1年でオンラインショッピングがもっとも活況を呈する「サイバー5」(感謝祭からサイバーマンデーの5日間)が終わった。そして、コマース事業を展開するパブリッシャーの多くが、そこから大きな収穫を得た。この目覚しい成長は、この特殊な状況に順応すべく、1年を通じて行ってきた準備の賜物だ。
1年でオンラインショッピングがもっとも活況を呈する「サイバー5」(感謝祭からサイバーマンデーの5日間)が終わった。そして、コマース事業を展開するパブリッシャーの多くが、そこから大きな収穫を得た。
BuzzFeedのギフトガイドは、規模の拡大とスタートの前倒しが功を奏して、前年比で575%以上もの売上増加を記録した。BuzzFeedのコマース部門でシニアバイスプレジデントを務めるニラ・アリ氏によれば、同パブリッシャーはギフトガイドコンテンツの作成量を200%以上増やし、提供開始を6週間早めたという。
ボックス・メディア(Vox Media)が所有するザ・ストラテジスト(The Strategist)のサイバー5の売上も、ホリデーガイドだけでなく、1年がかりで磨きをかけたさまざまな記事の効果もあって、前年比で120%の増加を記録した。実のところこの成長の大半は、ブラックフライデーやサイバーマンデーに特化した記事ではなく、エバーグリーンコンテンツからの売上によってもたらされたと、ボックス・メディアのeコマース部門でシニアバイスプレジデントを務めるカミラ・チョー氏は話す。
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ベライゾン・メディア・グループ(Verizon Media Group)の消費者売上部門責任者、ジョアンナ・ランバート氏によれば、同社にとって2度目となるサイバー5でも(同社がコマース部門への大規模投資を行うようになってから今回で2度目)、売上は105%増加し、GMV(流通取引総額)も約200%の増加を記録したという。
この目覚しい成長は、この特殊な状況に順応すべく、1年を通じて行ってきた準備の賜物だ。そしていま、これら3社を含むパブリッシャー各社は、今年の経験のうちどれだけが来年の動向を示すシグナルなのか、何が例外なのかを見極める必要に迫られている。
業界内では、自分たちが歩みはじめたばかりの道のりでメディアやマーケティングを促した促進剤として、新型コロナウイルスの影響を語る風潮が広がっているが、今年のサイバー5で起きたことの多くは、きわめて特殊な要因の数々がその原動力となった。
その一例は、マーチャントや小売業者の多くが、受注を早めることによって、オンライン注文が殺到した場合に生じるフルフィルメントの諸問題を回避できるかもしれないと考え、目玉商品の発売開始を通常よりも大幅に早めたことだ。
(想定外の事態も、彼らの心配の種のひとつだった。アフィリエイトネットワークのインパクト[Impact]が約2時間ダウンすると、パブリッシャー各社のコマース部門はパニックの波に襲われた)。
2021年を数週間後に控えるいまも、景気動向は依然として不透明だが、今年のサイバー5から、パブリッシャーもエージェンシーもいくつかのヒントを得た。
ショッピングシーズンの延長
フルフィルメントに対して抱くマーチャントの懸念や、Amazonがプライムデーを10月半ばに開催したことなど、いくつもの要因が重なって、2020年のホリデーショッピングシーズンは大幅に前倒しされた。
そのなかのひとつが、ほかよりも重要性で勝っていたか否かはともかく、「前倒しするというマーチャントの決断は正しかった」と、ジフ・メディア・グループ(Ziff Media Group:以下、ZMG)のパートナーグロース&マネージメント部門でバイスプレジデントを務めるジェシカ・スパイラ氏は語る。
スパイラ氏によれば、ZMGのさまざまなサイトから集めたデータから、同社のオーディエンスはショッピングに対して決断力があることがわかっているという。「(平均注文額[AOV]がアップし)コンバージョン率も通常の2倍だった」と、同氏は語る。「(サイバー5における)ZMGのリードは非常に強固だった」
今後はメディアとアフィリエイトの予算一本化が進むだろう。その正しさを証明するパブリッシャーが増えているからだ
これまでは、ブランドも小売業者もアフィリエイト予算とメディア予算を分けて管理してきた。パブリッシャーは何年も前から広告主と交渉し、パッケージ契約の締結を試みてきたが、 「この難問を解決できるようになったパブリッシャーは少ない」と、PMGのブランド&メディアパートナーシップ部門でシニアディレクターを務めるナタリー・ゲルダート氏は語る。
しかし、今年は「それができるパブリッシャーが増え」、彼らの成功によって、メディアインベントリー(在庫)を革新的な方法で用いて、コンバージョンを高めるという英知に再び目を向ける人々が増えるようになるかもしれないという。
「常時オン」型の思考
パブリッシャーと小売業者はいまも、大型ショッピングイベントに依存して、売上を大きく伸ばしている。その一方で今年は、パブリッシャー各社が年間を通して好調な売上を維持できる体制をつくる必要性が改めて浮き彫りになった。このことは、今後半年間、新型コロナウイルスのワクチンが米国内に行き渡り、効果が現れるのを待つあいだ、特に重要になってくるだろう。
「クライアントの大半は、日常のなかに勝機を見出そうとしている」と、ピュブリシス(Publicis)のコマースプラクティス部門責任者、エイミー・ランジ氏は語る。「ホリデーシーズンの観点から事実であるとわかっていることや、マーケティングスケジュールの立て方については発表しているが(中略)第1~2四半期の動向については、我々もよくわかっていない」。
大型ショッピングイベントの期間には、エバーグリーンコンテンツへのフォーカスも効果的だ。ザ・ストラテジストは今年のサイバー5で、エバーグリーン系の記事から、ブラックフライデーやサイバーマンデーの関連記事を上回る売上を得ている。
先手必勝
アフィリエイトネットワークの場合、通例はデータやレポートのラグのせいで、パブリッシャーがどの投稿が最良の結果を生み出しているのかを特定するのは難しい。そしてこれが、リアルタイムで売上を最大化することを困難にしている。だが、ほかのシグナルの発見に投資してきたパブリッシャーは、今年のサイバー5で大きな結果を残した。
その一例がBuzzFeedだ。同社は、どの記事をソーシャルで推すべきなのかを理解するのに役立つ、さまざまな指標やインジケーターを見つけている。
「全体的に見て、BuzzFeedはネットで展開するのがうまくなりつつある」と、アリ氏は語る。「かつてはどちらかというと、『とにかく試してから、結果を見よう』というアプローチだった。BuzzFeedは何年もの時間をかけて、Facebookやインスタグラム、Apple、自社の各サイトでさまざまな戦術を試し、最高の結果を生み出せる場所を見つけてきた」。
[原文:‘We’re getting better at swarming the internet’: What publishers learned from the Cyber 5]
MAX WILLENS(翻訳:ガリレオ、編集:長田真)