「 ミレニアル世代の専門家を、我々はなぜ名乗るのか?」:NEW STANDARD 久志尚太郎

ミレニアル以前と以降のあいだには、世代論では語り尽くせない、深くて太い溝ができている。そのことを人々はそろそろ直視しなくてはいけない。

ミレニアル世代が熱狂する世界中のトピックを発信するデジタルメディア「TABI LABO」を運営し、ビジネスデザイン&ブランドスタジオ事業やイベントスペース&カフェ事業も手掛けている、 NEW STANDARD株式会社。同社は、この8月に株式会社TABILABOから社名を変更した。これに伴い、CI(コーポレート・アイデンティティ)や組織体制も一新。「メディアカンパニー」から「ミレニアル世代の熱狂を起点とする『ムーブメントカンパニー』」へと、大きく舵を切っている。そのうえで今後、「ミレニアル世代の専門家」として、メディア事業やソリューション事業のみならず、多角的にビジネスを展開していくという。

「ミレニアル世代とともにムーブメントを起こし、社会の可能性を広げる新しいスタンダード(NEW STANDARD)を作りたい」と、同社代表取締役である久志尚太郎氏は、力強く語る。すでにZ世代やα(アルファ)世代も議論の俎上にあがるいま、なぜ「ミレニアル世代の専門家」を名乗るのか、その意図を訊いた。

_GD_4625

「新しいスタンダードを作りたい」と語る久志尚太郎氏

――ミレニアル世代については、すでにおおかたの議論は済んでいると思う。そんななか、なぜあえて「ミレニアル世代の専門家」を名乗るのか?

諸説あるものの、一般的な定義では、ミレニアル世代は1980年代から2000年代に生まれた世代を意味すると思う。しかし、我々はデモグラフィックな意味での「世代」だけではなく、どのような価値観を持っているかに着目すべきだと考えている。

いま社会は、テクノロジーの進化やグローバル化がもたらした、大きな変革の最中にある。また、それに伴い従来の価値観とは大きく異なる「非連続な価値観」を持つ人々も増えてきた。この新しい価値観を持ち、社会の起点に立っている、もしくは立とうとしている人々が、ミレニアル世代だと、我々は捉えている。だからこそ、「ミレニアル世代の専門家」を名乗り、彼らと共に社会の可能性を広げる新しいスタンダードを創りたいと思った。

――「非連続な価値観」とは、具体的にいうと?

ミレニアル世代の価値観には、大きく分けて3つの特徴があると考えている。ひとつめは、ビジネス・プライベートを問わず、日常生活はオンラインとオフラインが統合した「OMO(Online Merges with Offline)」が前提になっているという点だ。企業がミレニアル世代をターゲットにビジネスを行う場合は、この前提を考慮しなければならない。

ふたつめの特徴は、プロダクトやサービス、もしくはブランドを選ぶ基準にある。ミレニアル世代は、機能や使い安さ、そしてイメージだけでなく、そのプロダクトやサービス、もしくはブランドが、ビジネスとして社会にどれだけ貢献しているを重視する。企業の社会貢献というと、CSRを思い浮かべるかもしれないが、CSRは「Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任」という意味であることからもわかる通り、「責任を果たす」という受け身のイメージが強い。そうではなくて、ここでいう社会貢献とは、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)のような本業で社会を変えていく、という前向きな考え方だ。

最後は「共感」を非常に重要視すること。ミレニアル世代が求めているのは、自分たちが共感できる物語性のあるメッセージやストーリーだ。企業が自分たちに都合の良いことだけを発信するコミュニケーションは、今後通用しなくなるだろう。

――なるほど。では、ミレニアル世代の価値観に適合するために、企業が抑えておくべきポイントは?

まず、従来の企業と消費者の関係を考えてみよう。たとえば製造業の場合なら、企業と消費者との関係は、企業が自ら企画し、製造した商品を届けるという、プロダクトアウトな視点を起点としていた。パッケージデザインや販売にあたってのマーケティング施策も、すべてこうした視点に基づいて考えられていたといっていいだろう。その結果、エンドユーザーである消費者が実際にモノに接する購買体験は、一番後回しになる。つまり、これまでの企業と消費者の関係は、製造主導だったのだ。

ミレニアル世代と適切なコミュニケーションを取るためには、このようなベクトルを正反対にする必要がある。まずはじめに考えるべきは、ユーザーにどのような体験をしてもらうかというUXの設計だ。それがコンセプトであると同時に、ブランドになる。そして、そのコンセプトを、どのような購買体験につなげるか、マーケティングやクリエイティブに落とし込んでいく。UXを最優先としたコミュニケーションと商品設計があり、製造は最後にくるのだ。

実際、ミレニアル世代に支持されているD2C(Direct to Consumer)やDNVB(Digitally Native Vertical Brand)といった、消費者に直結したモノづくりを実践している企業では、最初に検討するのはUX(ユーザー体験)だ。この考え方は製造業だけではなく、サービス業も同様で、いかにユーザーが求めるUXを生み出せるか、そして、それに基づいた事業を展開できるかがポイントになる。

――つまり、既存の事業構造を大幅に見直すべきと?

