トラフィックシェーピングはアドテク業界ではしばらく前から行われています。特にSSPやDSPが用いる手法で、一定の水準に達しないプログラマティック広告の在庫を、メディアバイヤーや広告主の手元に届く前に、フィルターにかけて取り除く手法のことです。
しかし最近、一部のパブリッシャーがこのトラフィックシェーピングに自ら取り組みはじめています。理由はさまざまですが、最終的な目標は、販売する広告在庫をもっとも品質の高いプレミアム在庫に絞り込むことのようです。
サロン(Salon.com)、TVトロープス(TVTropes.org)、スノープス(Snopes.com)のCROを務めるジャスティン・ウォール氏はこう話します。
「我々がバイサイドまで届かないリクエストを出しているなら、そうした行為は改めなければならない。そうすることで、広告在庫の販売を代行してくれる事業者にとって、我々はより良いパートナーになれるだろう。きちんと落札される入札リクエストをしっかり精査してからSSPパートナーに送れば、不用意なリクエストや買い手がつかないリクエストをSSP側で排除する必要がなくなるため、我々はより収益性の高いパブリッシャーパートナーということになる」。
――トラフィックシェーピングとは?
トラフィックシェーピングとは、つまるところ、パブリッシャーがSSPのような中間業者に広告リクエストを送信する際、より思慮深く行動することです。しかし、これはやや「曖昧な」言い回しだと、ハッシュタグラブズ(Hashtag Labs)の創設者でありCEOを務めるジョン・シャンクマン氏は指摘しています。ハッシュタグラブズはパブリッシャーに広告運用ソリューションを提供する企業ですが、トラフィックシェーピングを支援する各種のツールも提供しています。
従来トラフィックシェーピングは、SSPとDSPがその主な担い手となってきました。彼らは基本的に、広告主の要求するカテゴリー、たとえばロケーション、ブラウザ、デバイスなどに基づいて、広告リクエストの絞り込みを行ってきました。今日、パブリッシャーがトラフィックシェーピングに対応する場合、そのための機能を内製するか、もしくはハッシュタグラブズのようなサードパーティーのツールを利用します。そして最初に送信する広告リクエストを絞り込み、その数を減らし、いわばプログラマティック取引のパイプラインの詰まりを解消するわけです。
「パブリッシャーは常に、とにかくできる限り多くの広告リクエストを送れと言われてきた」とシャンクマン氏は話します。「ある意味、トラフィックシェーピングはその対極にあるとも言える。広告リクエストをどこに、何のために送るのか、きちんと考えようということなのだから」。そして同氏は、「パブリッシャーがようやく主体的に物事を決められるようになったという意味で、これは業界の進化でもある」と付け加えます。
――トラフィックシェーピングの具体的な方法は?
パブリッシャーの行うトラフィックシェーピングにはいくつかのタイプがあります。
- 入札者単位のリクエスト
パブリッシャーがプリビッドコードにパラメータを追加して、広告リクエストをどこにどう送信するか指定する。プリビッドコードはSSPに対して広告ユニットの内容を記述したもの。この方法を活用することにより、地理的なロケーション、端末の種類、ブラウザの種類などによって、広告リクエストを絞り込むことができます。これらはごく初歩的なパラメータであるが、さらに接続速度などの変数を追加することも可能です。
- アイドル時は広告非表示
パブリッシャーのファーストパーティデータを活用すれば、サイト上のユーザーの活動状態を判断できます。そして、長時間にわたってユーザー入力がない場合は、当該ページ上の広告表示を停止できるのです。したがって、最終的にユーザーに閲覧されない広告の販売を未然に防ぐことが可能になります。
- スロットリング/スマーターリクエスト
パフォーマンスベースのトラフィックシェーピングの一形態。長期間にわたってパフォーマンスの低いSSP、もしくはパブリッシャーのフロアプライス(最低落札価格)を下回る入札を繰り返し送信してくるSSPへの広告リクエストを一時的に停止します。一定期間(パブリッシャーが実験的に設定可能)経過後、当該SSPへの広告リクエストを再開し、改善が見られるかどうか確認します。
ハッシュタグラブズは現在、トラフィックシェーピングを実施する方法として、「入札者単位のリクエスト」と「スロットリング」の2種類をクライアントに提供している。ゲームサイトの「Solitaired.com」と「Solitairebliss.com」を運営するアンワインドメディア(Unwind Media)は、このうちのひとつである「スマーターリクエスト(『スロットリング』の別称)」および「アイドル時は広告非表示」という別の戦略をテストし、採用しています。
トラフィックシェーピングはアドテク業界ではしばらく前から行われています。特にSSPやDSPが用いる手法で、一定の水準に達しないプログラマティック広告の在庫を、メディアバイヤーや広告主の手元に届く前に、フィルターにかけて取り除く手法のことです。
しかし最近、一部のパブリッシャーがこのトラフィックシェーピングに自ら取り組みはじめています。理由はさまざまですが、最終的な目標は、販売する広告在庫をもっとも品質の高いプレミアム在庫に絞り込むことのようです。
サロン(Salon.com)、TVトロープス(TVTropes.org)、スノープス(Snopes.com)のCROを務めるジャスティン・ウォール氏はこう話します。
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「我々がバイサイドまで届かないリクエストを出しているなら、そうした行為は改めなければならない。そうすることで、広告在庫の販売を代行してくれる事業者にとって、我々はより良いパートナーになれるだろう。きちんと落札される入札リクエストをしっかり精査してからSSPパートナーに送れば、不用意なリクエストや買い手がつかないリクエストをSSP側で排除する必要がなくなるため、我々はより収益性の高いパブリッシャーパートナーということになる」。
――トラフィックシェーピングとは?
