[ DIGIDAY+ 限定記事 ]デジタルメディア業界で、合併が話題に上らなくなることはないだろう。高い収益性と持続性を追い求める大手デジタルパブリッシャーにとっては、常に検討すべきオプションだからだ。だが、ここでもう一度強調しておこう。状況が急変しない限り、大きなニュースになるような合併が近いうちに起こることはなさそうだ。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]デジタルメディア業界で、合併が話題に上らなくなることはないだろう。高い収益性と持続性を追い求める大手デジタルパブリッシャーにとっては、常に検討すべきオプションだからだ。筆者のようなメディア記者にとっては、欠かすことのできない格好のネタでもある。だが、ここでもう一度強調しておこう。状況が急変しない限り、大きなニュースになるような合併が近いうちに起こることはなさそうだ。
主なポイント:
- BuzzFeedが従業員の15%を解雇すると決めたのをきっかけに、大手デジタルパブリッシャー同士の合併話が再び取り沙汰されることになった。
- BuzzFeedのCEOを務めるジョナ・ペレッティ氏とグループ・ナイン・メディア(Group Nine Media)のCEOを務めるベン・レラー氏が、合併について話し合った。
- 情報筋によれば、ペレッティ氏とレーラー氏が会合を持ったのは事実だが、彼らが話し合いをするのはよくあることだ。近いうちに合併話が浮上することはない。
- メディア同士の合併は、アイデアとしては魅力的だが、実行に移すのは難しい。たとえば、投資家にとっては、投資の評価額を大きく下げることになるため、積極的に進められる話ではない。
- 合併はデジタルパブリッシャーに可能性をもたらすものだが、追い詰められて行うような合併は理想的ではない。
難易度の高い合併
BuzzFeedは最近、15%の人員を削減して200人以上を解雇するという内容のレイオフを発表した。そのため、同社がほかのデジタルパブリッシャーと何らかの提携を結ぶというウワサ話が再び持ち上がっている。Recode(リコード)とCNNの報道によると、BuzzFeedのCEOであるペレッティ氏とグループ・ナイン・メディアのCEOであるレラー氏が、両社の協力の可能性を議論したという。米DIGIDAYも両者が会合を持ったことを確認したが、この2人は日頃から合併や提携の可能性について話し合っていると詳しい情報筋はいう。ペレッティ氏とレラー氏は長年の友人であり、レラー氏の父親であるケン・レラー氏は両方の会社の出資者なのだ(ケン・レラー氏とペレッティ氏は、ハフィントンポスト[The Huffington Post]の共同創業者でもある)。
2018年秋、ペレッティ氏は ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)とのインタビューで、大手パブリッシャー同士の大規模合併というアイデアを披露した。だが、このときに米DIGIDAYが報じたように、BuzzFeed、グループ・ナイン・メディア、リファイナリー29(Refinery29)、そしてVox Mediaは以前からこの手の話し合いを行っており、近いうちに合併話が持ち上がるといった状況ではなかった。
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そして、いまも状況は変わっていない。米DIGIDAYが1月第4集、各社の創業者や関係者に近い情報筋に接触して合併の可能性を尋ねたところ、誰もが具体的な話は何も上がっていないと答えた。その主な理由は、こうした取引を成功させるのがきわめて難しいことにある。「我々はこの件で何度か電話をしたが、答えはNoだった。(BuzzFeedには)資金がない」と、この件に詳しい情報筋は述べている。
投資家とエゴ
最大の障害となっているのは、投資家とエゴだ。BuzzFeed、グループ・ナイン・メディア、リファイナリー29、そしてVox Mediaは、さまざまなベンチャーキャピタルや戦略的なメディア投資家から何億ドルもの資金を調達している。米DIGIDAYが以前に報じたように、合併は投資家にとって投資の評価額を下げることにつながるため、積極的に進められる話ではない。また、仮に合併が成立したとしても、その企業を所有し、コントロールする権利を誰が持つのかという問題が出てくる。(少なくとも評価額で)10億ドル規模の企業を設立した人々にとって、簡単に答えを出せる問題ではないのだ。そこでいまから、大手デジタルパブリッシャー同士の合併というアイデアについて考察してみよう。
興味深いことに、このような話し合いを主導しているのはBuzzFeedのようだ。同社CEOのペレッティ氏はBuzzFeedを持続させることにもっぱら注力しており、可能性の有無にかかわらずあらゆるオプションを検討していると、同氏に近い情報筋は語っている。
このような状況では、合併が聞き心地の良いアイデアであることは間違いない。コストを削減しながら、ビジネスポートフォリオを多様化できるからだ。しかも、デジタルパブリッシングが危機的状況にあるなかでは、避けられない選択肢のように感じられる。
不幸せな結婚
しかし、こうした動きは破れかぶれの様相を呈してもいると、米DIGIDAYが取材したデジタルパブリッシャーの創設者や投資家は述べている。
「統合の動きはますます進むだろう」と、デジタルメディア業界に長く関わっている投資家のひとりは話す。「そのような統合のいくつかは、企業の弱体化がきっかけで行われることになる。問題をごまかしたり無視したりするという、誤った動機で手を組む企業の例も見られるようになるだろう。それではまるで、不幸せな結婚をしたカップルが、結婚生活を維持するために子供を設けるようなものだ」。
告白
「投資家には、将来の出来事に備えてある程度の手元資金を確保してもらいたいと思うものだ。したがって、今後は投資家を替えることが必要になるだろう。お金を失って資本を必要とする企業が出ているときに、(ワーナーメディア・インベストメンツ[WarnerMedia Investments]の閉鎖といった)良くない話が起こっている。大手投資家の退場を目のあたりにするのは、決して良いことではないのだ」──メディア技術を手がけるスタートアップの創業者
Sahil Patel(原文 / 訳:ガリレオ)