『ワイアード』誌、OTT 事業に進出:新しいストリーミングTVチャンネル立ち上げで

『ワイアード(Wired)』誌 が初のストリーミングチャンネルを立ち上げた。オーバー・ザ・トップ(OTT)動画環境に長時間を費やす人々へのリーチが狙いだ。

7月1日にローンチしたこのチャンネルは、Apple TVやAmazonの Fire TV、Android TVで視聴できる。さらに、翌週からはロク(Roku)でも視聴が可能になった。これは、親会社コンデナスト・パブリケーションズ(Condé Nast Publications)が今年はじめのニューフロンツ(NewFronts)で発表したとおりで、同社によるストリーミングビデオチャンネルの第1弾だ。さらに、2019年には『GQ』 と『Bon Appétit(ボナペティ)』のチャンネル設立も予定しているという。

ローンチ直後の現在は、「オートコンプリート・インタビュー(Autocomplete Interviews)」や「オールモスト・インポッシブル(Almost Impossible)」、「テクニック・クリティック(Technique Critique)」といった、Wired.com および同誌のYouTubeチャンネルで、もっとも人気の高い動画が大勢を占める。今年後半に25周年を迎える同誌は、今後、ストリーミングチャンネル用に制作した動画の数を増やし、映画やテレビ番組の権利も購入して、ライブラリーを豊かにしていくという。

コネクテッドTV機器の普及

コンデナストがメディア子会社用にストリーミングビデオチャンネルの設立を決めた背景として、ひとつにはコネクテッドTV機器の普及率の伸びがあると、ワイアード・メディア・グループ(Wired Media Group)、『GQ』、『ピッチフォーク(Pitchfork)』、『ゴルフダイジェスト(Golf Digest)』を監理するコンデナストのチーフブランドオフィサー、キム・ケルハー氏は語る。

「オンデマンド的なテレビ体験を欲する人々にとって、いまやOTTは非常に実用的かつ現実的な選択肢となっている」と、ケラー氏は語る。「コンテンツ企業として、そして『ワイアード』というブランドとして、この機会に参入しないのは致命的ミス以外の何ものでもない」。

動画広告協会(Video Advertising Bureau)が今年前半に発表した報告によれば、現在、OTT機器しか持たない米国の世帯数は1410万に上る。これは5年前の3倍にあたるが、米全世帯に占める割合はいまだ11%でしかない。

コネクテッドTV機器の購入および使用数は間違いなく増加しているものの、小・中規模のストリーミングチャンネルにしてみれば、注目を集めるのは依然として難しい。たとえばロク1社だけでも、全カテゴリーにわたり5000以上ものチャンネルを展開している状況のなか、高いディスカバラビリティ(発見可能性)の実現は困難を極める。

メディアブランドの強み

だが「『ワイアード』には幸い、名前が知られているという強みがある」と、コンサルティング会社TVレブ(TVRev)の主席アナリスト、アラン・ウォーク氏は語る。「あくまでも雑誌だから、動画を配信していることに気づく人がどれだけいるのかはわからないが、同誌のファンやテクノロジーに関心のある人々はきっと、とりあえず見てみようとは思うはず――それこそが確固たる地位を確立したブランドを持つ強みだ」。

『ワイアード』にはOTT視聴者を引き寄せ、さらにはサイトに留まらせる力が十分にあると、ケラー氏は自信を見せる。根拠として挙げるのが『ワイアード』のYouTubeにおける実績で、登録者数は230万人、再生回数は年間6億8800万に上る。さらに注目すべきは、『ワイアード』 のYouTube動画における滞在時間の長さだろう。たとえば、「テクニック・クリティック」の平均視聴時間は11分弱(1エピソードの長さは16~29分)。1エピソード4~6分の「オートコンプリート・インタビュー」では、平均視聴時間が優に4分を越えると、同社は語る。

さらに、コンデナストとの契約条件として、Apple TV、Amazon Fire TV、Roku、Android TVは各社のプラットフォームにおいて『ワイアード』チャンネルのマーケティングおよびプロモーションに注力してくれていると、ケラー氏は言う。

「[それらコネクテッドTVプラットフォームは]自社プラットフォームを確立し、視聴者を呼び込むことができる、信頼の置ける、質の高いコンテンツとブランドを求めている」。

ローンチスポンサーは4社

『ワイアード』のOTTチャンネルは視聴無料で、運営費は広告収入によって賄われる。コンデナストのニューフロンツにおける発表によれば、今回のローンチにあたり、同社はスポーンサーとしてアウディ、HP、住宅ローン会社クイックン・ローンズ(Quicken Loans)、電気通信事業者ベライゾン(Verizon)の獲得に成功した。ケラー氏によれば、これら4社は9月中旬、同チャンネルに広告を展開する。

多くのパブリッシャー、そしていくつかの電話会社までもがOTTストリーミングビジネスに乗りだしており、いずれもこの「プレミアムな、きわめて明るい」情勢が広告収入につながればと期待している。ただ、これまでのところ必ずしも期待どおりとは言えないのが現状だ。

もっとも、金銭的魅力は『ワイアード』がストリーミングチャンネルをはじめた最大の理由ではないと、ケラー氏は断言する。「弊社の視聴者のためにこういうものを立ち上げたいと、以前から考えていた――エディトリアルコンテンツの延長線上にあるものを作りたい、と。それを形にして市場に出そうと決めたのは、その後のことで、広告主がすぐに興味を示してくれたのは確かだけれど、それが触媒だったわけではない」。

Sahil Patel(原文 / 訳:SI Japan)