人気スポーツサイト、ブリーチャー・レポート(Bleacher Report)のゲームおよびeスポーツ部門であるB/Rゲーミング(B/R Gaming)。同ブランドは、2016年のローンチ以来、もっぱら自主的な運営を行なっ […]
人気スポーツサイト、ブリーチャー・レポート(Bleacher Report)のゲームおよびeスポーツ部門であるB/Rゲーミング(B/R Gaming)。同ブランドは、2016年のローンチ以来、もっぱら自主的な運営を行なってきた。ブリーチャーが今年、ターナー・ブロードキャスティング・システム(Turner Broadcasting System)が所有するその他のスポーツプロパティとの連携を強めるようになると、B/Rゲーミングもそれに合わせて進化を遂げてきた。ターナーのeスポーツ特化型ブランド、Eリーグ(ELeague)を吸収したB/Rゲーミングは、リニアテレビコンテンツへの投資も強化するようになった。そうしたコンテンツのひとつが新番組「100×100」で、10月からTBSとB/Rアプリで生放送される。
これまでにもスポーツエンターテインメント界で名を馳せたさまざまな企業がeスポーツ参入を試みてきたが、その結果は悲喜交々だ。ESPN Eスポーツ(ESPN Esports)は、トップを走るeスポーツニュースサイトとしての地位を確立することに成功したものの、約5年間に及ぶ活動ののち、2020年後半にその活動を終了した。一方、B/Rゲーミング(そのローンチについては、米DIGIDAYが2016年に報じている)は、その親ブランドの高みにはまだ到達していない。
B/Rゲーミングのここ最近の改革はこれまでとは違うと、ターナー・スポーツ(Turner Sports)のeスポーツ担当バイスプレジデント、ジェニファー・ディル氏は話す。そこには、ターナー傘下の各スポーツおよびeスポーツブランド間で行われる、前例のないレベルのコラボレーションが関与しているからだ。「B/Rゲーミングが小規模ながら過去に行なってきたことを踏まえて、それ相応のリソースを与え、注意を払っている。そしてEリーグについても、eスポーツシーンを象徴する存在として、その素晴らしさを存分に発揮できるようにしている」と、ディル氏は語る。「B/Rゲーミングには、こうした文化的要素をまとめる包括的ブランドとしての役割を与えている。私が進化という観点から述べているのは、つまりはそういうことだ」。
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リニアTV視聴者ファーストの作り
この構想の核心が、ゲームおよびeスポーツコミュニティに根差すリニアテレビコンテンツの制作だ。B/Rゲーミングは昨年、テレビ番組「アンダーレイテッド(Underrated)」を介して、この分野に慎重に足を踏み入れた。「アンダーレイテッド」は「マッデンNFL(Madden NFL)」や「FIFA」といったゲームにおける自身のレーティングを高めるチャンスをプロアスリートたちに与えるという趣向の番組だ。同番組のシーズン1は全プラットフォームを通して1800万回を超える視聴回数を獲得した。この好成績により、今年のシーズン2の制作が決定した。とはいえ、「アンダーレイテッド」は現在もデジタルファーストの番組であり、B/Rアプリで配信されてから、編集版がTBSで放送されている。「『アンダーレイテッド』は両方のプラットフォームで放送されているが、それぞれが提供する体験は差別化されている」と、ディル氏は語る。
それに対して「100×100」は、テレビのオーディエンスを第一に考えて制作される、B/Rゲーミング初のリニアコンテンツだ。eスポーツパーソナリティのエリン・アシュリー・サイモン氏と、ミュージシャンからTwitch(ツイッチ)ストリーマーヘ転身したファヒーム・“T-ペイン”・ナジム氏が司会を務める同番組では、セレブやストリーマー、アスリートたちがゲームチャレンジで競い合い、次々に明らかにされる賞品の数々を生放送のオーディエンスにプレゼントする。100分の放送時間内に100個の賞品が視聴者にプレゼントされるこの番組は(それでこの名前がついている)、TBSとB/Rアプリで同時放送される。初回は10月30日午後10時(東部標準時)から放送された。
