【一問一答】「 TCF 2.0 」とは?: GDPRに準拠する「透明性と同意の枠組み」の改定版

一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:以下、GDPR)への準拠に関して、広告業界がますます神経質になっています。複数の広告会社幹部によれば、そのきっかけは、英国のデータ保護当局である情報コミッショナーオフィス(Information Commissioner’s Office:以下、ICO)が6月末、アドテク業界に警告を発したレポートを公開したことでした。

ICOはそのレポートで、メディア企業によるコンプライアンス対策の標準化を目指した広告業界で唯一の取り組みにも批判を投げかけました。その取り組みとは、欧州インタラクティブ広告協議会(IAB Europe:以下、欧州IAB)とIABテックラボ(IAB Tech Lab)によるトランスペアレンシー&コンセントフレームワーク(Transparency& Consent Framework:以下、TCF[透明性と同意の枠組み])の策定です。しかし、欧州IABとIABテックラボは、TCFをさらに多くのメディア企業に受け入れてもらうため、1年かけてTCFの全面的な見直しを行ってきました。そして発表されたのが、「TCF 2.0」です。

「社内では、これから半年間に当局の姿勢が厳しくなることを懸念する声が高まっている」と、ある大手パブリッシャーの幹部は語ります。一方、複数のエージェンシー幹部は、この数カ月間で自社の法務部門がかなり消耗していると述べています。デジタルマーケティングの未来に示唆を与える用語をわかりやすく説明する「一問一答」シリーズ。今回は、TCF 2.0について説明します。では、基本的なことから説明しましょう。

──TCF 2.0とは何ですか?

2016年に、はじめて発表されたTCFの改定版です。その狙いは、企業(パブリッシャーとアドテクベンダーが主な対象。エージェンシーも含む)が、GDPRに準拠しながらオープンエクスチェンジを介してプログラマティック広告を利用し続けられるようにすることです。

──なぜ全面的に改定されたのですか?

簡単にいえば、パブリッシャーは最初のTCFを嫌っていました。欧州IABに加盟している企業の多くがアドテクベンダーであるため、TCFの第1版はもっぱらアドテクベンダーに有利な内容になっているというのが、パブリッシャーの共通認識だったのです。そこで、パブリッシャーの要求に合わせた修正が行われ、アドテクベンダーが悪用できそうな抜け穴がはるかに少なくなりました。Googleも、2020年3月末までにTCFに参加することを表明しています

──Googleの参加は重要なことなのですか?

はい。Googleがコントロールしている広告市場の大きさを考えれば、膨大なリソースを必要とするTCFとの統合作業が、Googleの参加なしに議論されることはほとんどなかったでしょう。ベンダーはこれまで、相互運用の問題への対処を余儀なくされてきました。ガイドラインとルールの枠組み、そして同意状況を示す数字(いわゆる「コンセントストリング」)をデジタル広告パートナーに送信するしくみに関して、2つのルールセットが存在するためです。1つは欧州IABが策定したルール、もう1つはコンプライアンスに対して保守的なアプローチを採っているGoogleのルールです。ただし、Googleとの統合が実現すれば、将来的に何らかの条件が課せられるのではないかと神経質になっているパブリッシャーもあります。

──ということは、TCF2.0は歓迎されているのですか?

その答えは、イエスでもありノーでもあります。第2版に対する見方はさまざまですが、全体としては第1版よりはるかに優れていると考えられています。とはいえ、業界全体で標準規格の策定を目指した取り組みはこれしかないため、多くの企業は代わりの選択肢がほとんどないことを知っています。問題は、プライバシー活動家だけでなく、多くのパブリッシャー幹部やエージェンシー幹部が、TCFが実際に人々を保護できるのか疑問を抱いているということです。その大きな理由は、TCFが企業の遵守すべきガイドラインに過ぎず、罰則規定をもっていないことにあります。結局、何らかの罰則を科せるのはICOしかありません。つまり、たとえTCFがアドテクベンダーに対し、プログラマティック入札リクエストに含まれるデリケートな個人情報などのデータを、ユーザーの明示的な同意なしに利用することを禁じていても、それを強制したり監視したりする手段はないのです。

──取り締まりも難しいのでしょうか?

デジタル広告サプライチェーンには膨大な数のアドテクベンダーが存在しています。したがって、実効性のある方法でデータ漏えいを取り締まることはまず不可能です。業界では多くの人が、TCFがあればすべての関係者がGDPRがらみの問題を解決できようになるというIABの主張は間違いだと考えています。それどころか、業界を長年悩ませている悪しき慣行を根絶できず、むしろアドテクの現状を維持することになると見ています。しかしIABは、少なくともTCFがあれば、すべての関係者がコンプライアンスについて同じ考え方をするようになるとの見方を示しています。

──では、TCFを成功に導くものは何なのでしょうか?

それはまだわかりません。まずいえるのは、Googleが普及の鍵を握るであろうということです。GoogleがTCFとの統合を行うまで、パブリッシャーやベンダー、それにエージェンシーが続々と統合に乗り出すようにはならないでしょう。実際、複数のアドテク幹部やパブリッシャー幹部がそう述べています。第1版と完全に統合されている割合がかなり少ないことや、統合に技術的リソースが必要になることを考えると、TCFが大きな成功を収めるかどうかは、当面のあいだはっきりしないでしょう。また、おそらくさらに重要なのは、ICOが第2版を認める発言をしておらず、今後認めるかどうかも見通せないことです。第1版を批判したICOが、第2版に直接言及するかどうか、そして新たに追加された内容をGDRPに準拠したフレームワークとみなすかどうかに、多くの関心が集まるでしょう。

Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)