Facebookオーディエンスへのリーチ力を示すのに、エンゲージメントの測定値を利用するパブリッシャーが増えている。しかし、「エンゲージメントが実際に何を意味しているのか」は説明が難しい。それぞれのパブリッシャーが利用する分析会社が異なり、測定方法が統一されていないからだ。
こうしたバラバラの測定方法が問題になっているのは、ソーシャルメディアがコンテンツの入り口になることが増えており、オーディエンスを集められることを証明するため、このような測定ツールの利用が増加しているからだ。
Facebookオーディエンスへのリーチ力を示すのに、エンゲージメントの測定値を利用するパブリッシャーが増えている。しかし、「エンゲージメントが実際に何を意味しているのか」は説明が難しい。それぞれのパブリッシャーが利用する分析会社が異なり、測定方法が統一されていないからだ。
たとえば、ソーシャルメディア分析企業のクラウドタングル(CrowdTangle)では、動画と画像のほかに、Facebookに直接アップロードされたコンテンツや従来型のリンクなど、あらゆる種類のコンテンツに対するインタラクションを測定している。同社が見るのはパブリッシャーのFacebookページにおける直接のインタラクションであり、パブリッシャー所有のWebサイトからのインタラクションは見ていない。
対して別の調査企業であるニュースウィップ(NewsWhip)は、Facebook投稿からのシェア、リンクへのコメント、サイト上のシェアボタンの利用、コピー&ペーストによるシェアなどをカウントしている。Facebookに直接アップロードされたコンテンツも計測しているが、同社が公開している月間ランキングの指標には含めていない。
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なぜバラつきが生まれるのか
重要な違いがもうひとつある。クラウドタングルは、投稿の公開時期を問わず、すべての投稿への指定期間におけるエンゲージメントを見ることができる。これに対しニュースウィップは、指定月に公開されたコンテンツへのエンゲージメントのみを見ており、それ以前に公開され再浮上してきた投稿へのエンゲージメントはカウントしない。
その結果、パブリッシャーのランキングはバラつきが大きいこともある。たとえば、「ハフィントンポスト(Huffington Post)」は4月、ニュースウィップのエンゲージメント・ランキングでは第1位だったが、クラウドタングルでは、「FOXニュース(Fox News)」と「NowThis(ナウディス)」に次ぐ第3位だった。
また、エンゲージメントを独自に定義しているパブリッシャーもある。「パーチ(Purch)」というテクノロジー系サイトのネットワークでは、読者が記事にどこまで深く取り組んだかを測定する独自のリーダースコアを考案した 。スクロール、クリックの有無、読後の行動(シェアやニュースレターの申し込み)などに基づいたもので、もともとは広告営業での使用を視野に入れた、編集スタッフ用のシステムだった。
Facebookの指標は200以上
こうしたバラバラの測定方法が問題になっているのは、ソーシャルメディアがコンテンツの入り口になることが増えており、オーディエンスを集められることを証明するため、このような測定ツールの利用が増加しているからだ。400のメディアサイトで構成されている調査会社パースリー(Parsely)のネットワークによると、2015年夏の時点で、ソーシャルサイトからパブリッシャーへのリファラーの40%近くがFacebookで、Googleの38%を上回っている。
加えて、ウィー・アー・ソーシャル(We Are Social)のビジネスディレクターであるベンジャミン・アーノルド氏によると、個々のレポートと矛盾する数字や、エンゲージメントの結果の違いが大きいレポートツールが、パブリッシャーやネットワークから提供されている。結果の大きな食い違いは、対象期間、総数か平均か、フォロワー数で数字を割っているかといった違いによって説明できるという。「これは我々の業界の大問題だ」と、アーノルド氏はいう。
ホライズン・メディア(Horizon Media)のソーシャルメディア戦略担当バイスプレジデント、マイケル・オハンロン氏は、パブリッシャーがエンゲージメントに関するスコアを算出するのに使える指標を、Facebook自らが200以上も提供していることが、問題を複雑にしていると語る。
頻発している指標の不一致
同氏は次のように述べている。「『いいね』やコメント、シェアを基にしているところもあれば、写真を拡大するクリックや記事にジャンプするリンクのクリックなど、エンゲージメントとしてカウントできる定義可能なアクションをすべて取り込もうとしているところもある。動画が盛り上がってくると、動画は別にカウントするというところと、エンゲージメントに入れるべきだとするところが出てきて、指標の不一致が新たに大量に生まれた。ソーシャル関係の指標がたくさんあり、いいとこ取りがものすごいことになっている。どんなパブリッシャーでも、自分たちが素晴らしい成果を上げているように見せることは簡単だ」。
さらに、メディアプランニングエージェンシーであるMECの北米ソーシャル担当責任者を務めるノア・マリン氏によると、数字の出どころ、Facebookから直接取得した数字なのかサードパーティがカスタマイズした数字なのか、ソーシャルトラフィックのうちオーガニックなものと有料のものがそれぞれどれくらいあるのかなどを、必ずしもパブリッシャーは公表しておらず、これは質の低さを示しているという。
マリン氏は、「パブリッシャーと提携する場合には、相手のエンゲージメントの価値を把握することが必要だ。エンゲージメントの測定の仕方はたくさんある。重み付けをする場合、クリックよりもシェアを重視するということはありえる。当然、相手は自分たちに都合のよい結果になる指標に目を向けたいだろう。それが我々の求めるものと一致していればいい。しかし、パブリッシャーがやってきて『我々は、いいね!を重視している』と言った場合、私はこれを好ましいものとは取らない」と、同氏は語った。
アルゴリズム変更が影響している
そのうち、エンゲージメント指標は自滅するかもしれない。おそらくはFacebookがユーザーのフィードで動画と直接アップロードされたコンテンツを優先させているからだろうが、Facebook上のパブリッシャーへのリンクに対するエンゲージメントが低下している徴候があるのを見て、エージェンシーがほかの指標に目を向けているのだ。
たとえば、マリン氏はエンゲージメントに代わるものとして、動画の視聴完了数と視聴時間を見ることが増えているという。「コンテンツそれ自体がどれくらい見られているのかは重要であり、代替する指標として優れている」。
Lucia Moses (原文 / 訳:ガリレオ)
Image from Thinkstock / Getty Images