キーワードブロックリストに比べると、シャドウブロックリスト(shadow blocklists)は業界で広く知られておらず、論争の的にもなっていません。しかし、市場が低迷しているあいだは、出版社の収益にダメージを与え、厳しい結果を招く可能性があります。
キーワードブロックリストに比べると、シャドウブロックリスト(shadow blocklists)は業界で広く知られておらず、論争の的にもなっていません。しかし、市場が低迷しているあいだは、出版社の収益にダメージを与え、厳しい結果を招く可能性があります。
シャドウブロックリストは仕組みが複雑で、名前の通り、少し不明瞭なところがあります。それでは、シャドウブロックリストについてわかっていること、そしてシャドウブロックリストはどのように機能するか、そして潜在的な脅威を解説しましょう。
いつもの「一問一答」シリーズで解説します。
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──シャドウブロックリストとは何ですか?
まず知っておいて欲しいのは、シャドウブロックリストは文字通りのリストではないということです。シャドウブロックリストは包括的な言葉で、バイヤーがパブリッシャーに理由を伝えることなく、悪質なパブリッシャーを回避するためのアルゴリズムを使用することを意味します。パブリッシャーはその結果、バイヤーが何らかの理由でインベントリー(在庫)への入札をやめたことに気付くか、一切の変化に気付かないかのどちらかになります。後者の原因は、広告枠の販売に利用しているアドテクベンダーが問題を通知しないことです。いずれにせよ、パブリッシャーは売上を失います。
パブリッシャーのマネタイズ支援を行うパブギャラクシー(PubGalaxy)で、マーケティング責任者を務めるボリス・シュテレフ氏によれば、テックサイトのXDAディベロッパーズ(XDA Developers)は最近、一晩で売上が30%減少するという経験をしました。GoogleのDSP(デマンドサイドプラットフォーム)であるDV360が広告枠の購入を停止したためです。パブギャラクシーは問題の解決を依頼され、2019年10月に調査を開始。5カ月にわたる試行錯誤の結果、2020年2月、GoogleのDSPがようやく入札を再開しました。それでも、どのようにシャドウブロックリストから逃れることができたのか、調査チームですらはっきりわかっていないと、シュテレフ氏は述べています。
──シャドウブロックリストがパブリッシャーにとって難題である理由は?
多くのパブリッシャーはDSPとそれほど近い関係ではなく、インベントリーへの入札を停止した理由を尋ねることができません。なので、XDAディベロッパーズの幹部たちが気付いた通り、答えを得るのは容易ではありません。「Googleはマーケットプレイスの両サイドを所有しているかもしれないが、両者は異なる存在だ。そのため、パブリッシャーが広告枠を販売する側に問い合わせても、デマンドサイドが機能していない理由はわからない」と、シュテレフ氏は説明しています。
また、たとえマーケットプレイスの両サイドと話すことができても、答えを得られるとは限りません。「Googleはシステムのアルゴリズムを明かしたがらない。アルゴリズムを欺く方法を見つけられては困るためだ」と、シュテレフ氏はいいます。
シャドウブロックリストはGoogleだけの問題ではありません。Googleは、パブリッシャーのオンライン広告売上の大きな部分を占めるため、Googleが広告枠の入札を停止した場合、パブリッシャーにとってわかりやすいというだけです。
パブギャラクシーの収益、アカウント管理チームを率いるミレラ・コラロワ氏は、「だからこそ我々は、パブリッシャーのパフォーマンス低下を分析するとき、パフォーマンスに影響を及ぼし得るすべての要因を調査している。(シャドウブロックリストの)影響は目に見えないことがあるためだ」と述べています。
──広告が何らかの理由でブロックされていると気付いたらどうすればよいのでしょう?
まずやるべきことは、サイトが広告売上を得るため、明らかに不適切または不正な行為を働いていないかをチェックすることです。これは時間と労力を要するプロセスで、パブギャラクシーはさまざまな仮説を検証しました。具体的には、XDAディベロッパーズのサイトにやって来るボットのトラフィックを分析したり、エージェンシーに入札してもらい、GoogleのDSPがページにどのようなラベルを付けているかを確認したりしました。
調査チームは最終的に、問題の原因と思われるものを特定しました。XDAディベロッパーズはアフィリエイト、コメント機能の管理を、ふたつの企業に委託していました。これらの企業は取引の一環として、XDAディベロッパーズの広告も管理していたのです。通常、ページに好ましくないコンテンツが含まれているという理由で、Googleまたは別のアドテクベンダーが広告枠に入札しないと決定した場合、パブリッシャーにはその通知が転送されます。しかし、今回の場合、アフィリエイト企業もコメント企業も、パブリッシャーのインベントリー販売は業務の一部でそこまで深く関わっていないため、通知の転送は不要と判断したようだと、コラロワ氏は説明しています。そうした通知を「何年も」受け取りながら、パブリッシャーは知らされていなかったそうです。
「パブリッシャーがページの違反に気付いてすぐ、すべてが解決した」と、コラロワ氏は述べています。「違反がなくなって1日後、需要が戻ってきた」。
──誰が販売しているか注意する必要があると
これは、売上の抑制につながる問題であり、疑うことを知らない多くのパブリッシャーに関係する問題です。事実、パブギャラクシーは別のパブリッシャー2社から依頼を受け、同様の調査を進めていると、コラロワ氏は述べています。アドテクベンダーの幹部たちも、XDAディベロッパーズの調査をきっかけに、パブリッシャーサイドの懸念にようやくスポットライトが当たったと考えています。あるアドテクベンダー幹部は、シャドウブロックリストは新しい言葉ではあるものの、問題は「本物」だと断言します。
メディアコンサルティング企業WLxJSのCEO、ジョン・ドナヒュー氏は「結局のところ、XDAの物語の要因は、過剰なマネタイズ、誰が販売しているかに関するガバナンスとコントロールの欠如にある」と指摘しています。「誰が購入しているかを気にするのであれば、パブリッシャーはまず、誰が販売しているかを気に掛け、そこをしっかり管理すべきだろう」。
──広告主も気に掛けるべきでしょうか?
広告主が入札したインプレッションをどれくらい気に掛けているかによります。ほとんどの広告主はインプレッションをそれほど気に掛けておらず、シャドウブロックリストが懸念材料になることはありません。シュテレフ氏は次のように説明しています。「広告枠を購入しているサイトをどのように評価すべきかを、本当の意味でわかっている広告主は少ないと思う。彼らはプラットフォーム(アドテクベンダー)にその仕事を任せているからだ」。
原文:[WTF are shadow blocklists and how they can take a bite out of publisher revenue]
SEB JOSEPH(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:Kan Murakami)