ワシントン・ポストが2年前に立ち上げた、ワシントンDC関係者をターゲットにするニュースレターとポッドキャストのバーティカルメディア「パワーポスト(PowerPost)」。この3カ月間は拡充を図り、ニュースレターをそれまでの1種類から4種類に増やした。それにともない、スタッフや広告機能も拡充させているという。
ワシントン・ポスト(The Washington Post)は、ワシントンDCの有力者の受信トレイに届けるニュースレターをさらに増やそうとしている。
ワシントン・ポストが2年前に立ち上げた、ワシントンDCの関係者(政府職員、政府の契約業者、ロビイストなど)や政策決定者をターゲットにする、ニュースレターとポッドキャストに注力したバーティカルメディア「パワーポスト(PowerPost)」。この3カ月間は拡充を図り、ニュースレターをそれまでの1種類から4種類に増やした。追加されたニュースレター3つのテーマは、エネルギー、金融、医療。また、当初2人だったチームに新たに記者3人を加え、調査員も2人増やしたほか、ニュースレター内でカスタムのネイティブ広告を販売するアドテクも追加した。
「パワーポスト」の狙い
「ワシントンDCのニュースレターは、ほかに似たものがない特別な存在だ」と、パワーポストの編集者を務めるレイチェル・バン・ドンジェン氏は語る。同氏は以前、政治ニュースサイト「ポリティコ(Politico)」の編集者を長年務めてきた。「ワシントンDCの有力者らは、ニュースレターを利用して、その日に知っておく必要があることや、ニュースのサイクルを加速させそうな記事を把握する。こうしたニュースレターはしばしば、その日の報道を検討しているケーブルテレビの出演契約係や政治記者にとって、仕事調整役のようなはたらきをする」。
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ワシントン・ポストは前から、ワシントンDCのエリート層から注目される存在だ。それでも、全国的な認知度の向上とデジタル購読者層の拡大を図ることにあわせて、地元の有力者にとってのニュースおよび情報の供給源としてもさらに大きく成長しようとしている。「我々は、彼らがワシントン・ポストにより深くエンゲージできる手段を提供したい」とバン・ドンジェン氏。「それを実現するのにもっとも良いやり方だと思ったのがパワーポストだった」。
ワシントン・ポストは、パワーポストの購読者数を明らかにしていない。だが、その主要ニュースレター「デイリー202(The Daily 202)」は、ワシントン・ポストが発行する100のニュースレターの中でトップ5に入る規模だ。そのコンテンツはメールで配信されたあと、ワシントン・ポストのウェブサイトにも再掲載され、発行日にもっとも読まれた記事トップ5によく入っている、とバン・ドンジェン氏は指摘する。
ライバルたちとの違い
各ニュースレターにはそれぞれに主執筆者がいて、トップ記事を書いている。たとえば、デイリー202の執筆者は、バン・ドンジェン氏がポリティコから引き抜いたベテラン政治記者のジェームズ・ホフマン氏だ。パワーポストはほかにも、ワシントン・ポスト本体とニュースレターから集約された記事、ソーシャルメディアへの投稿、動画も扱う。こうしたコンテンツの収集に使われているのが、パブリッシングスイート「アーク(Arc)」の一部としてワシントン・ポストが開発したニュースレター専用コンテンツ管理システム「カータ(Carta)」だ。以前は「パロマ(Paloma)」という名称だった。
パワーポストのニュースレターは長文になる場合もあり、デイリー202なら3000ワードを超えることも珍しくない。これと対照的なのが、競合する米新興メディア「アクシオス(AXIOS)」の「トップ・テン(Top Ten)」やポリティコの「プレイブック(Playbook)」で、これらは短時間で読み終えることを想定したテキスト中心のニュースレターだ。バン・ドンジェン氏によると、パワーポストのニュースレターは総合性を意図しており、この長さが読者から支持されているとの調査結果もあるという。
ワシントンDCの関係者がパブリッシャーにとって魅力的である理由は、広告主からみて価値あるオーディエンスだからだ。パワーポストは最新のニュースレターで展開するキャンペーンを、米製薬大手のファイザー(Pfizer)、金融機関のUSバンク(U.S. Bank)、総合資源会社コーク・インダストリーズ(Koch Industries)といった優良広告主に売り込んだ。これらのキャンペーンには、ディスプレイ広告と、ニュースレター限定のカスタムコンテンツ「ブランドブリーフス(BrandBriefs)」が含まれる。
ユーザー体験にも注力
購読者を引き付けるため、ワシントン・ポストは、ターゲットオーディエンスが好むプラットフォームであるTwitterで、有料マーケティングキャンペーンを展開。また、米連邦議会でのニュースに基づくメールで、既存の購読者層もターゲットにしている。たとえば、トランプ政権によるオバマケア改廃が失敗に終わったとき、特定の購読者は「ヘルス202(Health 202 )」ニュースレターを受信した。カスタマイズされた登録者向けコンテンツは、サイト上のナビゲーションと閲覧履歴に基づいて、デジタル読者に定期的に再配信されている。
Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)