ポスト Coookie のカギを握る、 W3C 分科委員会の実態:「ウェブ広告事業改善グループ」の担当者に訊く

2017年に静かに形成された、ウェブ広告事業改善グループ(The Improving Web Advertising Business Group)は、オンライン広告をさらに効果的かつ安全にする方策について議論を行う業界横断のフォーラムだ。ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム(World Wide Web Consortium:W3C)の分科委員会として誕生した、この業界関係者のグループは、最近にわかに注目が集まっている。Googleが先月、サードパーティCookieをChromeブラウザから最終的に排除する計画を発表し、Googleが提出するサードパーティCookieの代替案についてのフィードバックは、このウェブ広告事業改善グループに依拠するとしたからだ。

このグループには、Google、Facebook、Apple、そしてIABテクノロジー研究所(IAB Technology Laboratory)からの参加者も含まれている。W3Cの戦略リーダーかつカウンセルであるウェンディ・セルツァー氏は、ウェブ広告事業改善グループの「サードパーティCookie終了後の展開について、ウェブエコシステム全体の関係者が意見を言えるようにすること」という新しいアジェンダについて、米DIGIDAYに語った。セルツァー氏はこのグループを、(ウェブ標準の技術開発を担当する)「ワーキンググループ」というよりも「インキュベーションフォーラム」と評している。

以下、インタビューは読みやすさのために若干の編集を加えている。

――パブリッシャーや広告主は、W3Cについて何を知っておくべきか?

W3Cは、有志による業界スタンダードの合意を得るための組織だ。ウェブエコシステムに属している人々が直面している課題、ウェブ技術を使って、進んでいきたい新しい方向性について話し、そして相互に活用できる解決策を探るためのフォーラムを提供するという点だ。

――ウェブ広告事業改善グループは、どのように創立されたのか?

広告は、多くのウェブコンテンツにとっての燃料であるにも関わらず、我々の望み通りに機能できていないことは、個々のエンドユーザー、パブリッシャー、広告主、ブラウザベンダーたちにとって、大きな懸念となっている。パフォーマンスに関する問題があると感じていたり、プライバシーの懸念を抱えていたり、トラッキングが気持ち悪いと感じていたりするからだ。

これらの問題があることで、誰も得をしていない。そこで、Webサービスにアクセスしたいユーザー、Webサービスやコンテンツを収益化したいパブリッシャー、そしてそれらをユーザーにリーチするためのプラットフォームにしたい広告主に役立つ、プライバシーを保護しながら三方よしとなるソリューションがあるのではないかと考えたのだ。

――W3Cのグループは、どうやって機能するのか?

W3Cには、さまざまな種類のグループが存在する。それらは、ワーキンググループといったほうが分かりやすいかもしれない。メンバーたちの承諾を得て、具体的な内容を開発するグループだからだ。

たとえば、ウェブ認証の形式について良いアイデアがあった場合、ウェブ上でのユーザー認証をブラウザのクライアントが管理できるアプリケーションプログラムインターフェイス(API)のための業務の設立許可をメンバーに提案する。人々はそのグループに参加して、ブラウザで実行される仕様を開発する。ウェブ認証は(APIベースの、パスワード不要なユーザーログイン・スタンダードのための)推奨仕様のひとつとなっており、その次のレベルにいま取り組んでいる。

ウェブ広告事業改善グループのような、ビジネスグループは仕様開発グループではない。ビジネスグループはインキュベーションのためのフォーラムだ。一般にW3Cのリソースを得ないコミュニティグループとは違って、ビジネスグループはW3Cチームからの支援を受ける。

――ウェブ広告事業改善グループにとって次のステップは何か?

GitHubのリポジトリはパブリックになっている。入ってきているアイデアを整理するためにたくさんの仕事をしているのを見ることができる。

仕様開発の価値がありそうな、役に立ちそうなアイデアを中心にしてグループが形成する段になれば、新しいワーキンググループを提案するか、既存のグループのなかで適切な主題と範囲を抱えているワーキンググループに参加することができる。

我々はウェブアプリケーション・セキュリティー・ワーキンググループ(Web Application Security Working Group)を持っており、そこでは複数のサイトをまたがる形でのセキュリティやAPIの境界についての問題について議論している。クッキー関連の議論のいくつかはそこで行われるかもしれない。

既存のグループの範囲に明確に含まれていないものがあれば、新しいグループを開始する提案が出されることもある。新しいグループに対してはW3Cが承認書を開発し、それをW3Cのメンバーで審査する。

――Googleが述べる2年という時間で新しいスタンダードは作ることができるのか?

承認される前に1カ月はかかる公式なメンバーによる承認書の審査が必要となる。もちろんその前に、メンバーとコミュニティからのインプットを受けて承認書を開発しようとする。そうしてコミュニティのニーズを満たすことを期待して物事を前へと進めている。

アイデアの段階から、ドラフト、仕様開発、そしてレコメンデーションまでを2年で終わらせることは可能だ。

――すべてのブラウザに対して、新しい広告スタンダードの全体的な導入を、どうやって勧めるのか?

導入を矯正することはできない。人々が同じことをしたくなる状況を探す必要がある。

さまざまなブラウザたちが、自分たちのプロダクトのエンドユーザーに異なる体験を提供したいと考える状況は出てくるだろう。いまも出ている。我々はブラウザが何色であるべきか、またその他多くのプロダクト差別化要素について指示をしたくはない。それは、彼らが求めているスタンダード化ではない。

インセンティブはスタンダードを使うように押し付けるのではなく、引き込むことにある。

――パブリッシャーや広告主は、どのようにしてさらに関与できるのか?

これらは意見を聞くことが重要な関係者だと認識している。次のインプットを求めるラウンドで使うための、より全体に対してシェアできる説明用の素材は、私がいま取り組んでいるもののひとつだ。これはまた、我々が検討していることを彼らは見ることができ、参加者が使用例やニュアンスなど加えたいことに関して意見を聞くためだ。

情報を複数のレベルで伝える必要があると、我々は認識している。技術的なインプットと同様にビジネス戦略のインプットも必要だ。

Lara O’Reilly(原文 / 訳:塚本 紺)