ショートフォームのネット動画シリーズをめぐる市場が活況を呈している。多くのプラットフォームが、モバイルで長時間を過ごす若い視聴者を獲得しようと、娯楽コンテンツを求めているのだ。世界でもっとも多産なテレビ番組制作会社のひとつであるワーナー・ブラザース(Warner Bros.)も、そこに一枚噛もうとしている。
ショートフォームのネット動画シリーズをめぐる市場が活況を呈している。まずます多くの動画ストリーミングプラットフォームやソーシャルプラットフォームが、モバイルデバイス上で長時間を過ごす若い視聴者を獲得しようと、娯楽コンテンツを求めているのだ。そしていま、世界でもっとも多産なテレビ番組制作会社のひとつであるワーナー・ブラザース(Warner Bros.)も、そこに一枚噛もうとしている。
若いオーディエンスを意識
ワーナー・ブラザースは2年前、新興プラットフォーム向けショートフォーム番組の制作に注力するデジタルスタジオ「ステージ13(Stage 13)」を設立した。2017年6月、ステージ13初のドラマシリーズ『スナッチャーズ(Snatchers)』が、米通信大手ベライゾンのストリーミングプラットフォーム「ゴー90(Go90)」で配信開始された。全8話の『スナッチャーズ』は、初体験でエイリアンの赤ちゃんを身ごもってしまった「ステータスを異常なほど気にする」女子高生を主人公とするホラーコメディーだ。
「多文化の若いオーディエンスを特に意識している点を除けば、我々はみな同じビジネスをしている。目標は、いつでもどこでもオーディエンスにリーチすることだ」と、ステージ13でシニアバイスプレジデント(SVP)とゼネラルマネージャー(GM)を兼任するダイアナ・モゴロン氏は語る。「我々がチャンスを見出したのはショートフォームコンテンツ。つまり、それぞれのエピソードの長さが5分から15分で、10分と12分のあいだに最適点がある動画だ」。
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これは、ワーナー・ブラザースのトレードマークとは大きくかけ離れている。ワーナー・ブラザース・テレビジョン(WBTV)は来たる2017~18年のテレビシーズンに向けて、『ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則(The Big Bang Theory)』(CBS)や『ウエストワールド(Westworld)』(HBO)など、実にさまざまなプライムタイム番組を35本以上制作する予定だが、すべての番組で各話の尺は1時間か30分に設定されている。
映像制作のチャンスと強み
だが、テレビ番組が供給過多なこの時代においてでさえ、ベライゾンの「ゴー90」やコムキャスト(Comcast)の「ウォッチャブル(Watchable)」、Facebook、Snapchatなど、ショートフォームの動画シリーズを求めるデジタル業界からの新規参入組に番組を売るチャンスはある。BuzzFeedやマッシャブル(Mashable)、ブリーチャー・リポート(Bleacher Report)などのトップを走るデジタルパブリッシャーたちは、独自のスタジオビジネスを構築することでこの需要を満たしている。
ステージ13はこれまでに、「スクリプテッド(台本あり)」と「アンスクリプテッド(台本なし)」の番組を合わせて11本完成させており『スナッチャーズ』もそのひとつだ。モゴロン氏によると、ほかの番組についても、現在さまざまなディストリビューターと協議中だという。「いまは誰もが優れたコンテンツを求めている時代だ。FacebookやSnapchat、インスタグラムを見ればわかる。彼らはいままさに、動画をショーケース化するための機会を生み出している」と、モゴロン氏は語る。
ステージ13を傘下に収めるワーナー・ブラザース・デジタル・ネットワーク・グループ(Warner Bros. Digital Networks Group:以下、WBDNG)はほかにも、アニメを専門とするサブスクリプションストリーミングサービス「ブーメラン(Boomerang)」、韓国ドラマのサブスクリプションサービス「ドラマフィーバー(DramaFever)」、ゲーム専門のYouTubeネットワーク/スタジオ「マシニマ(Machinima)」、人気バスケットボール選手レブロン・ジェームズの「アンインターラプテッド(Uninterrupted)」、コメディアンのエレン・デジェネレスの「エレン・デジタル・ベンチャーズ(Ellen Digital Ventures)」などを展開している。モゴロン氏とステージ13は、こうしたWBDNG傘下の各子会社と密接に連携でき、この点がほかの制作スタジオに対する強みになっているという。
「スタートアップ」という認識
大手メディア企業が所有するデジタル部門と同様に、ステージ13は「スタートアップ」と呼ばれている。ロサンゼルスにあるステージ13の本社も、ワーナー・ブラザースの敷地内にはない。同スタジオが抱えるスタッフ十数人の出身業界はさまざまで、インディー映画、ケーブルテレビ、音楽、デジタルエンターテインメントといった具合だ。
「(ワーナー・ブラザースCEOの)ケビン・ツジハラと(WBDNGプレジデントの)クレイグはこんな風に言ってくれた。『ステージ13はスタートアップだ。だから敷地から出て行け。必要な資金やリソースは提供するが、足かせになるお役所仕事はなしにしよう』」と、モゴロン氏は語った。
Sahil Patel (原文 / 訳:ガリレオ)
Image via Stage 13