ワシントン・ポスト、広告主 と 購読者 の要求を取り持つ:ユーザーラボのバランス感覚

ワシントン・ポスト(The Washington Post)は、サブスクリプションの大推進の一環として、サブスクリプションを妨ぎかねないものにユーザーが出あわないようにしようと取り組んでいる。広告も例外ではない。

この戦いにおいて、ワシントン・ポストの重要な武器となるユーザーラボは、VPであるベス・ディアス氏によるオーディエンス開発分析チームに属している。長いあいだ、編集やプロダクトの特性に関するユーザーとのテストにもっぱら力を入れていた。それが拡大し、この半年は、ワシントン・ポストの広告側と共同で、広告のプロトタイプのテストや新しい広告フォーマットの構築を行っている。

ユーザーラボの狙い

ユーザーラボは、ワシントン・ポストが3年前に新しい本社に移った際に特別に作られた空間であり、閲覧室とマジックミラーを備えている。4人いるスタッフは、以前に使っていたような広告に関する一般的なユーザーフィードバックだけではなく、毎月、ワシントン・ポストの実際のヘビーユーザーとのフォーカスグループを実施している。ラボが求めるのは3点。広告はユーザーが期待するように機能しているか、その場合、広告はユーザーに有益か、そして全般的なフィードバックだ。

ユーザーラボではこれまでに、ブランデッドコンテンツの開示についてテストを実施した(「presented by」や「brought to you by」ではなくワシントン・ポストが実際使っているように「from」で広告主を開示するのが妥当であることが検証された)。また、新しい広告フォーマットは4つ開発した。まず、リターゲティング広告よりも文脈的に適切な記事を配信するほうが好まれることがわかり、読者にあったワシントン・ポストの記事を広告ユニットに束ねた「ショーケース」(Showcase)を開発した。2つ目は、至る所にある迷惑なプレロール広告に対するワシントン・ポストの回答である、スキップできる新しい動画広告「スイッチプレイ」(SwitchPlay)。広告を6秒視聴したら本編動画に切り替えることができ、残りの動画広告はユーザーが記事ページを下がっていくのをやめたところで再開される。

「新しいプレロールとは何なのか多くの主張があるなか、これが我々が出した答えだった」と語ったのは、5月に広告プロダクトの責任者になったジェフリー・ターナー氏だ。「それまで行われたことがないものについては、テストをしたり、似たものを見せたりする。イノベーションをテストする必要性と、サブスクリプション契約者を喜ばせる必要性のバランスを取る方法だ。私は広告が好きだが、私はとんでもなく偏っている」と、同氏は語る。

競合他社のトライアル

パブリッシャーは長年、広告収益を最大化しようとサイトをひどい広告でいっぱいにしていたが、やがて読者が反抗し、アドブロッカーをインストールするようになった。ワシントン・ポスト以外のパブリッシャーも、ユーザーにもっとお金を払ってもらおうと、ユーザー体験の向上という名のものとでワシントン・ポストと似た対策を進めている。

ミレニアル世代向けニュースサイトのマイク(Mic)は、広告のユーザーテストを実施している。発行者のコーリー・ハイク氏によると、最近、広告が記事の終わりだと誤って捉えられて離脱の原因になっていることがテストでわかり、広告の位置を動かしたという。

しかし、広告側とオーディエンス側とでは動機付けが異なる。一部のパブリッシャーは、この緊迫関係に対処するため、営業と編集のあいだという位置づけであるプロダクトの責任者に広告フォーマットの最終判断をさせている。

ニューヨークタイムズ(The New York Times:以下、NYT)では、広告に関する問題はもっぱら新しいプロダクトのデザイン中に持ち上がり、広告をどこにどのように表示するのかは、広告側とプロダクト側が一緒に決めるのだと、NYTの広告イノベーション担当VPのアリソン・マーフィー氏は語った。もし決まらなければ、広告収益と消費者の両方を監督するCOOのメレディス・レビアン氏に判断が委ねられる。

残された課題のひとつ

それでも、広告は本末転倒になることが多い。醜いコンテンツおすすめウィジェットがサイト中に広がっているし、財務報告の期末には収益目標を達成しようと広告を調整して増やすところがあることも知られている。ワシントン・ポストにもまだ、アニメーション入りで一時的に記事の一部にかぶる広告があるし、たとえば一部のレコメンドユニットサービスには、押しつけがましく質が低いと考える人が多いフォーマットもある。

なお、ワシントン・ポストの広報担当者は、広告がコンテンツを覆うはずはないと説明した。また、ユーザーラボの仕事はプロダクトの廃止よりも改善なのだという。たとえば、広告ユニットがあまりに雑然としているというフィードバックに基づき広告ユニットのデザインをやり直したり、スイッチプレイの非プレロール版やインフォマー[Informer]という開示が不透明でスクロール機能がひどかった広告ユニットなど、いくつかのプロトタイプを終了させたりした。

課題のひとつは、(当たり前のことだが)広告表示による収益への影響は、サブスクリプション収益に対してよりも、広告収益に対しての方が把握しやすいことだ。たとえば、NYTは、特大広告を見た人のサイトへの再帰が減るのかテストを進めているが、特大広告がサブスクリプションの解除につながっているかどうかはわかっていない。

ワシントン・ポストで最高情報責任者のシャイレッシュ・プラカシュ氏の指揮下にあるディアス氏は、自分には広告の拒否権はないとしながらも、ユーザーラボは真剣に受け止められていると語った。「会社が具体的な構想やプロダクトに対する我々の勧告に従わなかった例は思いつかない」。

ベゾス氏が信じていること

ジェフ・ベゾス氏がオーナーになり、ワシントン・ポストは読者にフォーカスするとともに、データ主導、技術主導がさらに進んだ。ページの読込時間を85%カットし、読み込みが速い広告を導入した。

「私はこうしたことを全体的に見ている」と、ディアス氏は語る。「サブスクリプションはいま、ビジネスの非常に重要な要素だ。デジタル広告も同様だ。文字通り、ジェフ・ベゾス氏にまで上がる話だ。Amazonは極めて顧客中心の会社となっている。顧客を喜ばせればうまくいくと、ジェフは信じている」。

Lucia Moses (原文 / 訳:ガリレオ)