プログラマティックを積極的に実施している広告主といえど、昔からある技術を避けることはできないようだ。ウォーターフォールが全盛を極めたあと、新手の、そしてより効率的とされているプログラマティック手法が次々現れてきたが、それでもウォーターフォールは決して死んでいないという事実は注目に値する。
プログラマティックを積極的に実施している広告主といえど、昔からある技術を避けることはできないようだ。
ウォーターフォールが全盛を極めたあと、新手の(そして、より効率的とされる)プログラマティック手法が次々と現れたが、それでもウォーターフォールは決して死んでいないという事実は注目に値する。一部のパブリッシャーは、その代替手段として呼び声高いヘッダー入札に抵抗感を示し、いまもウォーターフォールに頼りきっている。また、混合型のアプローチでウォーターフォールを実践し、残ったインプレッションを売りさばくパブリッシャーもいる。
「ウォーターフォールはいまも、残ったインベントリー(在庫)の収益を最大化するための優れたツールだ」と、アドテク企業マトミー(Matomy)で最高技術責任者(CTO)を務める、イド・ポラック氏は語る。「すべてをひとつで賄える魔法の解決策などはない」。
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パブリッシャーがインベントリーをマーケットからマーケットへと動かし、売上を最大化するウォーターフォールは死んだ、と早合点されるのも無理はない。何しろヘッダー入札は、アドサーバーへ掲載する前に、パブリッシャーが手持ちの広告在庫を複数のアドエクスチェンジに提供できるようにすることで、ウォーターフォールに取って代わると言われていたからだ。
ところがいま、ヘッダー入札自体がサーバー・トゥー・サーバー接続にその座を奪われる危機に瀕している。サーバー・トゥー・サーバー接続は、入札行動をパブリッシャーのページからサーバーへと移動させ、ページの読み込みを高速化するものだ。
だが、ウォーターフォールはいまも存在している。その理由を以下に述べる。
パブリッシャーの抵抗感
一部のパブリッシャーにとって、複雑なヘッダー入札やサーバー・トゥー・サーバー接続の設定・実行という投資は、それに見合うだけの価値がない。フィナンシャル・タイムズ(The Financial Times)やBBCをはじめとするパブリッシャーがヘッダー入札をかたくなに拒んできたのはそのためだ。
ヘッダー入札やサーバー・トゥー・サーバー接続に対する抵抗感は時間とともに薄れていくかもしれない。しかし、抵抗を示すパブリッシャーはいまも存在しており、これらのパブリッシャーはインベントリーの多くをウォーターフォールを介してさばいている。また、レイテンシー(読み込みの遅延)に対する懸念も、一部のパブリッシャーがヘッダー入札を採用していないおもな理由のひとつだ。
「ヘッダー上のスペースは限られている」とワシントン・ポスト(The Washington Post)でプログラマティック部門のディレクターを務めるジェイソン・トレストラプ氏は語る。「入札者の数を100にしてヘッダー入札を行えば、ページの読み込みは遅くなってしまうだろう。そうした点を考慮せずにヘッダー入札を行うと、むしろ害になる恐れがある」。
混合型のアプローチ
アドテク企業メディア・マス(MediaMath)でプログラマティックパートナーシップ部門のバイスプレジデントを務めるタヌジ・ジョシ氏は、パブリッシャーはさまざまな手法を駆使してインベントリーを満たしていると語る。つまり、たとえパブリッシャーがプログラマティックインベントリーの大半をヘッダー入札を介して販売していても、残っているインプレッションを販売するためのバックアップ方法としてウォーターフォールを活用できるのだ。
ソートカタログ(Thought Catalog)も、ヘッダー入札をウォーターフォールで補完するパブリッシャーのひとつだ。「この混合型戦略の裏にある理由は、いまのところ我々は、合わせて数社のヘッダーパートナーしか擁しておらず、インベントリーの100%をマネタイズする方法を依然として必要としているからだ」と、同社でプログラマティック部門のディレクターを務めるクリスティーナ・カルデリン氏は語る。
「それを手助けしてくれるのがウォーターフォールであり、穴埋めに一役買ってくれる。たしかにヘッダー入札はインベントリー売買のためのよりスマートな方法だ。しかし、パブリッシャーのインプレッションを買い占めてくれる十分な数のヘッダー入札パートナーを擁することが、必ずしも実現可能とは限らない」。
技術はしぶとく生き残る
消息筋は、サーバー・トゥー・サーバーのような高度な技術が人気を高めつつある一方で、一部のパブリッシャーにとってはヘッダー入札でもまだ早いという。また、多くの技術、たとえばアドネットワークやバナー広告が、より効率的な代替技術の利用が可能になったあともしぶとく生き残っており、ウォーターフォールもそうしたひとつになりうるとも述べる。
「ウォーターフォールの終わりが近いとは、私は思わない」と米出版大手ハースト(Hearst)でプログラマティック販売・戦略部門のバイスプレジデントを務めるジュリー・クラーク氏は語る。「ウォーターフォールが時代遅れになっても、買い手はつくだろう」。
Ross Benes (原文 / 訳:ガリレオ)
Image by Dave Edens / Flickr