「SBネーション(SB Nation)」「ザ・バージ(The Verge)」「イーター(Eater)」といったデジタルメディアブランドを抱えるWebメディア企業Vox Media。同社は、Webサイトが出版業界の根底を覆す脅威と認識されはじめた時代に生まれた。
いまの時代、BuzzFeedやVox自身を含めたパブリッシャーのコンテンツは、ソーシャルプラットフォーム上で自社サイトよりはるかに多くのユーザーに閲覧されている。こういった状況はVox Mediaのように数多くのサイトを運営する、独占的なテクニカルプラットフォームを誇ってきた企業にとって壁となってきた。
「SBネーション(SB Nation)」「ザ・バージ(The Verge)」「イーター(Eater)」といったデジタルメディアブランドを抱えるWebメディア企業Vox Media。同社は、Webサイトが出版業界の根底を覆す脅威と認識されはじめた時代に生まれた。
いまの時代、BuzzFeedやVox自身を含めたパブリッシャーのコンテンツは、ソーシャルプラットフォーム上で自社サイトよりはるかに多くのユーザーに閲覧されている。こういった状況はVox Mediaのように数多くのサイトを運営する、独占的なテクニカルプラットフォームを誇ってきた企業にとって壁となってきた。
「Webサイトが秩序を乱す存在だったのが、あっという間に古き良きものとして語られるようになってしまった」。Vox Mediaのプレジデントであるマーティ・ムー氏は、米DIGIDAYのポッドキャスト6月24日号で語る。
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「Voxは文化的に、また組織的にも、変革そして成功へとつながる最善の道を探ることをベースにやってきたのだ。当時は数々の大きなWebサイトを効率的に運営できていた。現在の大きな課題は、このマルチプラットフォーム時代を生き抜く最善の方法は何か、ということだ」。
今週号の要約は以下の通り。
プラットフォームに対する最大の課題は体系化
パブリッシャーがFacebookやSnapchat(スナップチャット)などのプラットフォームに適合するには、ビジネス戦略や技術的なハードルなど、多くの課題がある。しかし、Voxのように多くのブランドを抱えるパブリッシャーにとって大きな課題は、社内体系を確立することだ。これは通常、各ブランドがもち寄るターゲットオーディエンスを維持しつつ、何を中央集権とすれば、より効率性が上がるかを判断することだ。
たとえば、Voxでは中央で管理される製作や技術は多少はあるものの、各ブランドは皆独自に動画を手掛けている。しかし、テレビ番組としても使えるような長編動画については、Voxエンタテインメント(Vox Entertainment)という中央管理部門で制作されるのだ。5人のスタッフがSnapchatスタジオで「ディスカバー」チャンネルを製作し、Voxがもつメディアすべてに向けた動画が配信される。カギとなるのは、それに適合するカルチャーをもつことだとムー氏は語った。
「中央管理能力と配信能力は性質のまったく異なるものではない。これはずっと解き続けていかなければならないパズルなのだ」。
Voxにとってはテレビも一種のプラットフォーム
Voxは現在、コンテンツに焦点を絞ることに注力し、それをテレビ向けにすべく改良を試みている。この原動力のひとつが「バナー広告なくしては誰も富を得られない」という概念が固定化されているビジネスモデルを打開することであることは間違いない。
しかし、ムー氏によると、単純にテックプラットフォームの進歩によって、オーバーザトップ(OTT)型配信が可能になったことが大きいという。Voxはケーブルテレビを運営するA&EのFYIテレビと協力して、テレビ用コンテンツ製作に参入。「プレファビュラス(Prefabulous)」はプレハブ住宅専門チャンネルで、Voxの不動産専用チャンネル「カーブド(Curbed)」が製作している。
「より広い視点で見れば、我々にとってテレビもまたひとつのプラットフォームなのだ。我々は自社をWebサイト運営会社だとは思っていない。ブランド会社だ。そして我々は適切なプラットフォームに、それに合う方法で我々のブランドを載せていくための専門技術を磨いている企業である」。
国際化は重視せず
BuzzFeed、ビジネスインサイダー(Business Insider)、ハフィントンポスト(Huffington Post)」といった同業の大手メディアとは異なり、閲覧者の35%以上はアメリカ国外からのアクセスであるにもかかわらず、Voxはいまだ国内市場に注力している。他国において自社ブラントのライセンス供与に向けた動きやローカライズ版のオープン化などは行っていない。たいていの場合はこういったことは重点的に取り組むことのひとつだ。現時点ではアメリカ市場に好機がたくさんあり、他社同様の海外進出はできないとムー氏は語る。
「動画やプラットフォーム関連でアメリカ市場に投資された金額は国際的に投資されたものよりも大幅に大きい。問題は、新しいWebサイトが大きなシェアを得るだけの余地がどれほどあるか、ということ。そして大きなシェアを得られたとしても細分化されたローカル言語の市場にどれだけの利益が見込めるのか? サイトが今後の消費者拡大の中心となるかは不透明で、いまの時点ではそのような投資は、リスキーだ。ピークに達してしまったかもしれない形態を利用して、国際的な投資を行うことはできない」。
Brian Morrissey (原本 / 訳:Conyac)