2022年2月前半、eスポーツ団体イーブル・ジーニアシズ(Evil Geniuses、以下EG)がベテランのスポーツ業界幹部レナード・エドワーズ氏を雇用し、従来のスポーツ界の知見を本部に注入した。同氏はスポーツ界で築いてきた経験を競技ゲーミング界という成長著しい分野に持ち込みたいと考えている。
2022年2月前半、eスポーツ団体イーブル・ジーニアシズ(Evil Geniuses、以下EG)がベテランのスポーツ業界幹部レナード・エドワーズ氏を雇用し、従来のスポーツ界の知見を本部に注入した。同氏はNFLのニューヨーク・アイランダーズ(New York Islanders)とニュージャージー・デヴィルズ(New Jersey Devils)、NBAのオーランド・マジック(Orlando Magic)とフィラデルフィア76サーズ(Philadelphia 76ers)といった米スポーツチームのパートナーシップ締結に携わってきた。EGグローバルパートナーシップ部門の新たなトップとして、エドワーズ氏はスポーツ界で築いてきた経験を競技ゲーミング界という成長著しい分野に持ち込みたいと考えている。
エドワーズ氏は、スポーツパートナーシップに精通する経験豊かな交渉人、というだけではない――同氏は長年にわたるゲームファンでもあり、かつては競技ゲーミングのスリルと興奮の虜だった。実際、プレイステーション3(PlayStation 3、以下PS3)のマッデンNFL(Madden NFL)では、全国9位まで上がった実力者だった。「よく覚えているよ、2009年、PS3で3位のマッデンプレイヤーに勝ったんだ」とエドワーズ氏。「たぶん、あれが私のゲーミングキャリアの頂点だった」。
そしてエドワーズ氏はいま、2021年に投資家らが2億5500万ドル(約281億円)の高値を付けたeスポーツ団体のパートナーシップリードとして、そのゲーミングキャリアをこれまでとはまったく違う場ではあるが、新たな高みに押し上げようとしている。米DIGIDAYはこのたび、エドワーズ氏に取材を行ない、有力eスポーツ企業におけるその新たな職務において、従来型スポーツ界の見識をどう活かしていくつもりなのか、話をうかがった。
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なお、読みやすさを考慮し、発言には多少編集を加えてある。
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――従来のスポーツ界からeスポーツ界に乗り換えた理由は?
従来のスポーツ界では、特にプロスポーツチームで仕事をすると、パートナーシップという点においてさまざまな限界や規制があり、できることに限りがある。ところが、ディグニタス(Dignitas)[リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends)やカウンターストライク(Counter-Strike)といったゲームでの長きにわたる活動で知られるeスポーツチーム団体]では、従来のスポーツ界よりも幅広く、さまざまな展開ができる能力を大いに楽しめた。パートナーシップを持っていける場に関して、固定観念や制約からかなり自由になれる。必ずしも触れられるとは思っていない消費者に触れることができる遊び場のようなスペースであり、そこが気に入っている。
――76サーズはあなたがいた当時、eスポーツ団体ディグニタスを買収しました。買収後、ディグニタスのパートナーシップにあなたが及ぼした影響とは?
76サーズがディグニタスを買収した当時、私はそのパートナーシップ戦略を立てるチームの一員(名称はチーム・ディグニタス[Team Dignitas])であり、すべての内部運営に関わった。システム、戦略、そしてパートナーシップの構築も。特に米チキンチェーンのバッファロー・ワイルド・ウィングス(Buffalo Wild Wings)および米ハンバーガーチェーンのブッバ・バーガー(Bubba Burger)との提携では、私は中心人物として、彼らをeスポーツスペースの適所に置くために尽力した。間違いなく、チームは完全に生まれ変わったと言っていい、オーナーグループが変わったからだ。その時から、私はZ世代について、そしてeスポーツがどう機能するのか、トーナメントはどうなっているのか、いろいろと学び始めた。
――従来のスポーツ界における経験をeスポーツパートナーシップにどのように移行していく?
これは私がNHLとNBAで経験を積み、NASCARにいたこともあるし、MLBとNFLでも仕事をしたから言えるのだが、各リーグとも革新性と優れたコンセプトに関して、非常に競争が激しい。eスポーツ界には必ずしも移行できないものもある。ただそれでも、従来のスポーツ界で学んだビジネス感覚は必ず役に立つと考えている。両者はもちろん、瓜二つではない。eスポーツ界では現在も非常に多くのことが起きている、非常に多くのチームがおり、非常に多くの試合/ゲームがあり、だからこそ非常にクリエイティブ(創造的)であることが求められる。
――eスポーツ団体が次々にエンターテイメントスタジオおよび持株会社へと進化しているこの時代において、常勝チームを持つことはやはり重要だと考えている?
100%そう思う。それこそが我々の姿だ。つまり、我々は常に勝ちを目指している。もちろん、勝利抜きでも良いブランドは築けるが、勝利は人々を次のレベルへと連れて行ってくれる。私の出自である従来のスポーツ界を見ればわかるとおり、多くのブランドは勝者に付きたがる。だからこそ、ブランドとのパートナーシップの構築で成長した我々としては、基本的に、勝利は我々が築こうとしているカルチャーの一部だと考えている。
――イーブル・ジーニアシズのブランドパートナーシップの進化に関する計画は?
従来のスポーツ界を見て、eスポーツ界を見ればわかる――つまり、eスポーツ界にも優れたブランドはあるし、さまざまなリーグがいくつか素晴らしいブランドをeスポーツ界に引き入れている。とはいえ、私が話を聞いたかぎり、ブランド勢は依然、自分がこのスペースのどこに入りたいのかもわからない状態にある。理由はもちろん、そこは彼らにとっていまだ馴染みのない存在だからだ。だからこそ、eスポーツ界では、すべては本物でなければならない。言い換えれば、軽く手を出した、というだけでは、たんなる受け狙いでは、まず通用しない。
我々はこう考えている。この業界が成長しているいま、ブランドの観点から言えば、eスポーツに特化した職が次々に生まれている。たとえば、この電話インタビューの前、私はあるブランド幹部について調べていたのだが、彼の肩書きはeスポーツ部門長だ。それこそが重要なポイントであり、ブランドにはいま、そうした部門が数々存在している。したがって、我々が深く入り込むための道も数々存在している。
ALEXANDER LEE(翻訳:SI Japan、編集:長田真)