ハースト婦人画報社が運営する、ウィメンズヘルス(Women’s Health)の日本版が、4月10日から展開するインスタライブ番組、Workout Liveが好調だ。これまでのリアルタイム延べ視聴数は1万8000人にも及ぶという。同誌編集長の影山桐子氏にWorkout Liveとインスタライブの可能性を訊いた。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、テレビ番組の多くがリモート収録になるなど、パブリッシャーのコンテンツ作りの手法が変化。それに伴い、Zoom(ズーム)などの新たなツールが脚光を浴びるなか、ライフスタイルメディア、ウィメンズヘルス(Women’s Health)の日本版は、インスタグラムのライブ配信機能(以下、インスタライブ)に注目している。
この5月に3周年を迎えた同誌は、日替わりでフィットネストレーナーなどの講師を招聘し、ウィメンズヘルスの編集部員とともにワークアウトを行うWorkout Live(ワークアウトライブ)を4月10日にスタート。基本的に毎朝、インスタライブでの配信を行なっている。これまでのWorkout Liveの延べリアルタイム視聴数は、約1万8000人。ウィメンズヘルスのインスタグラムアカウントのフォロワー数は、取り組みを開始してから約6000フォロワーも増加した。
「ウィメンズヘルスの媒体としてのミッションは、人々の心と体を健康に保つこと。コロナ禍により外出が制限されるなか、読者の方々の健康が損なわれる可能性があるということで、Workout Liveをはじめた。室内での手軽な運動をサポートするという私たちの狙いが、世の中のニーズにマッチしたことがフォロワー増加の要因だろう」。こう語るのはウィメンズヘルス編集長の影山桐子氏だ。同氏によると、ウィメンズヘルスでは今後、ECや広告でWorkout Liveをマネタイズすることを視野に入れているという。
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影山氏は、同じくハースト婦人画報社が運営するELLE ONLINE(エル・オンライン)に、ファッションエディターとして1998年から12年間携わった後に独立。フリーエディターを数年務め、2017年にウィメンズヘルスの日本版編集長に就任した。第2回となるDIGIDAY[日本版]のPODCASTコンテンツでは、国内におけるデジタルメディアの黎明期から、業界の最前線で活躍してきた同氏に、Workout Liveとインスタライブの可能性を訊いた。以下、その音源とインタビューの要約だ。
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楽しんで継続できている
「USやUKのチームでは、先んじてインスタライブを活用していることは知っていたが、特に連携は行なっていない。もちろん、彼らの取り組みは参考にしているが、フォーマットは日本版独自だ。たとえばUSやUKの場合、毎回の配信に出演するのは、フィットネストレーナーだけだが、私たちの場合は編集部員も毎日一緒に出演する。工夫したのは、ライブ配信のホストを敢えて講師のアカウントに設定したこと。インスタライブは、ホストがスマホの2分割された画面の上部に、ゲストは下部に表示されるため、写っているゲストにコメントが被ってしまう。この課題をクリアするため、講師の方をホストに据え、ウィメンズヘルスのアカウントがゲスト参加するという、現在のフォーマットが生まれた。毎朝、編集部員が出演しなければならないのは大変だが、声を上げた編集部員が、その日のライブ配信を担当するという形で続けられているのは、皆が楽しめているからだと思う」。
プロモーションツールとして
「これまで私たちは、インスタグラムのアカウントを成長させるため、広告を配信したり外部のコンサル会社を活用するなど、さまざまな取り組みを実施してきた。インスタライブは、これらの取り組みよりも非常にコストパフォーマンスが良く、新規ファンの獲得や熱心なファンの増加に貢献している。今後に関しては、視聴者の方々におすすめ商品を紹介して販売に繋げられるような、テレビショッピングに近い、プロモーションツールとしての役割も期待している。実際、以前から弊社が運営しているECサイト、ELLE SHOP(エル・ショップ)内にオープンしたウィメンズヘルスショップで販売されている、レジスタンスバンドを使ったワークアウトを実施したところ、レッスン終了後にバンドがすべて完売してしまった」。
インスタライブの可能性
「インスタライブで変わると感じているのは、イベントのあり方だ。昨年、ウィメンズヘルスでは、フィットナイトアウトという1000人規模のリアルイベントを2回実施したのだが、1000人規模となると、会場や設備のための費用がかさむ。しかしインスタライブは、リアルイベントに比べるとコストも手間もかからない。にも関わらず、約1万8000人もの参加者を獲得できる。また、同じ瞬間に身体を動かしたあと、私たちと講師、そしてユーザーのみなさんと、コメント機能を使って『お疲れ様でした』と声を掛け合える、そういったリアルタイムのコミュニケーションは貴重だ。加えて、ユーザーのダイレクトな反応をからヒントを得て、記事作りにも活かすことができる。パブリッシャーが運営するイベントのあり方に大きな変化をもたらすだろう」。
メッセージを見極める
「インスタライブに可能性は感じるが、安易なスタンスで参入するのはおすすめしない。その場で出てくる数字は残酷だ。芸能人や著名人をキャスティングすれば、瞬間的に数字は伸びる。しかし、そこに集まっているのは『そのメディアのファン』ではない可能性が高いし、持続可能性を考えると、コストがかかりすぎて現実的ではない。ユーザーが切実に求めていることは何か、そのメディアにしか伝えられないメッセージは何かを見極めることが大切だ」。
Written by KanMurakami