B/Rゲーミングのブランド戦略ディレクターを務めるリチャード・ロペス氏は、次のように語る。「『100×100』はB/Rのブランドステートメントといってもいいのではないだろうか。この番組が生放送されれば、きっと、B/Rというブランドが象徴するものが要約され、形になって現れるだろう」。
胸襟を開く、リニア放送企業たち
E・W・スクリップス・カンパニー(The E.W. Scripps Co.)は9月、eスポーツチームのミスフィッツ(Misfits)とコンテンツベースのパートナーシップを結んだと発表した。これに続くB/Rゲーミングによるテレビコンテンツへの投資は、リニア放送企業がゲームおよびeスポーツのオーディエンスが持つ潜在的価値を認識しつつあることのさらなる証となる。一部の観測筋はこうした投資を警戒している。ゲームオーディエンスの大半は、中毒性の高いコンテンツを求めてTwitchやYouTubeといったストリーミングサービスに引き寄せられているのであって、リニアテレビに引き寄せられているわけではないと、彼らは指摘する。ニールセン(Nielsen)のeスポーツおよびゲーム担当バイスプレジデント、マット・ボイド氏は、次のように語る。「こうしたイベントの多くで集客力を発揮したり、解説者を務めたりしている大物タレントやストリーマーの大半、こうしたパーソナリティーの多くは、ストリーミングプラットフォームを主戦場にしていると思う」。
B/Rゲーミングは、この障壁を両面作戦を用いて回避することを計画している。ひとつは、前述のストリーマーたち(エリン・アシュリー・サイモン氏などのeスポーツコンテンツクリエイターや、FIFAストリーマーのマイク・ラベル氏などの人気Twitchパーソナリティー)を起用して、B/Rゲーミングが制作するリニアコンテンツの、Twitchオーディエンスに対するアピール力を高めることだ。「『100×100』は、いま私がブリーチャー・レポートと取り組んでいる、さまざまな番組やコンテンツイニシアチブのひとつにすぎない」と、サイモン氏は語る。「すでに私はB/Rチームの一員になっているので、チームの一員として、今後もゲームの最前線でさまざまなことに挑戦していくことになるだろう」。
その一方でB/Rゲーミングは、従来型スポーツ界のスターをリニアコンテンツに起用することが、ブリーチャー・レポートに馴染みはあるが、そのゲームコンテンツは見たことがないスポーツファンの心をつかむことにつながるとも確信している。B/Rゲーミングはこれまでも、スポーツ系ゲームタイトルや、コロナ禍をきっかけとするアスリートからTwitchストリーマーへのパイプラインにフォーカスしてきた。この点を踏まえると、あながちこの想定は不合理ではない。「サッカーは観るが、FIFAはプレイしないという人は、そんなにはいないだろう。反対に、FIFAはプレイするが、サッカーはやらないという人もだ」と、ラベル氏は語る。「どちらの経験もある人が大半だろう。そこにはある種の『相乗効果』があるはずだ」。
「最高中の最高のものを」
B/Rゲーミングのリニアコンテンツが成功するかどうかはともかく、同ブランドの進化(そして、ターナーがそれに割いてきたリソース)が示しているのは、ESPNといった有名プレイヤーの退場もあったにせよ、従来型スポーツエンターテインメントブランドはいまなお、ゲームおよびeスポーツのオーディエンスとエンゲージする意欲に満ち満ちているということだ。「100×100」をはじめとする新たなコンテンツ群の全貌が見えてきたいま、リニューアルしたB/Rゲーミングは、カジュアル系、ハードコア系を問わず、全ゲーマーの心をつかめるはずだと、ディル氏は確信している。
「B/Rゲーミングが考えているのは、どうすれば、自分たちのプラットフォームをマイクとして使ってゲームの優れたところをさらに大きくし、それを称賛できるかということだ」と、ディル氏は語る。「それが過小評価されているコミュニティのショーケースであれ、ゲーマーのショーケースであれ、B/Rゲーミングは最高中の最高のものを見せていきたいと思っている」
[原文:Why an evolved B/R Gaming is investing in its linear, televised gaming content]
ALEXANDER LEE(翻訳:ガリレオ、編集:長田真)