トラフィックシェーピングとは、つまるところ、パブリッシャーがSSPのような中間業者に広告リクエストを送信する際、より思慮深く行動することです。しかし、これはやや「曖昧な」言い回しだと、ハッシュタグラブズ(Hashtag Labs)の創設者でありCEOを務めるジョン・シャンクマン氏は指摘しています。ハッシュタグラブズはパブリッシャーに広告運用ソリューションを提供する企業ですが、トラフィックシェーピングを支援する各種のツールも提供しています。
従来トラフィックシェーピングは、SSPとDSPがその主な担い手となってきました。彼らは基本的に、広告主の要求するカテゴリー、たとえばロケーション、ブラウザ、デバイスなどに基づいて、広告リクエストの絞り込みを行ってきました。今日、パブリッシャーがトラフィックシェーピングに対応する場合、そのための機能を内製するか、もしくはハッシュタグラブズのようなサードパーティーのツールを利用します。そして最初に送信する広告リクエストを絞り込み、その数を減らし、いわばプログラマティック取引のパイプラインの詰まりを解消するわけです。
「パブリッシャーは常に、とにかくできる限り多くの広告リクエストを送れと言われてきた」とシャンクマン氏は話します。「ある意味、トラフィックシェーピングはその対極にあるとも言える。広告リクエストをどこに、何のために送るのか、きちんと考えようということなのだから」。そして同氏は、「パブリッシャーがようやく主体的に物事を決められるようになったという意味で、これは業界の進化でもある」と付け加えます。
――トラフィックシェーピングの具体的な方法は?
パブリッシャーの行うトラフィックシェーピングにはいくつかのタイプがあります。
- 入札者単位のリクエスト
パブリッシャーがプリビッドコードにパラメータを追加して、広告リクエストをどこにどう送信するか指定する。プリビッドコードはSSPに対して広告ユニットの内容を記述したもの。この方法を活用することにより、地理的なロケーション、端末の種類、ブラウザの種類などによって、広告リクエストを絞り込むことができます。これらはごく初歩的なパラメータであるが、さらに接続速度などの変数を追加することも可能です。
- アイドル時は広告非表示
パブリッシャーのファーストパーティデータを活用すれば、サイト上のユーザーの活動状態を判断できます。そして、長時間にわたってユーザー入力がない場合は、当該ページ上の広告表示を停止できるのです。したがって、最終的にユーザーに閲覧されない広告の販売を未然に防ぐことが可能になります。
- スロットリング/スマーターリクエスト
パフォーマンスベースのトラフィックシェーピングの一形態。長期間にわたってパフォーマンスの低いSSP、もしくはパブリッシャーのフロアプライス(最低落札価格)を下回る入札を繰り返し送信してくるSSPへの広告リクエストを一時的に停止します。一定期間(パブリッシャーが実験的に設定可能)経過後、当該SSPへの広告リクエストを再開し、改善が見られるかどうか確認します。
ハッシュタグラブズは現在、トラフィックシェーピングを実施する方法として、「入札者単位のリクエスト」と「スロットリング」の2種類をクライアントに提供している。ゲームサイトの「Solitaired.com」と「Solitairebliss.com」を運営するアンワインドメディア(Unwind Media)は、このうちのひとつである「スマーターリクエスト(『スロットリング』の別称)」および「アイドル時は広告非表示」という別の戦略をテストし、採用しています。
――パブリッシャーはトラフィックシェーピングの戦略をどのように選択するのでしょうか。
アンワインドメディアで運用型広告の収益および戦略を統括するシニアバイスプレジデントのエムリー・ダウニングホール氏によると、「アイドル時は広告非表示」と「スマーターリクエスト」のテストでは、収益やパフォーマンスに悪影響を与えることなく、良好な結果が得られているとのこと。
- アイドル時は広告非表示
アンワインドメディアが運営するサイトは、ソリティアやフリーセルなど、いわゆるカジュアルゲームを扱うサイトです。その性質上、ページ上のサイト訪問者に動きがあるか否かに関するデータを豊富に集めることができます。ユーザーに1分以上動きがない場合、ダウニングホール氏によると、このユーザーに対する広告の配信を停止するといいます。
「デスクトップの広告リクエストは全体的に20%減少した。その反面、デスクトップのビューアビリティは全体的に12%増加した」とダウニングホール氏は説明する。「ビューアビリティの12%増は意味ある増加だし、パフォーマンスの改善につながりうる良い兆候でもある。とはいえ、ビューアビリティを向上させるつもりでこのテストに臨んだわけではない。あくまでも結果だ」。
アンワインドメディアが配信する広告の数は全体的に減少しました。そもそもSSPに送る広告リクエストを減らしたのだから、販売する広告が減るのは当然です。しかし、事前に排除した広告は、「こちらの設定したフロアプライスを下回る価格」で販売されていたのだから、収益に影響は出ていないとダウニングホール氏は言い添えます。
