「いまの時期は我々にとってチャンス」:ブルームバーグ・メディアのCEO、ジャスティン・スミス氏

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公衆衛生と経済の先行きに不安を募らせる日々が続くなか、信頼できるニュースソースを求める人が急速に増えている。

ブルームバーグ・メディア(Bloomberg Meida)では、3月の新規サブスクリプション登録が2月から86%増加した。米国の多くのパブリッシャーと同じく、新型コロナウイルスに関する記事のほとんどをペイウォールの外に移し、無料で読めるようにしているにもかかわらずだ。特に3月20日までの1週間は、ペイウォールを設けた2018年5月以来、もっとも多くの購読者を獲得した週となった。しかも、読者は世界中に広がっており、欧州とアジアでは3月に購読者数が25%増えている。Twitterで配信している24時間動画チャンネルの「クイックテイク・バイ・ブルームバーグ(QuickTake by Bloomberg)」(以前の「TicToc by Bloomberg(ティックトック・バイ・ブルームバーグ)」)も、過去16週間の平均と比べて、各プラットフォームを合わせた視聴数が40%増加した。

そこで米DIGIDAYは、サブスクリプションの増加、バーチャルイベント、そして先が見通せない状況での取り組みについて、ブルームバーグ・メディアのCEOであるジャスティン・スミス氏に話を聞いた。なお、以下のインタビューは内容を要約してわかりやすくするため、若干の編集を加えている。

──サブスクリプションが増えた背景にある消費者の行動とは?

きわめて大きな変化や混乱が起こり、今後の見通しが立たないなかで、消費者のニュースに対する関心がこれまでになく高まっている。当社のトラフィックのおよそ30%は、新型コロナウイルス関連の記事によるものだ。マーケット関連の記事は依然としてペイウォールの後ろに置いているが、サブスクリプションビジネスはこの両方で拡大している。我々のところにやって来た読者が、我々が報道している分野の広さに気づきはじめているのだ。

ブルームバーグ・メディアは、世界中に拠点を構えているという点でユニークな立場にある。我々は中国や香港、シンガポールにいる同僚たちとたくさん話をし、彼らから何が望まれているのかを感覚的に知ることができる。今朝も、最初の数週間が間違いなくもっとも大変だという話をある同僚から聞いたばかりだ。

これは経済的観点からのきわめて個人的な話だったのだが、マーケットや経済への影響が前例のないほどきわめて大きいことは間違いない。このウイルスがもたらしている脅威はあらゆる業界に及んでいるのだ。とにかく、さまざまな業界が、とても好調だった状態から文字通り需要がゼロに近い状態に変わろうとしている。

──ブルームバーグ・メディアのほかの事業に対する需要はどうだろうか?

世界で展開している広告事業は、我々にとって重要かつ大規模なものだが、今回のような出来事は広告主に自社の計画の見直しを迫るものとなる。ただし、状況は業界によって実にさまざまだ。自社のメッセージをどのように変え、どのように選ぶべきかは、その企業が属する業界によって違う。旅行業界や観光業界など、きわめて深刻な打撃を受けている業界では、すでにキャンセルが発生している。

だが、B2B製品を手がけるテクノロジー関連の企業やサービスは、重要性がはるかに高まるだろう。テクノロジーインフラ、5G、データなどを扱う企業への関心は急速に高まっている。ほかにも、金融サービスや銀行など、人々から頼りにされている業界がある。不安定な時代になると、人々が投資に関してあれこれ考え、個人投資が活発になるからだ。とはいえ、全体としては困難な時期が続くと思われる。

ブルームバーグ・メディアの広告事業は、アジアでいくらか減速があったものの、世界的にみれば第1四半期はきわめて好調だった。現在はやや視界不良の状況だが、アジアで再び勢いが増し、さまざまな活動が増えはじめるとみている。活動を中断した広告主が見直しを進め、再び活動をはじめる状況が8~10週間のうちに起こるというのが、現時点におけるベストな見通しだ。

──ライブイベント事業ではどのような対応を?

我々は3月第3週に、ある世界的な銀行と共同で、当社初のバーチャルイベントをアジアで開催した。新型コロナウイルスのパンデミックが世界のサプライチェーンに与える影響というテーマを掲げたこのイベントは、250名がオンラインで参加し、大成功に終わった。これは実験的な試みだったが、当社のアジアにおけるプレゼンスのおかげで、我々は仮想イベントにチャレンジする最初の企業のひとつになることができた。

──営業チームの再編は行っている?

世界各地にいる我々の営業チームは、いまもクライアントに電話をかけ、彼らとの関係を維持する新たなやり方を模索している。先週(3月第3週)には100件の電話が営業チームに寄せられており、これからフォローしていく予定だ。見方によっては、きわめて多忙なマーケターがいつもより数分長く話をしてくれることは、これまでなかったともいえる。

──この不確実な時期にあなたがリーダとして優先していることは?

我々が在宅勤務を始めたのはほんの1週間ほど前(3月第3週)だが、過剰と思えるほどコミュニケーションを増やすというアプローチをとっている。結果として、最初の1週間は1対1のミーティングとグループミーティングが増えた。やりようによっては、バーチャル環境でも気を散らすことなく集中した会話ができるということだ。

2番目のポイントは、いまの時期とこれからの時期を乗り切るための全社的な取り組みについて話すことだ。これは、ブルームバーグLP(Bloomberg LP)のファウンダーでCEOのマイケル・ブルームバーグ氏が行っている。

3番目は、この変化に対応することの重要性、起業家精神を維持する方法、物事をほかとは違うやり方で行う方法について、たくさん話し合うことだ。また、我々の仕事、ワークフロー、人間関係、あるいは取引関係を、より現状に適した形に変えていく方法についても頻繁に話し合っている。

──コスト削減はどのように?

人々が旅行や娯楽にお金を使わなくなっているなかで、我々も全体的な支出について可能な限り注意を払おうとしている。ただし、大幅なコスト削減策は検討していない。どちらかといえば、いまの時期は我々にとってチャンスだと考えているからだ。我々は(ブルームバーグLPの一員として)強力で変化に強いビジネスモデルをもっていることから、さらに競争力を高めるためにどのような投資が可能なのかを探っている。実際に行ったことのひとつは、サブスクリプションマーケティングへの投資の一部を増やすことだった。

──最大の課題がコスト削減でないとしたら、何なのだろうか?

実際のところ、我々は6つのグローバルメディアプラットフォームの業務、そしてすべての製品とその制作業務を在宅勤務環境に移行している。3月第3週の木曜日に(週刊誌の)「ブルームバーグ・ビジネスウィーク(Bloomberg Businessweek)」部門をはじめて在宅環境に移行したことが大きな転機となった。95%の従業員が自宅で仕事をしている状況で、テレビ番組を24時間世界で放映しようとすれば、非常に複雑なロジスティックス上の問題に直面する。従業員を確実にケアしようとするなかで、短期的にはこれがもっとも大きな課題だった。その次に大きな課題は、すでに在宅勤務に移行した我々が、いつものようにイノベーションを生み出し、起業家精神を維持するにはどうすればいいかということだ。

──どのようにしているのだろうか。

起業家的な取り組みだけでなく、我々はいまの時期を利用して、きわめて重要ながら後回しにされていた、戦略性の非常に高いプロジェクトに集中的に取り組んでいる。たとえば、製品や製品ポートフォリオのブランドポジショニングを明確化したり、特定の事業の長期戦略を手がけたりといったことだ。従業員を特定の業務に集中させることができるため、この新たな状況のなかで、きわめてポジティブかつ生産的な形で仕事の方向性を変えることができる。

Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)