ワシントン・ポスト初の CMO 誕生、読者収益の拡大を画策

読者からの収益増をはかるワシントン・ポスト(Washington Post)が、そのための重要ポストを増設することとなった。

ワシントン・ポストは11月27日、同社初の最高マーケティング責任者(CMO)にミキ・キング氏を任命。これまで同社のマーケティング担当VPを務めていたキング氏が、今後は購読者の獲得と維持に加え、法人向け営業や、新たな全国的マーケティングの取り組みを統括する。この全国的マーケティングとは、ブランドマーケティングというよりも、主にパフォーマンスに重点を置いたものになる見込みだ。同氏は、27日遅くにこの人事を社員に向けて発表したワシントン・ポストの発行人兼CEO、フレッド・ライアン氏直下でこの職務にあたる。

読者収益に重点を

これまでニュースパブリッシャーは、広告主や読者の視点でブランド価値を上げることに注力していた。だが、このところ、読者からの収益獲得に重点を置いた、新たなチーフマーケティング職を設置するニュースパブリッシャーは増えている。キング氏の昇進によってワシントン・ポストも、そういったパブリッシャーの仲間入りを果たした。

「今回、私が統括するまでは、内部で分断されていた」と、キング氏は語る。「デジタルと紙のマーケティングはひとつのチームだったが、一体となって機能していなかった」。

キング氏は、2018年のほとんどを費やし、ワシントン・ポストのさまざまなマーケティング部門を再編してきた。同社のマーケティング部門は、複数の部署の、複数の予算内に散在していただけでなく、ビル内のフロアまでもまたがって存在していた。紙のマーケティングチームは、紙製品の損益予算の一部に盛り込まれていたが、同氏の指揮の下に行われていたデジタルマーケティングは、別の予算に入っている、といった具合である。各チームに何名が所属していたのかについて具体的な情報は公開されていない。

WPのCMOとしての役割

その間、ワシントン・ポストでは、消費者マーケティングにもリソースを費やしてきたという。キング氏は、こうした動きに関わる各種チームの総人数は過去1年間で30%増加したと語ったが、具体的な人数については回答を避けた。

また、多くの社員の再訓練にも力を入れてきたと、キング氏はいう。ローカルのマーケティングに関わってきた人員が、今度は紙製品とデジタル製品の両方にまたがる顧客体験に注力するといった動きもある。こうした再編成には、さまざまなチーム間での情報や知見の共有をしやすくするという意図もある。だが、それだけではなく、ワシントン・ポストとして統一されたメッセージを読者に伝えるための設計でもある、と同氏は語る。そのひとつに、いまは紙とデジタルの読者が同じ割引オファーを目にするような設計になっている、といったことが挙げられる。「目指したのは、消費者市場に表明する内容をひとつにまとめることだ」。

キング氏は、新たに広告まわりも担当することになる。現在ワシントン・ポストは、自社で運営している各種プラットフォームのほか、ソーシャルメディアにも出稿したり、検索エンジンマーケティング(SEM)を通じて広告を出したりしているが、今後は厳選した市場で、屋外(OOH)広告への投資を増やしていくという。ただし、どういった市場なのか具体的な部分については言及を避けた。

ニュースパブリッシャーのなかには、昨年のアカデミー賞シーズンに莫大な費用をかけて広告を展開したニューヨーク・タイムズ(The New York Times)のように、ブランドキャンペーンを派手に繰り広げているところもある。だが、キング氏によれば、ワシントン・ポストの取り組みは、ファネルの下部をより重視した、パフォーマンスを追うための広告になるという。

CMOを置くパブリッシャー

これまでパブリッシャーにおけるCMOの役割といえば、混在するコミュニケーションチャネルや、B2Bマーケティング的な部分に焦点を当て、自社の媒体が広告主や代理店から注目されるようにするというものだった。

しかし、ニュースパブリッシャー各社が読者からの収益増を真剣に追求するようになり、CMOの役割も変わってきている。なかには、はじめてCMOを置くニュースパブリッシャーも多い。ハースト・ニュースペーパーズ(Hearst Newspapers)は今年6月、コックス・メディア・グループ(Cox Media Group)からマーク・メディチ氏を迎え、同社初のCMOに任命した。ニューヨーク・タイムズは10月に、デイヴィッド・ルビン氏をCMOに起用している。

ほかにも、パブリッシャーの優先順位が変わったため、新しい人材がいままでとは違った職務に就くといったケースも見られる。ガネット(Gannett)がテレビ事業を分離させる前に同社のCMOを務めていたマリアム・バニキャリム氏は、統合型マーケティングの世界から来た人物で、マーケティングやセールスの経験があった。同氏の後継者で、現在ガネットのCMOを務めているアンディ・ヨスト氏は、バイアコム(Viacom)で顧客関係管理を担当していたバックグラウンドをガネットで活かしている。

「広告収入を中心とした収益モデルのパブリッシャーにとっては、ブランディングやビジネス界との関係が、ある程度重要になってくる」と、FTIコンサルティング(FTI Consulting)のメディアプラクティス担当マネージングディレクター、ピート・ドゥセット氏は語る。「購読者ベースの構築に注力するパブリッシャーに必要なのは、マーケティングとテクノロジー、オーディエンスを結びつけることができる人材だ」。

「ニーズに対応した好例」

こうした方向の転換は、広告のイノベーションをはじめとするあらゆる取り組みについて、それが購読者の増加にどれだけつながるかを考えなければならないワシントン・ポストでも顕著になっている。同社が継続して力を入れているポッドキャストなど、新しい媒体分野への進出には、購読者維持率の向上を狙うという意図もある。同社のある広報担当者は、デジタル版の購読者数が過去2年間で3倍以上に増えたと述べたが、正確な数字については公表を差し控えるとした。ちなみに2017年10月には、ワシントン・ポストは、デジタル版購読者数が100万人に達したと明らかにしている。

「これを市場がニーズに対応した好例と見るむきもあるだろう」と、前出のドゥセット氏は話す。「私はある意味、パブリッシャーがここまで来るのに、ずいぶん時間がかかったなと、意外に思っている」。

Max Willens (原文 / 訳:ガリレオ)