デジタルマーケティングの未来に示唆を与える用語をわかりやすく説明する「一問一答」シリーズ。今回は、GDPRにおける「コンセントストリング(consent string:一連の同意)」という新しい用語について取り上げます。コンセントストリングとは何であり、何のために必要なのかを解説します。
データプライバシー規則に取り組んでいる人たち(みなさんそうですよね?)は、「コンセントストリング(consent string:一連の同意)」という新しい用語が取り沙汰されるのを、これから耳にすることになります。
デジタルマーケティングの未来に示唆を与える用語をわかりやすく説明する「一問一答」シリーズ。今回は、コンセントストリングとは何であり、何のために必要なのかを解説します。
以下、いつものように、一問一答形式でお伝えします。
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――コンセントストリングとは、なんですか?
コンセントストリングは、広告入札要求に付加される一連の数字で、「デイジービット(daisybit)」とも呼ばれます。アドテクベンダーへの同意の状況、つまり、パーソナライズド広告の配信にデータを利用する同意をユーザーからもらっているかどうかを確認するもので、欧州の「一般データ保護規則」(General Data Protection Regulation:以下、GDPR)では、この同意が必要条件になっています。
インタラクティブ広告協議会(IAB)ヨーロッパは、同協議内のグローバルベンダーリストに登録しているすべてのベンダーにコンセントストリングを割り当てています。IABのトランスペアレンシー&コンセントフレームワーク(Transparency & Consent Framework:透明性と同意の枠組)に参加したいベンダーは、このリストに登録する必要があります。Googleも、同社の同意管理プラットフォーム(以下、CMP)であるファウンディングチョイス(Funding Choices)を利用する会社向けに、独自のコンセントストリングを設けています。
――何のために必要なのでしょうか?
デジタル広告のエコシステムでは何千ものベンダーが稼働しているため、GDPRへの抵触と巨額の罰金のリスクを回避するには、パーソナライズド広告配信への同意の有無を把握することが非常に重要です。コンセントストリングは、GDPRに則った広告の購入を徹底し、利用できるデータとできないデータについてデジタル広告チェーン全体が考えを一致させるための地図のようなものです。
――コンセントストリングにはどんなデータが格納されるのでしょうか?
ベンダー、送信される広告がデータを使ってパーソナライズされることに対するユーザーの同意の有無、データ利用の目的といった情報です。IABヨーロッパは、データの目的にもIDを割り当てています。
――コンセントストリングはどんな文字列なのでしょうか?
ストリングの情報は、オンラインの広告エコシステムを通す前にバイナリ値に圧縮されます。IABヨーロッパによるコンセントストリングは、「ビット」と呼ばれる、連続する1と0の文字列です。
――仕組みは?
IABヨーロッパはトランスペアレンシー&コンセントフレームワークのもと、グローバルベンダーのリストをホスティングし、すべての参加ベンダーにIDを割り振っています。こうしたIDがコンセントストリングに含まれていることで、IABや、デジタル広告サプライチェーンのその他の企業は、ベンダーをIDで識別し、同意が得られている内容、得られていないこと、データを利用できる目的などを確かめることができます。デジタル広告の購入に極めて重要な情報である、同意を得ているベンダーと得ていないベンダーは、コンセントストリング内の数字の状態からわかります。同意のビットが「1」なら同意ありで、同意のビットが「0」なら同意なしです。コンセントストリングはパブリッシャーのCMPからスタートして、広告チェーンの各ベンダーを経て、DSP(デマンドサイドプラットフォーム)に届きます。
――コンセントストリングは正当な利益の根拠になる?
なりません。ユーザーの選択しか反映されていません。IABヨーロッパでプライバシーと公的施策のディレクターを務めるマサイアス・マシューセン氏によると、正当な利益には違ったシグナルが必要になります。将来的には、パブリッシャーがIABヨーロッパのトランスペアレンシー&コンセントフレームワークによって、正当な利益についてユーザーに透明性を提供しているかどうかを伝達できるようになるようです。「つまり、ユーザーの選択に関するシグナルとは別に、パブリッシャーの振る舞いと選択に関するシグナルが必要なのです」と、マシューセン氏は説明しています。
――明快ですね。コンセントストリングに欠点はありますか?
現時点で、コンセントストリングを改変し、たとえば「同意なし」のシグナルを「同意あり」に変えてしまうことが技術には可能です。リスクを考えればそんなことをする会社はないでしょう。それでも、専門家らによると、オープンなリアルタイム入札の次のフレームワークで、改変をできなくする「デジタル署名」が組み込まれることになっています。
Jessica Davies (原文 / 訳:ガリレオ)