)のUKカントリーマネジャーのポール・グバンズ氏は説明しています。
――ヘッダー入札とは具体的にどのように異なりますか?
ヘッダー入札は、ウォーターフォールプロセスを平坦化し、買い手に同時に入札させることで、パブリッシャーのプログラマティック広告収益の価値増加に役立つと考えられていました。そうすることで、オークションにおける競争が促進され、パブリッシャーにとってより高い収益につながると考えられたのです。
しかし、パブリッシャーがもっとたくさんのインベントリをヘッダー入札にかけようとすると、問題が生じます。デマンドソース(パブリッシャーのヘッダーに追加される追加コード)を増やすと、ページ読み込み時間の低下につながるのです。
ラッパータグは、パブリッシャーがタグの収集を1カ所で行うことが可能なため、ある程度は役に立っていますが、サーバー・トゥ・サーバーオプションを選択することによって、理論上は、パブリッシャーがオークション入札プロセス全体をアドテクベンダーのサーバーに引き渡すことが可能になります。
――パブリッシャーにとって何を意味するのか?
主な利点は、オークションプロセスをパブリッシャーのヘッダーの外にシフトすることで、ページ読み込みの遅延リスクを回避できることです。また、パブリッシャーは、デマンドソースの数に制限を設ける必要もありません。それと同時に、パブリッシャーが取引するパートナーの数も少なくなると予測されています。なぜなら、彼らは皆、そのサーバーに統合されてしまうからです。
すでにサーバー・トゥ・サーバーオプションを使用している英全国紙、トリニティ・ミラー(Trinity Mirror)でプログラマティックの責任者を努めているアミール・マリク氏は、この方法から生まれる効率性は「信じられない」と述べます。これにより、プログラマティック広告配信を大幅にスピードアップする力が同社に与えられたとマリク氏。「プロバイダーから購入しているサーバーでのインプレッション数について、3分以内に報告が可能だ。典型的なSSPによる提示よりも、そのスピードは速い」と、伝えています。
――これに関して、ベンダー側に何か課題は?
アドテク企業の幹部らによると、これに関しては現在確認中とのこと。匿名希望のある幹部は、他人のラッパーで「入札を行う」ことを誰も望まない状況は、まだ残っているそうです。「我々の問題の一部は、ほかのアドテクパートナーを心から信頼するものは誰もおらず、そのラッパーの所有者が競争で優位に立つと、誰もが考えているということだ。それは未知のものへの恐怖であり、我々はいずれその問題を解消するだろう」と、その幹部は語っています。
――欠点は何でしょう?
パブリッシャーは、アドテクに関することと同様、彼らが認めているパートナーの責任範囲に関して、そして彼らが実際に行っている取引数について、デューデリジェンス(企業の資産価値を適正に評価する手続き)を行う必要があると考えています。
「クライアント側のソリューションをまだ使用していたときに、買い手側で取引をしていた企業について、ひとつも見落とさないように気をつける必要がある」と、インデックス・エクスチェンジ(Index Exchange)のプロダクト・シニアバイスプレジデント、ドリュー・ブラッドストック氏は述べます。
数回以上利用したあと、パブリッシャーはアドテクパートナーをより厳密に調査し、料金体系や入札プロセスのさらなる透明性を要求するようになるでしょう。「パブリッシャーは裁定取引と不透明さに後戻りできない。彼らは何が起こっているのか知ることに慣れており、我慢することはしないだろう」と、彼はつけ加えました。
――ヘッダー入札からサーバー・トゥ・サーバーへの切り替えコストは?
パブリッシャーが負担するものは何もないはずです。いくつかのアドテクベンダーは、そのように信じています。ヘッダー入札は、パブリッシャーのブラウザ内に据えられたオープンソースのコードです。「それは無料であるべきで、追加のアドテク税を課すチャンスにするべきではない」と、ブラッドストック氏。サーバーベースのオークションのこの移行は、ヘッダー入札ベンダーのさらなる統合にもつながると同氏はつけ加えています。
Jessica Davies(原文 / 訳:Conyac)
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