アバウトドットコム(About.com)は、パーソナルファイナンスに特化したバーティカルポータルサイト「ザ・バランス(The Balance)」を新設。「アダルティング(adulting)」という新たな市場に進出した。アダルティングとは、若い世代が「大人の責任を自覚し行動すること」を意味する言葉だ。
お金の使い方についてアドバイスを求める、裕福な人々をターゲットにした情報サイトのニーズはなくなることはない。
このほど、ライフスタイル情報サイトを運営するアバウトドットコム(About.com)もパーソナルファイナンスに特化したサイトを新たに立ち上げて、「アダルティング(adulting)」という新たな市場に進出した。アダルティングとは、若い世代が「大人の責任を自覚し行動すること」を意味する言葉だ。
ファイナンス関連の記事を求めて、アバウトドットコムに訪れるオーディエンスは、半分が18~34歳で、男女比は女性に偏っている。そこで同社は、バーティカルポータルの「ザ・バランス(The Balance)」を新設。ターゲット層は、ファイナンスに関する大きな決断(年金口座の開設や、はじめての保険の購入など)を経験しようとしているヤングアダルト世代だ。
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コンテンツは個人融資、投資、マネー術、キャリアアドバイス、小規模ビジネス向けの情報など約3万4000件に上る。これらのコンテンツは以前、アバウトドットコムの「ビジネス/ファイナンス」と「仕事/キャリア」のカテゴリーに含まれていた。インターネット調査企業のコムスコア(comScore)によると、同ネットワークの7月のユニークビジター数は580万人だったという。

「The Balance(ザ・バランス)」のトップページ。
ユーザーはより専門サイトを好む
「利用者たちが人生における大きな決断を下す際に、我々はファイナンスについてちゃんと理解ができるように手助け、率直かつわかりやすい方法で情報を伝えている」と、アバウトドットコムのCEO、ニール・ボーゲル氏は説明する。「『ザ・バランス』の99%はファイナンス関連のアドバイスだ」。
「ザ・バランス」は、アバウトドットコムがローンチした第2のバーティカルポータルで、蓄積された膨大なコンテンツを、個別のブランドにアンバンドル(細分化)する戦略の一環だ。アバウトドットコムは、インターネットが成熟したいま、ユーザーは大規模なポータルサイトよりも、むしろ専門サイトを好むようになりつつあると認識している。同社のバーティカルポータル第1号は、4月に開設されたヘルスサイト「ベリーウェル(Verywell)」で、テック系のバーティカルも2016年中に発表されることになっている。
「ベリーウェル」では、親しみやすいグラフィック中心のデザイン構成と、広告と記事の読み込みを軽くしたページ構成が採用されている。アバウトドットコムは、同様のアプローチを「ザ・バランス」にも適用しているが、トピックの重みを反映させるため、ややシリアスな雰囲気を加味している。「通常のファイナンス情報サイトと若干似てはいるが、『ザ・バランス』の方が、はるかに楽しくて親しみやすいものだ」と、ボーゲル氏は語る。
狙いはミレニアル世代の富裕層
ホライズンメディア(Horizon Media)のワイグループ(WHY Group)で「トレンドサイツ(TrendSights)」部門バイスプレジデントを務めるカーク・オルソン氏は、ミレニアル世代の多くが経済的自立という課題に直面しているにも関わらず、一方で相当数が家を購入しており、自身の将来に向けた資産計画を立てているという。「トレンドサイツ」は、コンシューマーのトレンドを考察してブランドのニーズに反映させるユニットだ。
「ザ・バランス」にとっての今後の課題は、いまなおミレニアル世代を十把一絡げ(色々なものをひとまとめにすること)にする広告主を啓発することになるだろう。
「このフェーズに入ったミレニアル世代がいることを認識しているマーケターもいるが、私が見たところ、いまも多くのマーケターがミレニアル世代に対する旧来の考え方から抜け出せずにいる」と、オルソン氏は指摘する。
広告主へいかにアピールするか
ディスプレイ広告を減らすということはまた、「ザ・バランス」が同額の売上を得るために、より多くの別メニューの広告を売らなければならないことを意味する。だが、クライアントが若い消費者向けのファイナンス記事コンテンツを求めているため、必ず需要は創出される、とボーゲル氏は確信している(「ザ・バランス」は若い層に向けて、「アダルティング」という広告販売用の商品パッケージまで用意している)。
ボーゲル氏はまた、クリーンで読みやすいサイトにすることで、消費者を引き込むと同時にリピーターの増加にもつなげ、インベントリー(広告在庫)の低下を埋め合わせることを見込んでいる。
「消費者を煩わせることなく、広告主にもアピールすることで、ライバルとの差別化に努めている。我々が学んできたのは、広告主に『ノー』と言う方法だ」と、ボーゲル氏は語った。
Lucia Moses (原文 / 訳:ガリレオ)
Image from Thinkstock / Getty Images