ポッドキャスターたちは、ポッドキャストはもっとも親しみを感じられるメディアだと主張したがる。しかし、ビジネスを大きくするため、ライブイベントに乗り出すポッドキャスターが増えており、大小の制作者がイベント運営をはじめたり、拡大したりしている。
ポッドキャスターたちは、ポッドキャストはもっとも親しみを感じられるメディアだと主張したがる。しかし、ビジネスを大きくするため、ライブイベントに乗り出すポッドキャスターが増えており、大小の制作者がイベント運営をはじめたり、拡大したりしている。
先ごろ、ポッドキャスト向けアドネットワークのミッドロール(Midroll)と、老舗ラジオ局のWNYCがそれぞれ、米国の東と西で大きなポッドキャストフェスティバルを開催することを発表した。ロサンゼルスに拠点を置くミッドロールは「ナウヒアディス(Now Hear This)」をニューヨークで、逆にニューヨークに拠点を置くWNYCは、女性に焦点を当てたポッドキャストフェスティバル「ウェルクイット(Werk It)」をロサンゼルスで開催するという。
またベンチャーキャピタルの支援でアレックス・ブランバーグ氏が創設した、ポッドキャストの新興企業ギムレット・メディア(Gimlet Media)が、3月にブルックリンの劇場ベル・ハウス(The Bell House)で初のポッドキャストライブを実施するほか、先日オリジナル番組の第1弾を発表してポッドキャストに新規参入したSpotify(スポティファイ)も、オーディオHQ(AudioHQ)が先ごろ配信を開始した台本ありのポッドキャスト番組「ブロンズビル(Bronzeville)」などのライブイベントに取りかかっている。
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ライブイベントが不可欠
各社ともスタート地点が異なり、ライブ番組に売り上げを依存しているところはない。しかし、イベントに投入する時間とエネルギーをどこも増やしており、いまでは多くのポッドキャスト制作会社が、ライブイベントを番組の発展と成長に不可欠な要素だと考えている。WNYCスタジオズ(WNYC Studios)の最高コンテンツ責任者、ディーン・カペッロ氏は、「立ち上げるどのプロジェクトにも何らかの形でライブイベントを組み込んである」と語った。
しかし、生のオーディエンスの前でポッドキャストを制作するというアイデアは目新しいものはない。スレート(Slate)は2009年から生のトーク番組を録音しているし、「LAポッドフェスト(LA Podfest)」のようなイベントは2011年からある。
これまで、ポッドキャストビジネスは、ささやかなものだった。しかし、この数年、カルチャーの醸成とテクノロジーの向上により、ポッドキャストビジネスは上向いている。ブリッジ・メディア・リサーチ(Bridge Media Research)の推計によると、ポッドキャスト広告市場は2017年に2億ドル(約230億円)を突破する見通しだ。ほかの大半のデジタルメディア広告市場のような世界ではないが、ギムレットやリンガー(The Ringer)のような小規模パブリッシャーをいくつか維持するには十分だ。
イベントも、小さいが有望なものだったのが大きくなりつつある。2016年にはじめて3日間のポッドキャストフェスティバルを実施したミッドロールは、現在、イベント番組に取り組むフルタイムの専任スタッフを抱える(親会社であるスクリプス[Scripps]の番組編成リソースにも頼っている)。また、ほかのどのパブリッシャーよりも多くのライブポッドキャストを制作するスレートは2016年、ライブ番組のチケットが主に30~35ドル(約3500円〜4000円)で9000枚以上売れた。なかでもいちばんの人気番組「ポリティカル・ギャブフェスト(Political Gabfest)」は、1回当たり確実に1200枚は売れたという。
地域マーケティングに好都合
どの数字を見ても、一夜にして金持ちになるほどのものではない。しかし、イベントにはさまざまな形でマーケティング上のメリットがある。多くのポッドキャスト制作会社が、とりわけホストの地元ではない場所でライブ番組を行った場合、どの土地のダウンロード数が確実に大きく急増したかを報告している。
「そうした地域マーケティングができるのは素晴らしい」と語るのは、ハウ・スタッフ・ワークス(How Stuff Works)の最高コンテンツ責任者、ジェイソン・ホック氏だ。同社のポッドキャスト「知っておくべきことと歴史教室で忘れたこと(Stuff You Should Know and Stuff You Missed in History Class)」は、「コミコン(Comic Con)」からダラス美術館まで、あらゆる場所でライブ番組を開催している。
このようなイベントの大半をミッドロールのマーク・マロン氏やWNYCの2ドープ・クイーンズ(2 Dope Queens)のような主役級タレントが支える一方で、ライブ番組が新しい人材や新しい番組アイデアを試すのに最適な舞台であることを制作会社は学んでいる。たとえば、WNYCはロウアー・マンハッタンの本社から通りを挟んだところにあるグリーンスペース(Greene Space)という小さな劇場を、ミッチェル・ビュートー氏が新しくはじめる番組のようなポッドキャストのパイロット版とワークショップの場所として使いはじめた。
WNYCのカペッロ氏は、「熱心なファン200人とともに収録部屋から生まれるコンテンツのパワーがある。21都市を回るツアーに出るのとは違うが、大切なことだ」と語った。
増えつつある広告主
実績のある番組の場合、巡業は広告主にとっても悪くない。定評あるコーナーを擁するたくさんの番組に、通常エピソードのあいだに流す広告を含む包括契約のスポンサーがつき、アキュラ(Acura)やデルタ(Delta)のようなひと握りのブランドスポンサーが、ライブポッドキャストとポッドキャスターのツアーのスポンサー契約をしている。また、キャスパー(Casper)やマック・ウェルドン(Mack Weldon)のように、1回限りの番組から複数日におよぶフェスティバルまで、さまざまなもののスポンサーになってきたダイレクトレスポンス広告の広告主がいくつかある。
ライブポッドキャスト自体が重要なドル箱になる日がいつなのかは不透明だ。また、そんな日が来るのかどうかも明らかではない。しかし、2017年はこれから、ライブポッドキャストを活用するパブリッシャーが増えていくだろう。「ホストがステージに上がるのを嫌がらない限り、ステージに上がってもらう」と、スレートのスミス氏は語った。
MAX WILLENS (原文 / 訳:ガリレオ)
Image via Getty Images