Googleへの依存度の低下を目指すメディアオーナーがまた現れた。DPGメディア(DPG Media)はいま、自社メディアのマネタイズをめぐる主導権を奪還しようとする、アクセルシュプリンガー(Axel Springer)やサロン(Salon)、ブルームバーグ(Bloomberg)らの輪に加わりつつある。
「Googleプラットフォームに自社ネットワークを築いていたが、そこに流れ込んでくる広告費をめぐる主導権が、我々の側にないことに不快感を抱いていた」と、DPGメディアの最高デジタル責任者であるステファン・ハビク氏は語り、「買っているのは誰なのか、いくらで買われたのかもわからなかった。だから、自社の広告スタックを変えることにした」と主張する。
この決断を実行に移すために、DPGメディアはこのほど、Googleアドマネージャー(Google Ad Manager:以下、GAM)の自社版を発表した。そのアプローチは、本家GAMのそれよりも合理化されている。
典型的なDSPではない
GAMと同じく、DPGメディアのアドマネージャーの機能はアドエクスチェンジと似てはいるが、そこには独自の仕掛けが施されている。どのインベントリー(在庫)が広告主に売られるのかを直接管理するのは、DPGメディアなのだ。何よりも優れているのは、広告主がすべてのインベントリーを、Googleなどの仲介業者に邪魔されることなく、直接購入できるようになったことだ。通常なら、広告主はDSPなどのアドテクベンダーを経由しなければならないが、ここではその必要はなくなった。
しかし、典型的なDSPだと勘違いしてはいけない。DPGメディアのアドマネージャーは、広範なブランドセーフティや不正行為に対する管理を優先していない。
ハビク氏は、こう強調する。
Googleへの依存度の低下を目指すメディアオーナーがまた現れた。ベルギーのメディア企業であるDPGメディア(DPG Media)はいま、自社メディアのマネタイズをめぐる主導権を奪還しようとする、アクセルシュプリンガー(Axel Springer)やサロン(Salon)、ブルームバーグ(Bloomberg)らの輪に加わりつつある。
「Googleプラットフォームに自社ネットワークを築いていたが、そこに流れ込んでくる広告費をめぐる主導権が、我々の側にないことに不快感を抱いていた」と、DPGメディアの最高デジタル責任者であるステファン・ハビク氏は語り、「買っているのは誰なのか、いくらで買われたのかもわからなかった。だから、自社の広告スタックを変えることにした」と主張する。
この決断を実行に移すために、DPGメディアはこのほど、Googleアドマネージャー(Google Ad Manager:以下、GAM)の自社版を発表した。そのアプローチは、本家GAMのそれよりも合理化されている。
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典型的なDSPではない
GAMと同じく、DPGメディアのアドマネージャーの機能はアドエクスチェンジと似てはいるが、そこには独自の仕掛けが施されている。どのインベントリが広告主に売られるのかを直接管理するのは、DPGメディアなのだ。何よりも優れているのは、広告主がすべてのインベントリーを、Googleなどの仲介業者に邪魔されることなく、直接購入できるようになったことだ。通常なら、広告主はDSPなどのアドテクベンダーを経由しなければならないが、ここではその必要はなくなった。
しかし、典型的なDSPだと勘違いしてはいけない。DPGメディアのアドマネージャーは、広範なブランドセーフティや不正行為に対する管理を優先していない。
ハビク氏によれば、こうした問題はパブリッシャーからインベントリーを直接購入する場合よりも、アドテク仲介業者から購入する場合のほうが多く見られるという。DPGメディアのアドマネージャーで購入すれば、「いま買おうとしているのはどのような枠なのか、その広告がどこに表示されるのかを、広告主は正確に把握できる」と同氏は強調する。
理論上、これはアドテク料金などのコストといったものよりも、広告表示により多くのお金が使われるということを意味する。たとえば、DPGメディアのインベントリーに2.50ユーロ(約390円)で入札したいと思っているマーケターがいたとする。もしその入札がアドテクを介して行われれば、マーケターはもっと高額の入札を強いられることになるだろう(たとえば3.50ユーロ)。そうしなければ、アドテク料金が差し引かれたあとに、DPGメディアが2.50ユーロ(約390円)を手にすることはできない。
「DPGメディアは料金をいっさい取らないからこそ、プラットフォームを自由化できた」と、ハビク氏は語る。「従来のサプライチェーンにコストを投じなくてもよくなれば、そのおかげで自由になったお金が広告主の手元に残る。あとは、広告主がそれをどうするか決めればいい」。
