「メディア業界の未来について、おかしなことに楽観的だ」:コンデナスト・インターナショナルのプレジデント

ボルフガング・ブラウ氏は、国際的なパブリッシャーであるコンデナスト・インターナショナル(Conde Nast International)のプレジデントだ。同氏は、個々の国ではなく、ブランドを軸にした組織化に向けて、舵取りを行っている。

米DIGIDAYが実施したインタビューにおいてブラウ氏は、欧州の多くのパブリッシャーは、米国のテックプラットフォームの進出を嘆いている事に触れた。だが、機械翻訳を発展させれば、欧州はデジタル面で優位に立てるという。

以下、インタビューは編集して要約している。

――あなたはEU理事会議長国であるオーストリアに提言を行った。その目的は?

機械翻訳をめぐって、ある政策を提言した。EUには5億1000万人の市民がおり、24の公用語が使用されている。EUが何年も前から取り組んでいる「デジタル単一市場(the digital single market)」構想は、28の加盟国の新興企業が成功するには、著作権や消費者保護法などの画一化が必要なことを意味する。これまでに大いに前進してきたが、こうした見事に平等な場を作ることに成功すると仮定してもまだ、言語がバラバラという問題に縛られる。

EU市民の母語でリーチしたくても、どの言語であれ、EU人口の20%以上にリーチすることはできない。もっとも一般的な第二言語である英語でも、EUの50%超にはリーチできない。我々に欠けているのは翻訳だ。そこで、EUがニューラル機械翻訳の迅速な発展を主要な技術プロジェクトのひとつにすることを提案した。

通常、EUのこうしたプロジェクトには、10年間で10億ユーロ(約1300億円)以上の資金が拠出される。実現すれば、デジタル単一市場の縛りが解かれ、インターネット自体が爆発的に普及するにつれて、コンテンツや情報も同じように急増する。

――EUはこれまで何を重視してきたのか?

EUは画一化された平等な場を作ることを重視していたのだろう。中国と米国に出張し、EU域外から見ると、欧州は守勢に回っているようだ。著作権法や消費者保護、プライバシー法を保護貿易主義の手段として公然と利用していると思う。採用の理由が明確である限り、期限付きの保護貿易主義には反対しない。

――少なくとも短期的には、GDPRによって、Googleは比較的優位な立場になった。

まだ何とも言えない。私は、コンデナスト・インターナショナルが一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:GDPR)の遵守に必要だった投資額に注目している。もっと規模が小さい新興企業の場合は、どういう金額なのだろうか? それがEUに対する批判だ。こんなふうに保護貿易主義を売りにして、米国のプラットフォームからユーザーのプライバシーを守る強力な保護措置を講じたために、新興企業の進出を妨げる障壁が生じた。

たいてい資金不足である欧州のeコマース企業や、大部分が時代遅れの欧州のパブリッシャーを守る要塞を築いているのか? それとも、GoogleやFacebookに抵抗しているのと同じくらい強力に、そうした企業の近代化を推進しているのか?

――EUは、GoogleやFacebookに対して、どういうアプローチを採るべきか?

[欧州議会の最大会派である欧州人民党グループ代表の]マンフレッド・ウェーバー氏は、どうにかしてFacebookを分割することを公の場で提案した。こうした提案は、常に世論の受けがいい。だが、それでどうなるのか? 規制に全エネルギーを注ぐことになっても、Facebookに相当するプラットフォームが欧州に登場するわけではない。そういったプラットフォームはすでに別の形で規制されている。規制の目的が何なのか疑問に思う。規制によって、デジタル面で欧州の競争力が大きく変化するのか、変化しないのか?

欧州は、米国のデジタル業界と中国のデジタル業界に挟まれて押しつぶされようとしている。民主的な会話が行われる場は、ほとんどの場合、米国のプラットフォームだ。店舗のレジはアリペイ(Alipay)に対応している。ドイツとイタリアでは、「ミュージカリー(Musical.ly)」が急成長している。言語がバラバラという障害を解消せずに、どうやって欧州市場で優位に立てるのか? 欧州がこの障害を解消しなければリスクがある。動機は米国より中国のほうが大きい。欧州は、言語翻訳のAPIを中国に掌握されたいのか?

――コンデナスト・インターナショナルのプラットフォームとの関係は、この3年間にどう変化したか?

米国のプラットフォームはいまでは、我々がすべてのソーシャルメディアプラットフォームで強力な存在感があることを理解している。FacebookやYouTubeと比べて、中国でもっと魅力的な商業モデルがある。私は米国のプラットフォームと対話して、「一緒にこれを行う必要はない」というのが好きだ。中国のプラットフォームは欧州のパートナーを探している。そういう恵まれた立場にある。ユーザーのプライバシーと監視という明らかな問題があるが、「WeChat(微信)」のインターフェースは、Facebookの「WhatsApp(ワッツアップ)」や「Messenger(メッセンジャー)」よりもはるかに優れている。

――2015年にコンデナスト・インターナショナルに加わったときよりも、雑誌およびメディア業界について楽観的か?

おかしなことに楽観的だ。ブランドの重要性についてもっと多くのことを学んできた。パブリッシングに成功したい場合、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)のように、確証のあるごくわずかな新聞のひとつか、フィナンシャル・タイムズ(The Financial Times)のようなB2B企業であれば、最良の立場にある。それに、「Vogue(ヴォーグ)」や「アーキテクチュラル・ダイジェスト(Architectural Digest)」のような、世界的なニッチ市場を抱えているごく少数のブランドがある。トピック別のこうしたニッチ市場に参加するブランドは、国際的である必要がある。そうでなければ、規模の経済を達成できないからだ。

Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)