どうすればロボットに個性を持たせることができるだろうか。これは、WebサイトのAIチャットボット開発で、一部のパブリッシャーがまさに取り組んでいる課題だ。
パブリッシャーのなかでもBuzzFeedやインジェニオ(Ingenio)は、ChatGPTやBing(ビング)などの汎用的なチャットボットとの差別化として、自社のチャットボットの会話と口調に独特な性格を与えることに取り組んでいる。一方で、トムズハードウェア(Tom’s Hardware)やスキフト(Skift)などは、読者が知りたい情報をきっちり返してくれるチャットボット目指しており、娯楽性より実用性重視だ。
インジェニオとBuzzFeedの場合
インジェニオのメディア担当プレジデントであるジョッシュ・ジャフィ氏は、「メディア企業がチャットボットを導入しようという場合は、よそで利用できるものとは毛色が違い、ある意味もっとよいものでなければならない」と話す。同社が所有する占星術メディア「Astrology.com」では、「ヴェーダ(Veda)」と名付けられたスピリチュアルガイドのチャットボットが先月ソフトローンチを迎えた。「製品的にはユーザー体験やデザイン、そして実際の会話の雰囲気や性格を通してほかと差別化している」。
一方でBuzzFeedでは、AIチャットボットを利用したロールプレイングゲームを次々と公開している。ゲームでは、インフルエンサーになって生き残りを図る「ネポ・ベイビー」(セレブの子供)を育てるなどのタスクをユーザーに課す。
BuzzFeedの編集部門でシニアバイスプレジデントを務めるジェス・プロバス氏によると、「会話内容にとくに制約のないChatGPTに対し、このようなクリエイティブな制約を設けることによって、その体験がもっと楽しく、参加しやすく、満足感を得やすくなる」という。
AIチャットボットに個性を持たせる方法
ジャフィ氏とプロバス氏は、チャットボットが会話で示す個性の開発が、社内の部門横断的なAIチームによってプロンプトエンジニアリング段階で進められたと話す。自社サイトの既存コンテンツを使用してAIチャットボットの裏にある大規模言語モデル(LLM)をトレーニングし、会話モデルを構築するという方法ではないようだ。
そこではLLMに入力するテキストプロンプトを作成しては試し、調整するということを繰り返しながら望ましい回答を得る方法を探るという、かなり人力に頼ったプロセスが行われた。プロバス氏によれば、プロンプトを作成するときにはチャットボットの回答とその口調がパブリッシャーに合ったものとなるように、編集部門が極めて重要な役割を果たしたという。
「それは必ずしもチャットボットをトレーニングするということではない。むしろ、とても具体的にプロンプトを作成しテストするという話だ」とプロバス氏は語る。「プロンプトそのものを使用し、ゲームのすべての制約を作成している。プロンプトにルールをすべて盛り込んでおいて、その後の会話もすべて私たちが構築しようとしている世界に収まるようにしている」。
BuzzFeedは、プロンプトの例を公開することはできないという。同社のスポークスパーソンはプロンプトを「秘密のソース」と呼び、一方でジャフィ氏は、ヴェーダの裏にあるプロンプトを明かすことは「コカ・コーラ(Coca-Cola)がコーラのレシピを公開するに匹敵する」と述べる。
どうすればロボットに個性を持たせることができるだろうか。これは、WebサイトのAIチャットボット開発で、一部のパブリッシャーがまさに取り組んでいる課題だ。
パブリッシャーのなかでもBuzzFeedやインジェニオ(Ingenio)は、ChatGPTやBing(ビング)などの汎用的なチャットボットとの差別化として、自社のチャットボットの会話と口調に独特な性格を与えることに取り組んでいる。一方で、トムズハードウェア(Tom’s Hardware)やスキフト(Skift)などは、読者が知りたい情報をきっちり返してくれるチャットボット目指しており、娯楽性より実用性重視だ。
インジェニオとBuzzFeedの場合
インジェニオのメディア担当プレジデントであるジョッシュ・ジャフィ氏は、「メディア企業がチャットボットを導入しようという場合は、よそで利用できるものとは毛色が違い、ある意味もっとよいものでなければならない」と話す。同社が所有する占星術メディア「Astrology.com」では、「ヴェーダ(Veda)」と名付けられたスピリチュアルガイドのチャットボットが先月ソフトローンチを迎えた。「製品的にはユーザー体験やデザイン、そして実際の会話の雰囲気や性格を通してほかと差別化している」。
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一方でBuzzFeedでは、AIチャットボットを利用したロールプレイングゲームを次々と公開している。ゲームでは、インフルエンサーになって生き残りを図る「ネポ・ベイビー」(セレブの子供)を育てるなどのタスクをユーザーに課す。
BuzzFeedの編集部門でシニアバイスプレジデントを務めるジェス・プロバス氏によると、「会話内容にとくに制約のないChatGPTに対し、このようなクリエイティブな制約を設けることによって、その体験がもっと楽しく、参加しやすく、満足感を得やすくなる」という。
AIチャットボットに個性を持たせる方法
