HBOブランドの配信サービス、なぜ複数存在してるかの? : ワーナーメディアの方針は

テレビからストリーミングへと拡大するHBOの取り組みは、HBOマックス(HBO Max)のデビューを複雑にした。HBOのブランドのもとで作られたストリーミングサービスが、いくつも作られてきたからだ。ワーナーメディア(WarnerMedia)は、ストリーミング戦争のなかで自社内での競争が生まれないように複雑な状況を解きほぐそうとしている。

ワーナーメディアは5月27日、HBOマックスをローンチしたが、これでAT&Tが所有するメディア企業としてはHBOのブランディングを抱える3番目のストリーミングサービスとなった。有料テレビプロバイダー経由でHBOにサブスクライブするためのストリーミングサービス、HBOゴー(HBO Go)、そして有料テレビプロバイダー経由以外でHBOにサブスクライブするためのHBOナウ(HBO Now)があった。そして有料テレビプロバイダ関係なくサブスクライブできるHBOマックスが登場した形だ。

HBOナウかHBOマックスのどちらにサブスクライブするかは「IQテストだ」と冗談を言うAT&Tの次期CEOジョン・スタンキー氏だが、HBOのブランドを抱えるストリーミングサービスが3つも必要ないことはIQに関係なく誰にでも分かる。実際、ワーナーメディアはHBOゴーを段階的に廃止し、サブスクライバーをHBOマックスへと移動させ、HBOナウをHBOと名称変更する予定だ。それでもHBOマックスは同じ価格でより多い番組を提供していることからも、アプリが多すぎる状況は分かる。

「ひとつのサービスが別のもので取って代わられるときに、この種類の変化を観ることがよくある。そんな時は顧客をひとつのサービスから次のものへと、デリケートに扱いながらも移行させる必要がある。前々からHBOゴーを廃止してHBOマックスを導入する計画とそのプロセスが準備されていたのだろう、というのが私の直感だ」と、ブランド・コンサルタンシー、リッピンコット(Lippincott)のパートナーであるジェイク・ハンコック氏は言う。

問題は、ワーナーメディアはまったく新しいサービスとして独立した状態で、このプロセスを進めなかったことだ。ディズニー(Disney)とNBCユニバーサル(NBCUniversal)の場合は、ディズニー+(Disney+)とピーコック(Peacock)で、まったく新しいストリーミングサービスをはじめたわけだが、ワーナーメディアの場合はすでに存在しているテレビとストリーミングのサービスの上に、フラグシップのストリーミングサービスを作ったのだ。HBOマックスがテレビのHBOサブスクライバーとHBOナウのサブスクライバーの両方に視聴可能として提供したことでHBOマックスはスタートから勢いを得る狙いだったが、ブランディングの点で頭痛を生み出した。時系列で追って理解したい。

HBOの配信サービスの歴史

2010年2月、HBOはまだ新しいストリーミング市場に、従来のテレビサービスと紐付けた状態でHBOゴーを導入した。

2015年4月、HBOはHBOナウをデビューした。これはネットでのテレビ視聴へと移行する「コード・カッター」向けに彼らの有料テレビサービスの内容を損なうことなしに、サービスを提供するための独立したストリーミングサービスだった。

HBOはサブスクライバー数を素早く増やすためにAppleやAmazonといった、HBOナウのサブスクリプションを販売するための契約を結んだ。

AT&Tがタイム・ワーナー(Time Warner)を買収し、新しく生まれたワーナーメディアがHBOマックスを発表した。これはHBOのブランド認知力に頼ったサービスで、これでストリーミング合戦に参加した。

ストリーミング合戦で競争するために、ワーナーメディアは既存のHBOサブスクライバーに対して、有料テレビプロバイダ経由で追加料金なしでHBOマックスを視聴できるようにする。たとえば、すでにHBOゴーを視聴できるユーザーだ。

歴史が物語る妥当性と課題

現時点から振り返ってみると、いまでもこれらの決断は理にかなっている。すべての大手テレビネットワークたちは、それぞれのHBOゴー的な存在を持っている。消費者へダイレクトに届ける動きを見せたテレビネットワークはすべて、独立のストリーミングサービスを作っている。AMCネットワークス(AMC Networks)のシャダー(Shudder)、ESPNによるESPN+、そしてNBCUのピーコック、といった具合だ。ワーナーメディアはコムキャスト(Comcast)を含めた有料テレビプロバイダーたちにHBOマックスを配信してもらうことまで成功している。これは彼らのサービスの最初の大きな関門のひとつであったように思われた。

しかしHBOマックスがワーナーメディアの唯一のストリーミングサービスとして確立する前に、まずHBOナウの複雑な配信戦略をなんとかしなければいけない。Amazonやロク(Roku)といったサードパーティ企業を通じてHBOナウのサブスクリプションを販売したことで登録者数の獲得の助けにはなったが、これらのサブスクライバーをHBOマックスのユーザーとしてまとめるための障害となっているように思われる。

HBOマックスのローンチ前、ワーナーメディアを通じてダイレクトにHBOナウにサブスクライブしているユーザーだけが、HBOマックスにそのままアクセスを得られると述べていた。しかし、このオプションは間接的なサブスクライバーたちにも拡大された。Appleを通じてHBOナウのサブスクリプションを購入したユーザーたちも、いまではHBOナウにアクセスできる。

しかし、Amazonやロクを通じて購入したユーザーたちはまだHBOマックスをそのまま利用できていない。HBOマックス配信の契約はまだどちらとも結べていない。そのことはHBOのストリーミングサービスをようやくHBOマックスに統合することの妨げになっているようだ。

Amazonとロクとの配信状況をクリアにするまでは、ブランディングに関する悩みは消えないだろう。HBOゴーがなくなったあとでも混乱を生むことがすでに想像できる。たとえば、HBOを有料テレビプロバイダ経由で観られる場合でも、HBOのアプリではなく、HBOマックスを使うことになる。アプリは有料テレビプロバイダ経由でないユーザー向けのサービスだからだ。

[原文:Why WarnerMedia still has so many HBO-branded streaming services: a study of a branding and distribution headache

Tim Peterson(翻訳:塚本 紺、編集:長田 真)