パブリッシャーへの警告として、ダウニングホール氏は「サイトによっては、このテストで収益にマイナスの影響が出る可能性もある」と述べています。とはいえ、もっとも合理的な要因や変数を見極めることがA/Bテストの役割です。
- スロットリング/スマーターリクエスト
アンワインドメディアではユーザー単位およびセッション単位で広告ユニットを販売しています。テストを担当したチームは、各広告ユニットについて2つのパラメータを設定し、SSPへの広告リクエストの送信を継続するか否かを判断しました。ひとつ目のパラメータは一定の時間(このケースでは3分)で、ふたつ目のパラメータは、SSPが広告リクエストに対してアンワインドが設定したフロアプライスを下回る価格を返してきた回数(このケースでは3回)でした。
「あるSSPが3分間に3回連続で応札しなかった場合、当該のユーザーに関しては、このSSPの呼び出しを停止した」とダウニングホール氏は説明します。さらに、一定の時間(さまざまなテスト段階で実験)が経過した後、このSSPの応札態度が改善されていれば、広告リクエストの送信を再開するそうです。
- 入札者単位のリクエスト
このトラフィックシェーピングがもたらす結果について、シャンクマン氏は詳しい数字を公開していないが、概してダウニングホール氏の報告に近い結果を計測しているといいます。
――トラフィックシェーピングはオープンマーケットプレイスの在庫にのみ適用されるのか?
そんなことはありません。シャンクマン氏は、「熟慮の末に広告リクエストを送信するというのは、トラフィックシェーピングの説明としてはあまりに大雑把だし、それはプログラマティックに行われる取引すべてに言えることだ」と述べています。もっと具体的な例としては、パブリッシャーが「Safariブラウザの広告リクエストをプライベートプログラマティックマーケットプレイスにのみ送信」と設定するなどです。
――パブリッシャーがトラフィックシェーピングを行うべき理由は?
本稿の執筆にあたって取材したパブリッシャーおよびアドテク企業の幹部たちによると、トラフィックシェーピングはインプレッション単価(CPM)の改善や低炭素化に貢献するなどのメリットがあるといいいます。
- 収益最適化
- サステナビリティ
- SSPの支持獲得
- ユーザーエクスペリエンスの向上
トラフィックシェーピングは間違いなくデマンドパス最適化です。このため、データ処理に使われるコンピュータの処理能力を軽減し、パブリッシャーのスコープ3にまつわる温室効果ガスの排出量削減に貢献します。他方、それは理論的にはSSPが行う作業量を減らすことにもなり、SSPとの取引関係上、パブリッシャーにとっても朗報です。
さらに、ダウニングホール氏は「サイト上の広告を減らすことでユーザーエクスペリエンスが向上する」とも述べています。「我々の製品部門は広告リクエストの効率化という構想を歓迎している。ユーザーのセッションが深まるに伴い、いくつかのSSPをオフにすれば、それだけページの負荷が軽減されるからだ」。
――トラフィックシェーピングによって収益はただちに改善するのでしょうか。
ダウニングホール氏、シャンクマン氏、ウォール氏は、パブリッシャー側で行うトラフィックシェーピングが、ゆくゆくは運用型広告の収益に良い影響をもたらすと考えていますが、三氏いずれもが「これは短期的な収益向上を実現するものではない」と警告しています。むしろ、プログラマティック取引の入札の流れを長期的に効率化することで、落札率やCPMの改善を期待するものなのです。
「CPMを短期的に、あるいは実験段階で改善する方法として、トラフィックシェーピングの実施を考えたことは一度もない。常に赤字を出さないことに重点を置いてきた」とダウニングホール氏は話します。そして、SSPやその先のDSPに送信される入札リクエストを経時的に効率化することにより、このパブリッシャーに関連するSSPやDSPの収益性も改善されるだろうとも述べています。収益に悪影響が出ない限り(そしてダウニングホール氏によると、現状で悪影響は見られない)、テストは成功と見なしているようです。
一方、ウォール氏は、トラフィックシェーピングの実証実験を最初に実施した4月と5月に、短期的なグロス売上に「数ポイント」の減少が見られたと認めています。しかし同氏は、早ければ9月にもこの努力が実を結び、売上の側面でもトラフィックシェーピングの価値を証明できるだろうと期待しているようです。
「無駄をそぎ落とすという方向性を維持し、パブリッシャーとして送信するに値しない、あるいは販売するに値しない入札リクエストを判断できれば、そうする価値のあるリクエストの価格をいまより高く設定できる」とウォール氏は話す。「真実良質な広告機会を、劣悪と分かっている機会と同じ開始価格で販売するなら、パブリッシャーが諦めざるを得ないマージンが最初から存在しているということになる」。
Kayleigh Barber(翻訳:英じゅんこ、編集:分島翔平)