PUBLISHING IN THE PLATFORM ERA

「我々は、人々が情熱を持つ分野の忠実なコミュニティだ」:フューチャーPLCのジラー・ビング・ソーンCEO

2020年は多くのパブリッシャーにとって苦しい戦いの年だった。しかし、ロンドンに拠点を置くフューチャーPLC(Future PLC)の2020年年次報告によると、同社の2020年の収益は前年比では65%増と大幅な成長を見せ、その額は合計3億4000万ポンド(約484億円)をわずかに下回る程度となった。

ゲームや映画、音楽、インテリアなど幅広い分野に特化したパブリッシャーであるフューチャーPLCは、出版コンテンツを信頼してくれるニッチかつ関心の高い読者を持つという利点がある。しかし、同社が保有するメディアタイトルは130以上におよび、マスメディア企業の規模と月間4億以上のユニークユーザーからなる総オーディエンスを持つ。同社CEOのジラー・ビング・ソーン氏によると、このスケールで得られるユーザーの行動、興味、買い物の習慣に関する広範なデータベースが、同社のこの1年間の成長に役立ったという。

「私たちは独自のテックスタックを持つことに、多くの資金とリソースを投資してきた。そのおかげで私たちのオーディエンスにリーチすること、社内でお互いに協力して仕事をすることがより容易になった」と、ビング・ソーン氏は述べた。また、この経営判断が最初に実行されたのは8年前だと付け加えた。

現在同社は、コンテンツ管理システム、アドテクノロジースタック、コマース・プラットフォーム、そして最近では、すべてのデータをまとめて合理化する自社オーディエンス・セグメント・データベースを含む4つの技術を所有している。

米DIGIDAYポッドキャストの最新エピソードでは、フューチャーPLCが昨年、コロナウイルスの世界的流行によって引き起こされたオンラインショッピングのブームのなかで、同社のeコマース事業だけでなく、広告事業も成長させるために、どのように自らを位置づけたかをビング・ソーン氏が論じている。

ここでは、この会話のハイライトをいくつか紹介する。以下は読みやすさのために若干の編集を加えている。

グローバル規模での強み

「特定の趣味に特化した我々の出版物やコンテンツのなかには、かなり小さく、かなりニッチなものもある。しかし同時に、PCゲームの分野では英語圏でナンバーワンのブランドを獲得している。そして、PCゲームのオーディエンスはとても大きい。『趣味というカテゴリーだからオーディエンス規模が小さいに違いない』という考えに陥ってはいけない。自分たちは、人々が情熱を持つ分野、そしてそのための忠実なコミュニティとして存在していると自覚している。我々のグローバルについての考え方もここから始まった。つまり、熱心なPCゲーマーならアメリカにいようとオーストラリアにいようと同じくらい熱心なはず。であれば、なぜ会社が位置している市場だけに範囲を限定するのか。この考え方は、我々が(ロンドン拠点でありながら)米国を第一に考える方向へ移行する原動力となっている。なぜなら、米国市場は私たちがリーチできる最大のオーディエンスだからだ」。

関心の高いオーディエンスはアクションを起こす可能性も高い

「私たちはまさに、人々がプロダクトの購買判断を下す時点での手助けをする位置付けにある。しかし私たちが重視してるのは、ユーザーの購買判断を助けるコンテンツ自体を広告にしてマネタイズするのではなく、その周辺に広告を出すことができるということだ。つまり、(eコマースを)ある意味で切り離しておきたいと考えている。エディトリアルの独自性を確実にしたいからだ。広告主がコンテンツの周りに広告を出していて、さらにコンテンツ内のリストで紹介されていれば、ブランドが強化される形となりクリックスルー率がはるかに良くなることがわかった。しかし、我々はクリックスルーをアプリに直接入れることはしない」。

鍵となる自社オーディエンスデータ

「サードパーティーのCookieは今後消えていくので、Cookieに基づいてオーディエンスを購入するのは広告主にとって、ずっと難しくなるだろう。したがって、(Cookie依存の)アドテクノロジースタックの最下部は、はるかに価値が低い。我々が実施しようとしているのは、購買履歴などに基づくファーストパーティデータを利用した詳細なオーディエンスを、スタックのトップ部分にプレミアム層として追加することだ。ただし、私たちのメディア群では人々の購買行動はブランドに基づいているため、オーディエンスのデータに依存しないダイレクト販売の要素も、まだまだ収益化できると思う。仮にオーディエンスやユーザーを特定できないとしても、ブランドの商品を購入するという行為は不変だからだ」。

[原文:How Future PLC’s audience-first strategy grew revenue in 2020

produced by PIERRE BIENAIMÉ, hosted by KAYLEIGH BARBER(翻訳:塚本 紺、編集:分島 翔平)