アドテク用語で現在の注目株は、昨年に市場へ導入された、一風変わったプログラマティック取引「プログラマティックギャランティード(保証型のプログラマティック取引)」です。デジタルマーケティングの未来に示唆を与える用語をわかりやすく説明する「一問一答」シリーズでは今回、この言葉について、改めて解説します。
アドテクは、たえず進化する嫌な存在です。そして、さまざまなプログラマティック取引の方法を説明する用語は、アドテクとともに変化しています。つまり、学ぶべき新しい用語が常にあるわけです。
アドテク用語で現在の注目株は、昨年に市場へ導入された、一風変わったプログラマティック取引「プログラマティックギャランティード(保証型のプログラマティック取引)」です。
アドテク関連のすべてのものと同じく、「専門知識によって互いを煙に巻こうとしている」者はまだ大勢います(この簡潔な表現は、あるアドテクのベンダーの幹部によるもの)。そしてその結果、混乱が生じています。プログラマティックギャランティードが、まったく異なる補完的なプログラマティック取引の方法「オートメーテッドギャランティード(保証型の自動取引)」と同じ意味で使われているのも、そうした混乱のひとつです。
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デジタルマーケティングの未来に示唆を与える用語をわかりやすく説明する「一問一答」シリーズでは今回、「プログラマティックギャランティード」について、改めて解説します。
――プログラマティックギャランティードとは何なのでしょうか?
フリーランスのアドテクコンサルタントであるポール・ガビンス氏は、こう説明します。「プログラマティックギャランティードは、新しいモデルだ。プログラマティックバイヤーは、デバイスのIDやクッキーに基づいてオーディエンスとパブリッシャーをマッチさせる。パブリッシャーがサプライサイドプラットフォーム(SSP)やエクスチェンジを通じて入札要求で正しいIDを送るかぎり、固定価格で購入することに事前合意できる」。
――どの程度正確なのでしょうか?
エージェンシーは、自社のデータ管理プラットフォーム(以下、DMP)をパブリッシャーのDMPに同期させ、適切なターゲットオーディエンスに合致させます。プログラマティックギャランティードでは、広告バイヤーが、囲い込みが行われているプライベートマーケットプレイス(以下、PMP)と比べてはるかに大きい規模で、より自動的に、キャンペーンでターゲットにしたいパブリッシャーの特定オーディエンスにアクセスできます。一方、パブリッシャーは価格設定時に、バイヤーによる一定レベルでのコミットメントが保証されます。
――オートメーテッドギャランティードとはどう違うのですか?
オートメーテッドギャランティードは、プログラマティックギャランティードとはまったく異なります。基本的には、もともと手作業で行われていたメディア予約の方法を、自動化されたプロセスに置き代えただけです。オートメーテッドギャランティードとPMPは、「プログラマティックダイレクト」という用語でひと括りにされます。
――しかし、そのふたつの用語がごちゃ混ぜになりつつあると?
同じ意味で使われつつあります。ですが、実際には完全に別々の手法です。
――「リアルタイムプログラマティックギャランティード」という用語も聞いたことがありますが?
意味は同じで、製品名が違うだけです。
――プログラマティックギャランティードはなぜ必要なのですか?
プログラマティックギャランティードが生まれた主な理由は、パブリッシャーと広告バイヤーサイドの両方で、PMPへの不満が広がったことによります。アドテクノロジープラットフォーム「オープンX(OpenX)」の欧州担当マネージングディレクター、アンドリュー・バックマン氏によると、PMPは理論的にはいいアイデアですが、現実には、広告バイヤーが十分なインプレッションを稼げる保証はないし、求めているターゲットオーディエンスが獲得できる保証もないといいます。
――誰がプログラマティックギャランティードをプッシュしているのでしょうか?
一般には、パブリッシャーサイドのほうがプッシュしています。パブリッシャー側の方がPMPに対する不満が大きいからです。「彼らには、エージェンシーがもっと支出しやすくしてほしいという思いがある。さらにエージェンシーの方も、パブリッシャーと同じくらいPMPに不満を抱いている可能性もある。ほかの誰かのデータセットに頼っているため、ターゲットにしたいユーザーがひとりもPMPにはいないとわかることも多い」と、バックマン氏は付け加えます。さらにPMPは、手作業にかなり頼ったプロセスです。
――どうしてそうなのでしょうか?
PMP取引を予約したい場合、手作業であらゆる種類の退屈で複雑な管理作業を行わなければなりません。「20歳の若者が『Excel』のスプレッドシートを使って行う場合も多いため、多くのミスが生じかねない」と、バックマン氏は指摘します。一方、プログラマティックダイレクトの場合、エージェンシーはDMPをパブリッシャーのものと同期して、適切なオーディエンスを見つけることができます。しかも、ブランドにとって安全な方法ですべてが行われるので、オープンな取引でありがちな広告の配置ミスの心配がありません。
――しかし、もっと大きな規模ではどうでしょうか?
たしかに。プログラマティックギャランティードは、PMPの概念を自動化したようなものです。ですが、パブリッシャーが何百ものPMPに対応する必要がなくなります。バイヤーにとって、PMPは複雑で厄介です(たとえば「英国のグレイターマンチェスター州に住み、休暇をカリブ海のバルバドス島で過ごすことに関心がある25~35歳の男性」というターゲットオーディエンスが求められても、そうしたオーディエンスが必ずしもいるとは限りません)。
――PMPは落ち目になっているということでしょうか?
その可能性はありますが、いまのところは、まだかなり一般的です。
――プログラマティックギャランティードの難点は?
プログラマティックギャランティードは、ヘッダー入札にやや似ていて、実施するのが技術的に難しい場合があります。パブリッシャーのDMPをエージェンシーのDMPに同期するのは、容易ではありません。「それが難点のひとつです」。
Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)