仏日刊紙「ル・モンド(Le Monde)」は、アドブロック利用者に対して、2度の閲覧までは、丁寧にその解除依頼を行なうが、それでもユーザーが応じない場合は、強硬策に踏み切ることにした。アドブロックを無効化しない限り、コン […]
仏日刊紙「ル・モンド(Le Monde)」は、アドブロック利用者に対して、2度の閲覧までは、丁寧にその解除依頼を行なうが、それでもユーザーが応じない場合は、強硬策に踏み切ることにした。アドブロックを無効化しない限り、コンテンツへのアクセスを遮断するというのだ。
「我々は、閲覧された記事の2ページ目または3ページ目に、より厳しいメッセージを提示する予定だ。アドブロックを無効化しないかぎり、記事は読めないようにする」と、「ル・モンド」のアナリティクス部門を率いるピエール・ビュッフェ氏は説明する。同氏は、今後も新たな実験を試みる可能性は高いが、それがどんな実験になるかは未定だと付け加えた。
コンテンツを遮断するというアプローチは、ユーザーにアドブロックの無効化を依頼することで一定以上の成功を収めてきた「フィガロ(Le Figaro)」のアプローチと似たものになる。また、これまでフランスのニュースパブリッシャー数社は、連携してアドブロックに対抗してきた。出版業界団体ジェスト(Geste)の指揮のもと、1カ月に渡る実験を3月と9月に実施している。
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強硬策に踏み切る経緯
「ル・モンド」は、サイト訪問者の20%がアドブロックをインストールしていることを把握。そこで、8月にいくつかの異なるメッセージを試した。ひとつ目は、以前の実験で利用した、ジェロム・フェノグリオ編集長の写真と、「ル・モンド」の広告収入モデルの短い説明が添えられた、アドブロック解除依頼メッセージだ。
ふたつ目は、さらに掘り下げて、「ル・モンド」が多くの記者を抱えていること、質の高いジャーナリズムの追求にはコストがかかることを説明し、さらにアドブロックに関するイラストも添えたものとなる。その結果、こちらのメッセージのほうがホワイトリストに追加してもらうのに有効だったため、翌9月の実験ではこちらを使用したという。
その際にも、コンテンツ遮断には踏み切らなかった。メッセージのみでも、アドブロック利用者の14%が「ル・モンド」をホワイトリストに入れ、13%だった以前の実験をわずかに上回っている。だが、12月に再度実施される実験では、実力行使に打って出る。
アドブロック利用者の気持ち
ふたつのメッセージを試す前、「ル・モンド」のページビューのうち27%でアドブロックを検知。実験のあいだ、この割合は22%にまで減少した。しかし、同社は使用率がまた上昇すると予想している。「アドブロックをオフにした人が、いずれまたオンにするのはわかっている」と、ビュッフェ氏は語った。
だが、「アドブロックを設定する読者の気持ちはよくわかる」と、ビュッフェ氏は付け加える。「押しつけがましいし、ユーザーフレンドリーではない。我々も広告が多すぎるのは認識しているが、広告売上なしではやっていけないのも確かだ」。
「ル・モンド」がこれまで、コンテンツ閲覧を遮断するという強硬策をとらなかったのは、トラフィックを失うのを恐れているから。今後の実験で、コンテンツの遮断を実施する計画とはいえ、2回目か3回目のページビューではじめてメッセージを示すのは、売上の大幅な減少を避けるためだ。調査の結果、アドブロック利用者は非利用者よりも頻繁にサイトを訪問し、閲覧するページ数も2倍に上ることがわかっている。
根本的な原因対処が必要
「アドブロックのことで泣き言を言いながらも、我々は広告ポリシーを変えていない」と、ビュッフェ氏は打ち明ける。「Webサイトの大改革を実施して、根本的な原因に対処しない限り、我々に勝ち目はなさそうだ」。
フランスのほかのパブリッシャーについても見通しは同じだが、彼らの一部は、独自のユーザーフレンドリーな広告ポリシーを打ち出している。先述の出版業界団体ジェストと仏インタラクティブ広告協議会(IAB)は、ユーザーフレンドリーな広告のために、現在ガイドラインを改訂中で、来年の発表を予定しているという。
これまでのところ、アドブロック問題が「ル・モンド」に及ぼす影響は、PCのブラウザに限られている。同社はモバイルサイトのデザイン刷新に着手したばかりだが、ここではよりユーザー体験に配慮をしている。「現状、我々には収入が必要なので、ユーザーがどう思うかには関係なく、広告を売らなければならない。とはいえ、私自身は、同じ間違いを繰り返さないよう願っている」と、ビュッフェ氏は語った。
Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)
Images: Courtesy of Le Monde, via Facebook.