インタラクティブ広告協会(Interactive Advertising Bureau)のテックラボ(Tech Lab)は3月13日、app-ads.txtの最終版をリリース。今回のデジタルマーケティングの未来に示唆を与える用語を説明する「一問一答」シリーズでは、app-ads.txtをご紹介します。
オンライン広告を対象にした業界の詐欺防止イニシアティブの適用範囲が、ついに公式にOTT(オーバーザトップ)とモバイルアプリ内広告にまで広げられることになりました。
インタラクティブ広告協会(Interactive Advertising Bureau:以下、IAB)のテックラボ(Tech Lab)は2019年3月13日、app-ads.txtの最終バージョンをリリース。これは、広告主がモバイルやOTT広告に使っている資金を吸い上げるために、別の会社のアプリになりすます悪人たちと戦うことを目的としたものです。app-ads.txtにはオリジナルのads.txtと似ている部分が多々あるものの、イニシアティブを採り入れようとする広告主やパブリッシャー、アドテクベンダーの取り組みを複雑にするであろう重要な違いがあります。
今回のデジタルマーケティングの未来に示唆を与える用語をわかりやすく説明する「一問一答」シリーズでは、そんなapp-ads.txtについて知るべきことをご紹介します。
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――ads.txtは知っていますが、app-ads.txtはどのようなものですか?
モバイルアプリ内広告やOTT広告向けのads.txtのバージョンです。モバイルアプリやOTTアプリのパブリッシャーは、彼らのインベントリー(在庫)を販売または再販することを認められたアドテクベンダーをリストにでき、プログラマティックアドバイヤーはそうしたリストをチェックして、アプリのインベントリーを提供すると主張している企業が実際にアプリのインベントリーを販売できるか確認できます。こうして広告主は、たとえばESPNのモバイルアプリやOTTアプリ内で広告を買っていると思っているものの、実際には詐欺師に資金提供しているような事例を軽減できます。詐欺師は、プログラマティック広告のサプライチェーンは歴史的に見て透明性が欠如しているので、プログラマティック広告の広告主は簡単にマークできると思っているのです。
アプリのなりすましを減らすことは、モバイルアプリ内広告やOTT広告にとっていくつかの理由で重要です。アドフラウドはモバイルアプリ内広告で大きな問題になっています。人々は頻繁にスマートフォンを使っているので、広告主がたくさんの資金をモバイルアプリ内広告に費やしていることを詐欺師は知っています。そして、アドフラウドはまだOTTアプリには広がっていませんが、悪者がOTTインベントリーを買っている広告主から詐取する方法はいろいろあり、OTTに投資する広告主が増えるほど、ちょうどモバイルアプリ内広告で起こったのと同じように、そうした行為に走る悪者も増えるでしょう。
――しかし、すでにads.txtがあります。なぜ、モバイルアプリ内広告やOTT広告に別バージョンが必要なのですか?
理由はふたつあり、そのふたつには関連性があります。第一に、アプリパブリッシャーは彼らが認めた販売業者と再販業者のリストをウェブサイトに向けて発行し、プログラマティック広告のバイヤーが簡単にリストにアクセスできるようにする必要があります。そうしたリストはapp-ads.txtファイルと呼ばれていて、ads.txtファイルと同じように書式化されています。これがads.txtの機能の仕方で、(企業が正しく実行している限り)これまではそれでうまくいっていました。第二に、プログラマティック広告のバイヤーは、パブリッシャーのサイトに上がっているリストが彼らが買おうとしているアプリインベントリーに対応しているかを確認できるようにする必要があることです。
――app-ads.txtはどのようにしてモバイルアプリやOTTアプリと関連付けられるのですか?
IABテックラボは、アプリストアがオンラインで発行するアプリリストを通じて、アプリストアが各アプリリストに対してHTMLコードを追加して、ウェブサイトのドメインやバンドルID、ストアIDを提供することを期待しています。ウェブサイトのドメインは、バイヤーがオンライン上でパブリッシャーのapp-ads.txtファイルを見つけられる場所を指し示し、バンドルIDやストアIDは、アプリがプログラマティックに販売するためのアドインプレッションを持っている場合に、入札リクエストに含まれているバンドルIDやストアIDと照合されるものです。
――IABテックラボがアプリストアによるそうしたコードの追加を望んでいるという理由は何ですか?
ほとんどのアプリストアがそうしていないからです。アプリストアのサポートは、app-ads.txtが開発されているときの大きな障害でした。アプリストアのサポートがなければ、パブリッシャーのサイトにあるapp-ads.txtファイルが特定のアプリに対応していると確認する確かな方法がなにもありません。
――app-ads.txtをサポートしているアプリストアはどこですか?
現時点では、AndroidとAndroid TVアプリを対象にしたGoogleのアプリストア「Google Play」だけです。Googleがいち早くサポートを表明したことは、プログラマティック広告の巨人が数年前に、広告主やパブリッシャーにads.txtの採用をどうやって促したかを考えれば、さほど驚くことではありません。Googleのモバイル向けオペレーティングシステムであるAndroidがモバイル広告詐欺の特に人気の標的であることに言及しておくことも重要です。
いまのところ、AppleやAmazon、Roku(ロク)などの大手モバイルアプリ・OTTアプリストアのいくつかはapp-ads.txtをサポートしないであろうことが、彼らのオンラインアプリストアのリスト用コードをレビューすればわかります。そして、サムスン(Samsung)は、自社のスマートTVプラットフォーム上で動いているアプリ向けリストをオンラインで発行しないようです。Rokuは今後の計画についてのコメントを拒否しましたし、Apple、Amazon、Samsungはまだ、app-ads.txtをサポートする計画についての質問に回答していません。
――他の大手アプリストアがapp-ads.txtをサポートしなければ、どうなりますか?
頭の痛いことがいろいろ出てきます。まず、アプリストアがアプリリストをオンラインで発行するかどうかが問題です。そうでなければ、app-ads.txtは基本的に、そうしたアプリでは機能しないでしょう。Apple、Amazon、Rokuのようなアプリストアがアプリリストをオンラインで発行する場合は、そうしたオンラインのアプリストアのリストがアプリのパブリッシャーのウェブサイトのURLを含んでいるかどうかによります。AppleとAmazonはアプリストアのリストにパブリッシャーのウェブサイトのURLを含んでいます。Rokuはそうしていないようですが、オンラインのアプリリストはパブリッシャーサイトのプライバシーポリシーへのリンクが特徴になっていて、それを利用してパブリッシャーのapp-ads.txtファイルが同じドメイン上でホストされていたら、それを見つけられます。いずれのケースも、app-ads.txtファイルのチェックツールを開発している企業は、それぞれのアプリストアに合わせてツールに工夫を施してパブリッシャーのURLを見つけられるようにする必要があるでしょうし、パブリッシャーは、そうしたURLがapp-ads.txtファイルをホストしているドメインと一致することを確かめる必要があるでしょう。
――つまり、ads.txtの時がそうだったように、パブリッシャーや広告主、ベンダーがapp-ads.txtを採用するまでにはもう少し時間がかかるだろうということですか?
ええ、そうですね。
Tim Peterson(原文 / 訳:ガリレオ)