こういうと矛盾しているように聞こえるかもしれないが、必ずしも無理に既存の仕組みを変える必要はない。

「失われた20年」という言葉がある通り、残念ながら平成は停滞の時代だった。バブルのころは、アメリカを追い越したつもりでいたのに、いまとなっては周回遅れだ。では、平成の最大の失敗というのは何か。それは、昭和の時代にあったものを、無理矢理変えようとしたことだと思っている。すでに大多数から支持されているものを変えるのは、難しいうえに非常な労力がかかる。しかも、既存の仕組みを支持する組織とのハレーションも起きるだろう。場合によっては、変革に向けた努力が一切報われないという可能性もある。

変化を起こすうえで重要なのは、既存の仕組みはそのままに、それとは別に新しい価値観に基づく仕組みを創ることだと考えている。わかりやすい例がシリコンバレーだ。アメリカの経済の中心は、東海岸のニューヨークだが、新しい価値観をもつ起業家たちは、西海岸のシリコンバレーでインターネットを活用した世界規模の企業をいくつも立ち上げた。

既存のもので満足している人たちが顧客なのであれば、無理に変わろうとしなくていい。変わろうと言葉ではいいながら、変わりたくないと心のどこかで思っている人も沢山いるだろう。それなのに「時代についていくためには、変わらなければならない」と、不要な変革を進めようとした結果が「失われた20年」を招いたのだと思う。大切なのは、双方の価値観を否定しないことだ。そして、新しい価値観で何かをはじめたいなら、議論してる時間はもったいない。いますぐ既成概念の外で、スタートするべきだ。

――そうした思考が、「TABILABO」から「NEW STANDARD」へのリブランディングへ繋がっているのか?

創業時から運営している「TABI LABO」や、2017年に立ち上げたブランドスタジオ事業は順調に成長していた。しかし一方、創業から5年が経ち、今後の継続的な事業成長やさまざまな新規事業の立ち上げを考えるなか、企業としての目標や、各事業部が目指すべき姿が見え辛くなっていることに気付いたのだ。ビジネスをさらに成長させるためには、それまでのCIやコンセプト、そして組織体制を見直し、各事業部に一貫した目的を据える必要があった。

そこで、各事業部の目的を、これまで積み重ねてきたミレニアル世代のインサイトやノウハウを活かし、ミレニアル世代の「既成概念を超える新たな価値観に基づいて、社会に「ムーブメント」を起こすための手段」であると定義した。NEW STANDARDは、ユーザー向けにはミレニアル世代に熱狂を生み出すアイデアやコンテンツを、クライアント向けにはミレニアル世代にアプローチするための課題解決を提供していく。

TABILABOは、2019年8月よりNEW STANDARDへ

TABILABOは、2019年8月よりNEW STANDARDへ

――では、新しい企業コンセプトである「ムーブメントカンパニー」の意味するところとは?

ムーブメントというのは、ブームやトレンドのような一過性のものとは異なる、ライフスタイルに「定着するもの」。それがやがて新たな「スタンダード」になる。「ムーブメントカンパニー」とは、ムーブメントを仕掛け続け、新しいスタンダードを生み出す会社だ。我々は、これまでメディアや広告で培ってきたノウハウをアセットとして活用しながら、ミレニアル世代とともに新しいスタンダードを生み出すことを目指している。

この「ムーブメントカンパニー」という言葉は、リブランディグにあたりCIを一新するなかで生まれた。メディアも広告も、コンテンツやリアルな場所も、D2Cなどの新規事業もすべて、私たちにとっては手段であると捉え、自分たちのビジネスの存在意義は何か、本質的なところを考え抜いた。

――ミレニアル世代向けのビジネス展開を考えている企業へ、ひと言アドバイスするとしたら?

ミレニアル世代の価値観は、従来の価値観とは断絶した非連続なものだ。そして、これはミレニアル世代以前と以降で大きく異なる。いままでの価値観や方法では、ミレニアル世代を熱狂させることは難しい。彼らには、既存のものとは異なる、新しいものを提供する必要がある。

そのために我々は、新しいスタンダードになり得るような、アジェンダやコンテンツをつくっていく。そこに共感を持ってもらえるような、新しいものを創りたい、新しい価値観を届けたいと考えている企業を支援し、一緒に社会に対してムーブメントを起こしていきたいと思っている。

_GD_4703_tri▼久志尚太郎(くし・しょうたろう) NEW STANDARD株式会社 代表取締役

 

1984年生まれ。中学卒業後、単身渡米。16歳の時に飛び級で高校を卒業後、起業。帰国後は19歳でDELLに入社、20歳で法人営業部のトップセールスマンに。21歳から23歳までの2年間は同社を退職し、世界25カ国をまわる。復職後は25歳でサービスセールス部門のマネージャーに就任。同社退職後、宮崎県でソーシャルビジネスに従事。2013年より東京に拠点を移し、2014年2月TABILABO創業。クリエイティブディレクターとしてヤマハ発動機「サウナとトリシティでととのった」やUltra Japan「OFFICIAL AFTER MOVIE2016」を手掛ける。2017年に社内組織BRAND STUDIO(ブランドスタジオ)を設立。2019年8月より社名をNEW STANDARDへ変更した。

Sponsored by NEW STANDARD

Written by 滝口雅志
Photo by 合田和弘