先日、Amazonがラッパー(Wrapper)タグを検討していることを発表。Amazonの発表がパブリッシャーに影響する可能性があることは明らかだったが、ラッパーがそもそもどのように機能するのか、正確なところはそこまで明白ではなかった。一問一答形式でラッパータグのメリットとデメリットについて紹介する。
先日、Amazonが「ラッパー(Wrapper)タグ」を検討していることを発表し、ヘッダー入札がまた少し魅力を増した。今回、デジタルマーケティングの未来に示唆を与える用語をわかりやすく説明する「一問一答」シリーズでは、その「ラッパータグ」について深掘りする。
まず、Amazonの先日の発表がパブリッシャーに影響する可能性があることは明らかだったが、ラッパーがそもそもどのように機能するのか、正確なところ、そこまで明白ではなかった。収益を増加させ、ページのレイテンシー(遅延)を抑制するとされているが、普通の人に理解できる説明ばかりではない。
ヘッダー入札とは、パブリッシャーがアドサーバーを呼び出す前に、インベントリー(在庫)を複数のアドエクスチェンジに同時に出すプロセスだ。ラッパー以前に、このヘッダー入札自体がすでに十分にややこしい。ラッパータグについての解説を以下で行なう。
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――ラッパータグとは?
インデックス・エクスチェンジ(Index Exchange)のテクニカルオペレーション担当バイスプレジデント、ガブリエル・デウィット氏によると、ヘッダーのラッパーは、複数の入札要求を同時に収集し、アドサーバーに送信する前に応答するJavaScriptの文字列だ。ラッパーはまた、パブリッシャーのWebページに実装する追跡、分析、ビューアビリティといったサービスのための、さまざまなアドテクのタグを収集する。ラッパーが収集したアドテクのタグは、通常、外部のクラウドベースのサービスやコンテンツ配信ネットワークを通じて一元的にホスティングされる。
――なぜ、それが重要になるのか?
タグを1カ所に集めることで、パブリッシャーによるタグの管理と変更が簡単になるのだ。
プログラマティック企業であるグッドウェイ・グループ(Goodway Group)の最高執行責任者(COO)ジェイ・フリードマン氏は、次のように説明する。「ラッパーがなかったら、パブリッシャーがヘッダータグを変更するたびに、広告担当者が(手作業で)古いヘッダータグを新しいものに置き換えていく必要がある。しかし。ラッパーがあれば入り口ができ、そこに一度コードを置いて機能することを確かめ、それから別のインターフェイスでコードの変更にあたればよいので、実際のページをいじらなくてよくなるのだ」。
また、パブリッシャーはラッパーでヘッダー入札の基準を定めることができる。たとえば、パブリッシャーはラッパーを使って、反応に時間がかかりすぎる入札者を取り除く「ユニバーサルタイムアウト」を採用することが可能だ。
――時間切れがなにか関係があるか?
ヘッダー入札への主な批判として、パブリッシャーがタグを追加するたびに、ページのレイテンシーが拡大する原因になるかもしれないというのがある。しかし、ユニバーサルタイムアウトでは、入札者の反応時間の上限を設定し、それを超えた入札者を除外するので、レイテンシーの削減につながる。
たとえば、パブリッシャーのヘッダー入札のパートナーが4社で、タイムアウトを100ミリ秒に設定しているとする。3社が100ミリ秒以内に入札し、1社が入札に150ミリ秒かかったとすると、最初の3社の入札は次に進むが、最後の1社は遅かったため取り除かれることになる。最後の1社のようなパートナーを時間設定で除外していくことで、ページのレイテンシーを抑えられるのです。
アドテク企業のイールドボット(Yieldbot)のエンジニア、ジョン・エリス氏は、標準のタイムアウトでも「ほかの入札者よりも遅れることが多い入札者に関するレポート分析を公表する」とし、パブリッシャーのプラスになるだろう語っている。
――欠点はあるのか?
ヘッダーラッパーの開発者は、ラッパーは収益を増大させ、ページのレイテンシーを抑え、タグの管理を簡単にすると主張している。この主張は本当かもしれないが、開発者には自分たちの製品を良いようにいう動機があるのも事実。
ラッパーには無料で使えるものがあるが、有料のものもある。コストが増える可能性があるほかに、ラッパーを実装するために一緒に仕事をするサードパーティーがさらに増えることに、パブリッシャーはうんざりするかもしれないと複数の情報筋が語った。また、無料のラッパーでも、ラッパーの利用が習慣化すれば、この先、料金を払うことになるかもしれないという懐疑論がある。加えて惰性も、新たな施策としてのラッパー採用を躊躇する要因となり得る。
「ラッパーは非常に変えにくい」と語るのは、デジタルエージェンシーのコンバーサント(Conversant)でバイスプレジデントを務めるヘザー・スワレンズ氏。「パブリッシャーがいったんラッパーを組み込み、リソースを費やして各アダプター向けに設定を完了すると、その後、そのタグを入れ替えるには相当の労力が必要になる」と同氏は語った。
Ross Benes (原文 / 訳:ガリレオ)
Image via Thinkstock / Getty Images