ジャフィ氏とプロバス氏は、チャットボットが会話で示す個性の開発が、社内の部門横断的なAIチームによってプロンプトエンジニアリング段階で進められたと話す。自社サイトの既存コンテンツを使用してAIチャットボットの裏にある大規模言語モデル(LLM)をトレーニングし、会話モデルを構築するという方法ではないようだ。
そこではLLMに入力するテキストプロンプトを作成しては試し、調整するということを繰り返しながら望ましい回答を得る方法を探るという、かなり人力に頼ったプロセスが行われた。プロバス氏によれば、プロンプトを作成するときにはチャットボットの回答とその口調がパブリッシャーに合ったものとなるように、編集部門が極めて重要な役割を果たしたという。
「それは必ずしもチャットボットをトレーニングするということではない。むしろ、とても具体的にプロンプトを作成しテストするという話だ」とプロバス氏は語る。「プロンプトそのものを使用し、ゲームのすべての制約を作成している。プロンプトにルールをすべて盛り込んでおいて、その後の会話もすべて私たちが構築しようとしている世界に収まるようにしている」。
BuzzFeedは、プロンプトの例を公開することはできないという。同社のスポークスパーソンはプロンプトを「秘密のソース」と呼び、一方でジャフィ氏は、ヴェーダの裏にあるプロンプトを明かすことは「コカ・コーラ(Coca-Cola)がコーラのレシピを公開するに匹敵する」と述べる。
ジャフィ氏によると、インジェニオではタロットカード占い師、占星術師、数秘術師との会話の文字起こしデータをチャットボットに入力しているそうだ。ただし、相手を会話に引き込む適切な口調をチャットボットに注入することも、すべては具体的なプロンプトのためだという。
「何ページもの情報を投入しても、それを使って何かしてほしいと頼んだときには情報が薄められてしまうということがわかった。その一方で、プロンプトをそこそこ簡潔にできれば、ユーザーに提供したいような体験の実現に効果を発揮できる」と、ジャフィ氏は言う。
チャットボットになぜ個性を持たせるのか
ジャフィ氏とプロバス氏は、「チャットボットに演じる個性を与えることによって、オーディエンスにより魅力のある体験を提供できる」と主張する。たしかにそれは上手くいっているように見える。プロバス氏によると、5月30日に公開されたBuzzFeedの最新のAIチャットボットゲーム「Nepogotchi(ネポゴッチ)」の総プレイ時間は、6月7日時点で75万分を超えたようだ。
一方でインジェニオのチャットボットであるヴェーダは、ジャフィ氏によればソフトローンチ段階ではAstrology.comの右上のボタンか、Astrology.comの約5000名のニュースレター購読者にヴェーダを紹介するメールを通して利用できるという。
初期テストでは、「ニュースレター購読者のほうがWebサイトでヴェーダを見つけた人よりヴェーダの使用時間が3倍近く長く、利用時間は1セッションあたり10分以上に及ぶという結果が出た」とジャフィ氏は話す。「ここからわかることは、すでにスピリチュアルなものに熱中しており、関心を実際に示している人たちがヴェーダにとても喜んでいるということだ」。
当然のことながら、個性があれば、なかにはそりが合わない人も出てくる。ジャフィ氏は、「どうしたら粋で洗練されていてとても博識なヴェーダというチャットボットの個性と口調を、すべての人に魅力的だと感じてもらえるだろうか。否、その答えは『すべての人に魅力的だと感じてもらうことは不可能』であるだ。それはそれでいい。強力なメディアブランドならどれでもそうだが、これは万人向けのものではない。特定のコアオーディエンスだけを対象としている」と語る。
一方でチャットボットに個性を持たせない理由
チャットボットの「個性」の開発は、自社製品開発を行うすべてのパブリッシャーがこぞって重点的に取り組んでいることではない。チャットボットの開発に関して、多くが「エンターテインメント目的」と「実用目的」の2つの陣営に分かれるように見える。
まだベータ段階ではあるが、トムズハードウェアのサイトに用意されたフューチャー(Future plc)のチャットボットには、とくにこれといった特色はない。筆者がいくつかハードウェアに関する具体的な質問を尋ねたところ、ストレートな回答と関連コンテンツが返ってきた(漠然とした質問には対応できなかった)。
BuzzFeedのアプリTasty(テイスティ)に搭載された、おすすめレシピを紹介してくれる「Botatouille(ボタトゥイユ)」というチャットボットの口調は、より直接的で接客対応的だ(ただし、回答には感嘆符や絵文字がかなり含まれる)。
また、スキフトのCEOであるラファット・アリ氏は、「スキフトが開発を続けているチャットボットに個性を持たせる計画はない」と述べ、「その優先度は高くない。目標は答えを提供すること。正確性を向上させることができれば、業界のオーディエンスにとっては個性があるよりはるかに有益だ」と言い添えた。
[原文:Why some publishers are giving their AI chatbots a personality]
Sara Guaglione(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)