MANAGING THROUGH CRISIS

日本のパブリッシャーが、いまを生き抜くための5つの要素:DPS 2021 の振り返りとして

さまざまな困難は残されているものの、日本のパブリッシャー業界は大きな転換期を迎え、力強く前進しはじめているようだ。

DIGIDAY[日本版]は3月25日、メディア業界のエグゼクティブが集うイベント「DIGIDAY PUBLISHING SUMMIT 2021(以下、DPS2021)」をザ・リッツ・カールトン東京で開催した。例年なら京都ブライトンホテルにて1泊2日で開催していたが、今回はコロナの煽りを受けて、一部規模を縮小し、感染拡大防止に最大限に務めながらの実施となった。

今回のテーマは「RESILIENCE 復活力」。パンデミックにより、まさに激動の1年となった2020年を踏まえ、広告収益の急落、リアルイベントの中止などの悪条件から、いかに復活してきたかを議論しあった。

DPSでは毎回、編集長の私・長田(おさだ)が、イベントの内容をラップアップする、「5 things we’ve learned」というコンテンツを用意している。この記事では、その内容を簡単に振り返る。今回、我々が学んだことは、以下の5つだ。

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1. エッジを獲得する

コロナ禍によって、すべてがストップしたかのような状態になり、やるべきこと・やらなくていいことを見つめ直した企業は多い。そうした作業のなかで浮き彫りにされたのが、なんのためにパブリッシングビジネスを行っているかだ。今回のDPS2021でも、さまざまなシーンにおいて、そんな根幹に関する言及が多く見られた。

それは、コアコンピタンス、コアバリュー、パーパスなど、さまざまな表現が用いられていたと思う。だが、しっかりと「差別化」を行い、自己を確立することで、オーディエンスとつながる重要性について、一様に訴えていた。単なる数値で測ることのできない、ユーザーとのエンゲージメント。それが、今後のビジネスの礎になると、多くの業界関係者が感じていたのだろう。

2. プラットフォーマーと共存共栄を目指す

今回のDPS2021でもうひとつのメイントピックになったのが、プラットフォーマーとの新たな関係性だ。コロナ禍によってパブリッシャーの広告収益は大打撃を受けたが、奇しくも、AppleによるIDFA利用の規制、Google ChromeにおけるサードパーティCookie利用の廃止などのニュースが報じられ、パブリッシャーに揺り戻しの目が見えてきたからだ。

プライバシーがますます尊重されるようになるこれからの世界では、パブリッシャーが保有するファーストパーティデータがより大きな価値をもつ。また、ユーザビリティの観点からいっても、質より量を求めるかつてのデジタル広告は本質的ではなかった。その意味でも、パブリッシャーがもたらすプレミアムなコンテンツの有用性が増す。

さらには、プラットフォーマーによるパブリッシャーコンテンツに対する使用料の支払いも、世界的なムーブメントとなってきた。そんななか、パブリッシャーとプラットフォーマー、それぞれの共存共栄を真剣に模索するべきときが来たように思う。

3. さまざまな面で多様化を進める

デジタル時代のパブリッシャーが口にする「多様化」は、これまで収益に関することが多かった。このコロナ禍において、その重要性はまさに証明されたといえるだろう。だが、今回のDPS2021を通して、この「多様化」という言葉には、さらに多くの意味が含まれてきたように思う。

わかりやすいところでいえば、働き方の多様化だ。リモートワークの急速な普及によって、オフィスの意味が再構築されるなか、多様な働き方が容認されるようになってきた。また都市中心の社会も、今後地方分散型になり、地域の多様性も増してくるだろう。

さらには、最近日本でも市民権を得はじめたD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の視点からも、多様なスタッフが求められるようになる。そうしたさまざまな多様化へ、いかに対応していくかが、今後のパブリッシャービジネスには求められているのだ。

4. コンテンツ&ユーザーへの回帰

これまでのDPSでは、主に広告ビジネスがトピックの中心だった。しかし、今回のDPS2021では、広告ビジネスより、サブスクリプションビジネスのトピックの方が、幅を効かせていた。フリーミアムコンテンツの時代から、プレミアムコンテンツへの時代へ。その潮目を確実に超えた感覚があった。

そんななか、参加者が口々に語っていたのが、コンテンツ回帰、ユーザー回帰という言葉だ。アドテク全盛の頃は、まさにテクノロジー(もしくはハック)でいかに収益を増やすかに注目が多く集まっていたように思う。だが、サブスクリプション時代のいまは、やはりコンテンツとユーザーを真摯に見つめ直さなくてはいけない、ということなのだろう。

5. 健康第一

そして、コロナ禍において、もっとも忘れてはならないのが、ワーキンググループディスカッションで言及されたこの項目だ。感染拡大防止に務めることは当然のことながら、リモートワークによる燃え尽き症候群や孤独感、運動不足など、このような時代だからこその健康被害も多く話題になっている。それは、パブリッシャー業界も例外ではない。前例のない大変な時代だからこそ、なにはともあれ健康第一でいまを生き抜き、新しい明日を構築していかなくてはいけない。

Written by 長田真