DPGメディアには代替IDにはないスケールがある
広告主が独自のDSPを使ってDPGメディアから広告枠を買うことも可能だ。ただし、カスタムフォーマットでの購入はできず、代替IDを用いた購入もできない。代わりに、広告主はDPGメディアのオーディエンスデータを用いてターゲティングを行うことになる。
ハビク氏は「IDの観点からいえば、我々のネットワークのそれはファーストパーティIDであり、安定している」と述べ、「我々のネットワーク(アドマネージャー)から購入する場合、オーディエンスのIDの期限は、DSPを使った場合の標準である1週間よりも、ずっと長くなる」と語る。
このスタンスは今後も変わらない見込みだ。ほかのパブリッシャーと同じく、DPGメディアも自社が管理できないサードパーティCookieに代わる選択肢をサポートしていない。その理由についてハビク氏は、「DPGメディアがこうしたユニバーサルIDソリューションをサポートしないのは、そこに持続可能性があるとは思えないからだ」と説明する。
こうしたスタンスを取る余裕があるパブリッシャーは多くない。このようなソリューションを取り入れるのを拒否すれば、その裏で投じられる広告費も拒否することになるからだ。DPGメディアがこれをできるのは、同社には代替IDにはないスケールがあるからと言えよう。また、ほかのベンダーのアドテクに比べると、DPGメディアのアドマネージャーが(少なくとも初期テストにおいて)うまく機能していることも、理由のひとつかもしれない。
長く険しい道のりの末に開発したもの
DPGメディアは1年ほど前から、IPG傘下のマターカインド(Matterkind)やオムニコム(Omnicom)、ルノー(Renaul)、デカトロン(Decathlon)、アクセンチュア(Accenture)、ドイツのメディアマークト(MediaMarkt)といった広告主やエージェンシーを対象に、クローズドベータテストを行なっている。同社によると、ほかの大手プラットフォームと比較した場合、DPGのアドマネージャーで購入した広告枠のコストのほうが、vCPMで39%、CPAで43%低いことが、これまでのテストからわかっているという。
「平均の3倍という、よい結果をキャンペーンで残せたことでアドマネージャー内のクライアントに適した価値を生み出し、その期待を上回れるようになった」と、オムニコムメディアグループ(OMD)のプログラマティックディレクターであるティム・ロウィンケル氏は語る。
Googleから離れ、ここに到達するまでの道のりは長く険しかった。2019年以降、DPGメディアはGoogleアナリティクス(Google Analytics)からスノープラウ(Snowplow)へと乗り換え、データ共有のためのプラットフォームを独自に立ち上げてきた。また、同社は広告枠の価格がリアルタイムオークションで決まるオープンマーケットで広告インベントリーを販売していたが、その量を削減するという決断も下してきた。
「マージンやCPMを高めることよりも、自分たちの広告事業をよりよいものにしてくれるプロダクトを作ることに力を注いできた」と、ハビク氏は語る。「こうした点は、私にとってはどうでもいいことだ。FacebookやYouTubeと比較しながら、ダイレクトレスポンスやブランディングの観点からDPGメディアのネットワークが他社と競合して、よい結果を出せるようにすること。私の頭にあるのは、そのことだけだ」。
鍵は機能の統合
今後これが、より多くの広告主を納得させるのに十分かどうかはまだわからない。現状からの逸脱を好む――そうしたイメージからかけ離れているのが広告主だ。だからこそ、そんな彼らがDPGメディアらパブリッシャーの取り組みに共鳴するには、いまが絶好の機会なのだ。業界がサードパーティアドレサビリティの抑圧に近づけば近づくほど、広告主がこうしたパブリッシャーの取り組みを無視するのは難しくなっていく。
メディアコンサルティング企業であるエラボレーション(Elaboration)の共同創業者であり、最高執行責任者を務めるサーシャ・オージンス氏は、「こうした動きが実を結びやすいのは、大規模な直接取引を行なっているパブリッシャーだ。どのようにしてDPGのプラットフォームがプログラマティックエコシステムとつながるのか? どんなセグメンテーション機能が組み込まれるのか? といった統合がそのカギを握ることになるだろう」と語る。
続けて、「GAMはフル装備のプロダクトだ。したがって、DPGのプラットフォームに具体的にどんな機能が組み込まれるのかが、ポイントになってくるだろう」とも話した。
Seb Joseph(翻訳:ガリレオ、編集:島田涼平)