英・スカイニュース、Amazon の Twitch で配信を開始

スカイニュース(Sky News)が、Amazonのライブ配信プラットフォーム、Twitch(ツイッチ)の若いオーディエンスに狙いを定めている。

Twitchをゲーマーのためのプラットフォームと捉える人はいまだに多いだろう。そこにいる、テレビをあまり視聴しない、若い新規オーディエンスを獲得しようというのがスカイニュースの狙いだ。

スカイニュースのデジタル部門の番組担当編集者を務めるアラン・ストレンジ氏は、「当社はこれまでリーチできていなかった市場に常に目を光らせている。テレビでスカイニュースを視聴しない層だ」と語る。「Twitchはゲームのためのコミュニティだと思われがちだが、それは誤りだ。Twitchのオーディエンスはニュースや時事に非常に興味があり、しっかりとした意見を持っている」。

「ライブ配信を行う空間」

スカイニュースの初配信は、10月第1週に行われた。その内容は、英国保守党の与党大会で、ボリス・ジョンソン首相が来年に向けた政策計画を発表した様子だ。同社はTwitchへの展開をはじめたばかりで、現在同社のチャンネルはフォロワー数が127名、閲覧数は1万9000回に過ぎない。本記事の執筆時点では配信の同時視聴数について、同社は明かしていない。

配信時は3名のモデレーターがコメントを管理する。スカイニュースのコミュニティガイドラインに反するコメントを取り除くためコメントフィルターは厳しく設定されている。また、このコメントフィルターは、同社のTwitchチャンネルにも導入されている。ストレンジ氏によると、今回の首相のスピーチや民主主義に関する議論を視聴したオーディエンスからは、Twitchで配信されていなければスカイニュースを見なかっただろうという声も聞かれたという。同チームはいくつかのコメントにの希望に応えてアンケートを実施した。そして、コメント数を数えるのも手作業だ。ストレンジ氏はこの数についても明かしていない。

「ニュースのライブ配信を行う空間が欲しかった」と、同氏は語る。「重要な出来事があるときにライブ配信ができるようにしたい」。

Twitchに配信する意味

スカイニュースはTwitch上でYouTubeへのリンクを提供している。同社はYouTubeでさまざまな番組を配信している。代表例が、グレタ・トゥーンベリ氏の人気上昇を追った3分間の動画などを提供する「スカイ・ニュース・エクスプレインズ(Sky News Explains)」、スカイスポーツの専門家がブレクジットに関する質問に回答する「ブレクジスプレイナー(Brexisplainer)」、Snapchat Shows(スナップチャットショー)でも配信されているトーク番組「デバイデッド(Divided)」などだ。

スカイニュースは以前から、Twitchで若い動画オーディエンスを開拓できないかと、同プラットフォームに注目してきた。Twitchの発表によれば、同プラットフォームでは常時130万人以上が配信を視聴しているという。オーディエンスは若く、18歳から34歳が全体の55%を占める。さらに英DIGIDAYが入手した営業資料によれば、オーディエンスはいまだ8割以上が男性となっているものの、女性オーディエンスは増え続けているという。

パブリッシャーにとって、Twitchにはいくつものビジネスチャンスが広がっている。Twitchは基本的にユーザー生成コンテンツのプラットフォームだ。プロの作るコンテンツは比較的少ないものの、増え続けている。ワシントン・ポスト(The Washington Post)やBuzzFeed、チェダー(Cheddar)といったパブリッシャーは同プラットフォームでコンテンツ展開を進めており、Twitchの魅力であるインタラクティブなサービスを活かした宣伝を行っている。Twitchチームはパブリッシャーとの提携にも非常に積極的だ。たとえばBuzzFeedのチームは 毎週、配信前と配信中にTwitchと話し合いを行っているという。

マネタイズへの道のり

これまで各種プラットフォームでの収益化で大きな成功をおさめるパブリッシャーは決して多くなかった。だが、Twitchでは収益化への道のりは明瞭で、Twitchが配信中に広告を流して収益の一部を受け取るという仕組みとなっている。BuzzFeedもTwitchでサブスクと商品販売を行っている。

Twitchへの見方は少しずつ変わっているとはいえ、いまだにゲームコンテンツの場という認識が大半となっている。ゲームがメインストリームの文化へと移り変わっていくなかで、Twitchはフィットネスやクリエイティブ、音楽コンテンツへの展開も行っている。

パブリッシャーからすれば、先んじて進出するほど競合が少ない状態で展開できるというメリットがある一方で、障害も存在する。Twitchの発表によれば毎日50万人近くがライブ配信を行っている。そのなかでパブリッシャーのチャンネルを見つけてもらうのは容易ではない。Twitchではいまのところ、人気チャンネルの大半がゲームプレイヤーのチャンネルとなっている。そして人気のチャンネルほどオーディエンスの目につきやすい。逆にスカイニュースのような放送局のチャンネルはユーザーが自発的に探そうとしなければなかなか見つからない状態だ。チェダーによれば、Twitchのトップページに載れば「数千のオーディエンスが同時接続」するという

Twitchの中核をなしているのが、お気に入りのゲーム配信者に対するユーザーのマイクロペイメント、いわゆる「投げ銭」だ。メディアコム(Mediacom)のマネージングパートナーを務めるダン・ウッド氏は、ブランドやパブリッシャーはなんとしてもこれを収益に結びつけたいと考えていると指摘する。

「Twitchは大きく取り上げられるようになった。エンゲージメントは高く、ユーザーと商業ベースの関係を築きやすい」と、ウッド氏は語る。「特に新聞ブランドにとって、こういった関係性は喉から手が出るほど欲しいはずだ。Twitchの収益構造は自然と多様化している。必ずしも広告に依存していないため、ほかのプラットフォームのようにユーザーの利便性を損なう形の収益化にこだわる必要はない」。

「配信で警戒すべきこと」

スカイニュースは、初配信において収益化は行わなかった。同社は今後、Twitch上でイベントやニュース、より定期的な配信など、オーディエンスに戻ってきてもらうための実験を続けていくという。

「無料でプレミアムコンテンツを提供するような準備はできていない」と、ストレンジ氏は語る。「(プラットフォームで)警戒すべきことは、提供したものに対して見返りを得られない状態だ。誰もが当社が保有または運営するプラットフォームで視聴してくれるオーディエンスになるわけではないことは承知している。だからこそ、オーディエンスがいる場所に出向く必要があるのだ。Twitchはその好例といえるだろう」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:SI Japan)