ワシントン・ポスト(The Washington Post)の最高収益責任者(CRO)であるジョイ・ロビンズ氏は、広告エージェンシーにはもう少し同情が集まっても良いと考えている。「我々は彼らのビジネスをもっと良く理解するべきだ」と、米Digidayが採録したポッドキャストで、ロビンズ氏は語った。
Subscribe: iTunes | Spotify | Google Play | Stitcher | Anchor
ワシントン・ポスト(The Washington Post)の最高収益責任者(CRO)であるジョイ・ロビンズ氏は、広告エージェンシーにはもう少し同情が集まっても良いと考えている。
Advertisement
「我々は彼らのビジネス、そして彼らがどうやって収益を生み出しているかをもっと良く理解するべきだ」と、米Digidayが採録したポッドキャストで、ロビンズ氏は語った。「エージェンシーたちが代弁しているのは彼ら自身のビジネスモデルであり、彼ら独特の困難に直面している、という事実がますます見えてきている。RFP(提案依頼書)を調達してくれるだけの企業、として広告エージェンシーたちを見なすのを止めるにはどうすればいいのか、を考えないといけない」。
ソーシャルメディアプラットフォーム群がこれらの同じエージェンシーと協働するなかで行ってきた手法のうち、成功していると彼女が考えるものを借用すること。これが彼女の回答の一要素だ。10月以降、ワシントン・ポストの営業チームの一部は、「彼ら(エージェンシー)にとっての困難は何か、クライアントが彼らに課している仕事は何か、そして究極的には彼らのビジネスに価値を加えるためにパートナーとして、どのように一緒に取り組めるのか、と言ったことを理解するために、ホールディング企業や広告エージェンシーたちのシニアレベルのエグゼクティブと本格的な協働をすること」に注力している。
米Digidayポッドキャストでは、ロビンズ氏は彼女が頻繁にジェフ・ベゾスとミーティングをすること、RFPモデルがいかに壊れたモデルであるか、そして大統領弾劾に関するニュースの横に広告を表示することに物怖じするブランドたちがいることについて語った。
以下、この会話の要旨だ。読みやすさのために若干の編集を加えている。
RFPは壊れた仕組み
「クライアントが期待する内容がより洗練され複雑になって来るにつれて、コンテンツやデータ、インサイトに関するRFPを実現するには、実際に直接会って会話をすることが必要となっている。私がRFPに関してもっとも問題があると思うのは、24時間から48時間という提出期限で、ベストかつもっとも野心的なアイデアを、もっともアグレッシブかつ効率的な値段設定で提出することを求められる点だ。そのため実際、メディア企業で求められる以上の人的資本を投入している形になる。この規模では、400、500、600、800のRFPがもたらされるが、仕事の獲得率が上がらないのであれば、ただ負け戦に人的資本を投入しているだけになるのだろう」。
セールス前の段階に投資し過ぎるな
「多くのパブリッシャーはセールス前のプロセスにおいて、大きな、優秀なクリエイティブチームを作ることに資金を費やして、プロジェクトマネージメントチームにはケチる、ということをする。それは実感として現れてしまう。クライアントと話をして、プログラムを実行する体験を通じてPTSD(を患うようなトラウマの残る)体験をしたと言われることはしょっちゅうある。そして大きなプログラムを発表してから15カ月から18カ月後にウェブ上に現れるケースを見れば、それは察知できる。このような時間集約的な作業において、プログラムの成功にフォーカスしたチームが存在していなければ、最終的には大きな時間の無駄使いに感じられてしまう」。
広告収益VSサブスクリプション
「(サブスクリプションと広告収益の)『どちらか』の戦略ではいけない。『どちらも』の戦略でないといけない。例外的に成功したサブスクリプションビジネスを持っていることが我々の助けになっている理由は、大きいスケールで読者のロイヤルティを生み出すからだ。これはブランドにとって良いことだ。ブランドは理解したいと思っているし、エンゲージメントがあるオーディエンスを欲しいと思っている。ログインしたオーディエンスを抱えていることで自社データへのアクセスを得ることができる。これは2020年に入るにあたり、ますます重要になると誰しもが理解していることだ。このアクセスによって、読者の体験を確実に業界でベストなものにしようとする取り組みについての会話が増えることになる。これはもっともロイヤルな読者に払われる敬意をさらに高めるためだ。彼らに悲惨な広告体験を与えたくない。そして、私が考える次の質問は、『サブスクライバーのみにベストな体験を与えるのか、それとも将来的にサブスクライバーになり得る読者にもそれを与えるのか? そのバランスはどうやって取ればいいのか?』といった物だ」。
ブランドセーフティ
「究極的には、ブランドセーフティやキーワードを選択したブロックリストといった対策がもたらすのは、B2Bオーディエンスやニュース消費者である洗練されたオーディエンスにリーチしたいと考えている広告主をスポーツやエンターテイメントといった場所に放り込んでしまうことだ。そして、これらのカテゴリーは彼らが求めているものではない。そこで、ブランドセーフティにフォーカスするのではなく、会話はブランドスタビリティ(継続性)というアイデアにつなげていくべきだと、私は思う。実際には本当にブランドにとって安全な物ですら敬遠させてしまっては、どうやってブランドのメッセージに合致する環境にブランドを登場させることができるだろうか。政治報道と政策報道のあいだには違いがあるけれども、私はそれが混ぜこぜにされてしまいがちだと思う。政治であれば、自社ブランドとの関連を持って欲しくない方向性に会話を誘導するような、煽動的であったり、下品な報道からは離れておきたいと考えるだろう。しかし政策であれば、ブランドはそこに進んで存在したいと思う。特にこの時世では、ブランドたちは何らかの大義をサポートすることを強いられ、消費者たちはブランドが持つ価値観を理解したいと思っている」。
Pierre Bienaimé(原文 / 訳:塚本 紺)