ヴォーグ、 コミュニティ型の インスタグラム 戦略をテスト:「それこそインスタグラムの原点」

パブリッシャーのなかにはインスタグラム(Instagram)に自社雑誌のコンテンツを載せるところも多いが、ヴォーグ(Vogue)はインスタグラムを活用してクリエイターにスポットライトを当てている。

同誌のインスタグラムにおける新アカウント、@vogueは、ファッションや美容、写真、イラスト、アート分野から選ばれた8人のクリエイターによって3月20日に立ち上げられた(このアカウントはアメリカのヴォーグのアカウントである@voguemagazineとは異なる)。各クリエイターがストーリーを1週間かけて投稿する。投稿は日に6回、写真や動画も含んだコンテンツとなっている。

たとえばニューヨークとベルリンを拠点とするモデルでありアーティストのリッチー・シャザム氏は、インクルージョン(Inclusion)や多様性、自信の重要性に焦点を当てている。ミラノ出身の21歳のファッションイラストレーターのマリア・サポリート氏は寿司をはじめ、あらゆるものからいかにファッションを見出しているかを題材としている。オランダを拠点とするデザイナーであり織物研究家でもあるニーク・ホーグリート氏は、海藻を用いた自身の作品を通じて研究を視覚的に伝えている。@vogueのアカウントは、まだできたばかりでフォロワーも450人程度だ。アメリカとフランスのヴォーグのアカウントにはそれぞれ1800万人と400万人のフォロワーがいる。

コミュニティが主体の戦略

ヴォーグインターナショナルでソーシャル戦略およびストーリーテリング部長を務めるハンナ・レイ氏は、「このアカウントの目的は、コミュニティ型のストーリーテリングがどれくらいうまくいくかを観察すること」であり、ほかのヴォーグのインスタグラムアカウントとはコンテンツ戦略が異なると語る。「このアカウントでは、コミュニティがもっとも重要だ。当社の主張の代わりにコミュニティを前面に押し出し、彼ら自身の声でストーリーを語らせるためのプラットフォームを与えている。これはパブリッシャーのプラットフォーム上でコンテンツ配信手法の性質に反している。一般的にソーシャルメディアはコンテンツを広めるものだと認識されているからだ。そうではなく、このアカウントではあるがままのアプローチで取り組んでいる」。

このアカウント自体は実験的なものだが、レイ氏は新しいコンテンツを公開する日時やそのときの形式などに制限を設けないように注意しているという。同氏は「あまり堅苦しくない、エピソード形式のストーリーテリングを試したいと考えている」と語る。

このアカウントは18カ月かけて作り上げられた。コンデナスト・インターナショナル(Conde Nast International)が行っている、ヴォーグのインスタグラムの全アカウントの全面的な見直しの一環だ。昨年にかけて、ヴォーグは各国のインスタグラムアカウントで、「ヴォーグ・プラスワン(Vogue Plus One)」「ヴォーグ・ファーストルック(Vogue First Look)」「ヴォーグ・バックステージ(Vogue Backstage)」の3つのストーリーのシリーズを共有した。各国のアカウントでは、その国ごとに独自のクリップや味付けを追加している。

「ヴォーグ・バックステージですら、ヴォーグの編集者たちがストーリーを語るという昔ながらのストーリーテリングだった。インスタグラムはいつだってコミュニティのためのプラットフォームだった。それこそがインスタグラムの原点なのだ」と、レイ氏は語る。同氏はインスタグラムで3年間の勤務経験があり、「ブランド各社にとって、どうすればその輪のなかに入れるのかを理解するのは、なかなか難しいのかもしれない」と分析する。

世界中の編集者が協力

2016年にコンデナスト・インターナショナルは、本部を中心として編集を進めていくことを決め、ロンドン支局をヴォーグ以外の21の国際的な雑誌も含めたグローバルハブに指定した。それ以来、世界中のヴォーグの全チームが世間に向けて手を組んだはじめての機会が、この@vogueのアカウントだ。アメリカのヴォーグも、規模こそ小さいものの、この新しいインスタグラムにコンテンツを供給していくという。

「世界中のヴォーグ編集者から集まる知識は、とてつもない量になる。このアカウントが豊かなコンテンツを提供できるのも、そうした編集者のもつ専門性のおかげだ」と、レイ氏は語る。ヴォーグのアカウントに投稿するコンテンツは、ヴォーグの世界中の編集者がクリエイターにインタビューを行って決定し、そしてストーリー自体はクリエイターの言葉で語られる。ヴォーグはこれを「レジデンシー(residency)」と読んでいる。

バッスル(Bustle)やGQをはじめとするパブリッシャーは、インスタグラムのストーリーでエピソード形式のコンテンツをブランドに販売している。これはテレビネットワークと似たモデルだ。いまのところ、ヴォーグはこのアカウントで収益化を目指す計画はないという。このアカウントはインスタグラム用につくられた編集プロジェクトだ。ヴォーグのほかのアカウントは、このような実験的なことをするにはフォロワー数が多すぎる。

「これまでもヴォーグは新進気鋭の才能にスポットライトを当ててきた。つまるところ、このアカウントはそれに特化している」と、レイ氏は語り、次のように述べた。「ここ何年かで、ストーリーを共有できるプラットフォームが大きな人気を博している。そして、それは本物であればあるほど、望ましいのだから」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:SI Japan)
Image courtesy of Vogue