VPAIDは、「動画プレイヤー広告インターフェース定義(Video Player Ad-Serving Interface Definition)」の略語。動画広告が盛んないま、その重要性は増しています。しかし、VPAIDとはそもそも何なのでしょうか。今回の「一問一答」シリーズで解説します。
アドテク業界では難しい専門用語が好まれます。「VPAID(ブイペイド)」もそのひとつでしょう。VPAIDは、「動画プレイヤー広告インターフェース定義(Video Player Ad-Serving Interface Definition)」の略語です。
この言葉を初めて使ったのは、米国のネット広告業界団体であるインタラクティブ広告協議会(Interactive Advertising Bureau:以下IAB)で、2012年のことでした。したがって、新しい言葉ではありませんが、今日のプログラマティックにおいてその重要性は高まっています。なぜなら、ビューアビリティ(可視性)を測定できるから、そして動画ヘッダー入札が増加しているからです。
パブリッシャー、動画プレイヤー、そしてアドテクベンダーは、VPAID広告を提供できなければ広告売上を失う可能性があるとしきりに強調しています。しかし、VPAIDとはそもそも何なのでしょうか。デジタルマーケティングを変えるテクノロジーをわかりやすく説明する「一問一答」シリーズ。今回は、このVPAIDを取り上げます。
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――まずは基本から。VPAIDとは何ですか?
VPAIDは、動画プレイヤーに指示を与えるスクリプトです。どの広告を再生するのか、広告の長さはどれくらいか、いつ広告を表示するのかを指定します。また、再生や一時停止など、さまざまなコントロールの配置場所を決定します。
――VPAIDが求められる理由は?
動画広告の標準的なスクリプトである「VAST(バスト)」と比べて、VPAIDには大きく優れている点がふたつあります。インタラクティブな機能を追加できることと、測定ができることです。「VASTはごく普通のクリエイティブ向けだが、VPAIDを採用すれば、パブリッシャーは利益を得られる。自社の動画プレイヤーで対応可能な広告の種類が増えるからだ」と、広告インテリジェンス企業のエクスポネンシャル(Exponential)で、グローバルパブリッシャー開発担当バイスプレジデントを務めるリック・アベル氏は述べています。
たとえばVPAIDなら、視聴者がプレロール広告をクリックすると、その製品の詳細情報が表示されます。また、ボストンとニューヨークで同じ動画広告を配信しながら、広告の終わりに表示される宣伝文を都市によって変えるといったことが可能になります。
――では、測定についてはどうでしょうか?
VPAIDタグを使えば、インタラクティブ性を獲得できるだけでなく、広告主がこれまでよりはるかに簡単に動画広告のパフォーマンスを追跡できます。また、ビューアビリティ、視聴完了率、クリックスルー率なども簡単に測定できます。
ネイティブ広告のプラットフォームを手がけるシェアスルー(Sharethrough)で製品マーケティング担当のバイスプレジデントを務めるアレックス・ホワイト氏によれば、検証プロバイダーが動画のビューアビリティを測定するには、VPAIDタグで動画をラップする必要があるそうです。ホワイト氏は、「VPAIDは、いわば透明なレイヤーを動画の前に追加して、ビューアビリティを測定できるようにしている。そういう透明なレイヤーを追加するには、VPAIDを使うしか方法がない」と説明しています。
――VPAIDは素晴らしいもののようですが、問題点は何でしょうか? 何らかの問題があるはずです。
VPAIDは、使い方によってはいくつかの欠点があります。キャンペーンのパフォーマンスを追跡しているメディアエージェンシーはVPAIDを好みますが、その理由はビューアビリティを測定できるためです。しかし、パブリッシャーの場合、VPAIDを導入すると自社サイトの動作が遅くなることがあります。
モバイル広告企業のインモビ(InMobi)でグローバルアライアンス担当シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーを務めるアン・フリスビー氏は2016年、バイサイド側から、測定を可能にするためにすべてのインベントリー(在庫)をVPAIDに移行したいという依頼を受けたそうです。ところが、モバイルでページの読み込みに時間がかかるようになったため、アプリ環境においてはVPAIDは適切なスクリプトではないということが、その1年でわかったといいます。
「広告が読み込まれるまで視聴者が待つことはない。画面に何も表示されなければ、視聴者は離脱してしまう」と、同氏は言います。
――モバイル以外のプラットフォームなら、VPAIDはうまく動作するのでしょうか?
残念ながら、必ずしもそうとは言えません。オンライン動画プラットフォームを手がけるブライトコーブ(BrightCove)で製品管理ディレクターを務めるアンドリュー・ブロードストーン氏は、VPAIDはビューアビリティの測定には適しているものの、モバイルやスマートTVでは質の高いインベントリの多くを台無しにしてしまうと考えています。また、一部のデスクトップウェブブラウザでもVPAIDが動作しないことがあると指摘しています。
「VPAIDは動作しないことが実に多い。一部の顧客は、(動作が停止する割合が)25~30%になると報告している」と、ブロードストーン氏は述べています。「ブランドの目的が視聴者に広告を見せることであるなら、VPAIDはその目的の達成を妨げる大きな障害になる可能性がある」。
YUYU CHEN(原文 / 訳:ガリレオ)
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