2016年4月28日(米国時間)、女性向けファション誌『ヴォーグ(VOGUE)』のコンテンツ閲覧用モバイルアプリ「Vogue」がついに登場した。このiPhoneアプリは、サイトと雑誌のコンテンツをブレンドして、アルゴリズムを用い、閲覧パターンに応じてユーザーの好みに合わせたニュース8本をまとめて毎日配信する。
このアプリのインターフェイスは「Snapchat」のメディアコンテンツセクション「ディスカバー(Discover)」を彷彿とさせるもので、ユーザーは左右にスワイプしてヘッドラインに目を通し、全文が読みたい場合にはその記事を上にスワイプする。
「Vogue.com」のクリエイティブディレクター、サリー・シンガー氏は、「このフィードには『ディスカバー』のスピード感が備わっているが、そのリズムは異なっている。私にとって、このフィードは1日のダイジェストだ。簡単に読めるようにデザインされている。すべてがスピーディーかつシンプルでなければならないわけではない」と語る。
2016年4月下旬、女性向けファション誌『ヴォーグ(VOGUE)』のコンテンツ閲覧用モバイルアプリ「Vogue」がついに登場した。
4月28日(米国時間)にリリースされたこのiPhoneアプリは、サイトと雑誌のコンテンツをブレンドして、そこに「Snapchat(スナップチャット)」風の機能性をいくらか加えたものだ。このアプリはアルゴリズムを用い、閲覧パターンに応じてユーザーの好みに合わせたニュース8本をフィードにまとめて毎日配信する。このフィードのインターフェイスは「Snapchat」のメディアコンテンツセクション「ディスカバー(Discover)」を彷彿とさせるもので、ユーザーは左右にスワイプしてヘッドラインに目を通し、全文が読みたい場合にはその記事を上にスワイプする。
Snapchatを参考に設計
「Vogue.com」のクリエイティブディレクター、サリー・シンガー氏は、「このフィードには『ディスカバー』のスピード感が備わっているが、そのリズムは異なっている。私にとって、このフィードは1日のダイジェストだ。簡単に読めるようにデザインされている。すべてがスピーディーかつシンプルでなければならないわけではない」と語る。
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「Vogue」アプリは4月28日からダウンロード可能になっている。このタイミングは偶然ではない。5月2日に開催された今年のモードの祭典「METガラ(Met Gala)」のテーマは「マヌス(手)×マキナ(機械)」──つまり、テクノロジーへの礼賛だ。このイベントのスポンサーはAppleで、予定では、当日スターたちが会場に到着すると、写真やインタビュークリップがリアルタイムで「Vogue」アプリに送信されることになっていた。
「Appleが『METガラ』のスポンサーになってくれたことは我々にとって僥倖だった。厳しい締め切りに追われることにもなったが」と、シンガー氏は語った。
「市場のトレンドに乗り遅れている」
『ヴォーグ』はデジタル先駆者として知られる存在ではない。同誌は2010年までWebサイトさえ運営していなかった。これまでに同誌は、iPad対応のタブレット版と、ファッションショーの写真をフィーチャーするモバイルアプリ「Vogue Runway」を発表していた。今回のフラグシップアプリに対しては、5人の内部チームが9カ月以上におよぶブレインストーミングを行い、ソフトウェア開発エージェンシーのオーブンビッツ(Oven Bits)と共同で3カ月かけて、その機能を開発した。
「彼らは市場のトレンドに乗り遅れている」と、マーケットリサーチ企業eマケーター(eMarketer)のモバイルアナリスト、キャシー・ボイル氏は指摘する。たしかにライバル誌の『ハーパーズバザー(Harper’s BAZAAR)』と『エル(ELLE)』は、とっくの昔にApp Store内にスペースを確保している。「App Storeの混雑ぶりをよそに傍観者を決め込んで研究し、準備が整ったと確信が持てるまで待つのは、いかにも『ヴォーグ』らしい」
『ヴォーグ』はメディアの例外的存在だ。同誌の印刷版は出版業界の羨望の的になっている。ファッション業界誌『ウィミンズ・ウェア・デイリー(Women’s Wear Daily[WWD])』の分析によると、『ヴォーグ』3月号には405ページにおよぶ広告が掲載されたという。こうした印刷版部門の活況のせいで、わずかばかりのはした金を集めるデジタル版部門の優先順位は低い。ネット調査会社コムスコア(ComScore)がまとめた数字によると、2016年2月の「Vogue.com」のトラフィックは530万ユーザーだったのに対し、「Elle.com」が740万、「HarpersBazaar.com」が630万だったという。
『Vogue』アプリがめざす場所
「Vogue」アプリの発端には、モバイル読者はタイトルを意識せずにTwitterやFacebookのリンクをクリックして、偶然に「Vogue.com」のコンテンツを見つけるケースが時折見受けられるという同誌の認識があったとシンガー氏は語る。
シンガー氏は次のように述べている。「読者は無作為に『Vogue.com』を訪問しており、自分がそこに向かっていることさえ知らない場合もあるかもしれない。このアプリでは、雑音を遮断して、日常的に目的意識をもって見るべきコンテンツを読者に届けなければなければ、と思っている。それが違いだ」。
このアプリのために、『ヴォーグ』の開発チームは、ビジュアル面にも手を加えた。「Vogue」アプリでは、すべての動画と写真はバーティカル(タテ型表示)になっており(このユーザー傾向を強めたのも「Snapchat」だ)、フォトシュート(写真撮影)には、スチール写真に代わって動画クリップが用いられることが多くなっている。
印刷版と同じく、広告主(初日のラインナップはプラダ[Prada]や米大型チェーンデパートのノードストローム[Nordstrom]など)は、広告が表示されるページにおいて、100%のシェア・オブ・ボイス(SOV)を獲得する。
「我々には、自分たちがその価値を信じる特別なものをつくる力と熱意がある」と、シンガー氏は語る。「『Vogue』アプリがめざす場所は、印刷版とは必ずしも似ていないかもしれないが、その芯にあるのは同じ精神と言葉だ」。
Hilary Milnes (原文 / 訳:ガリレオ)