カンヌ や CES に並ぶ、デジタル動画イベント「ビドコン」:いまやメディア・広告業界のマストビジット

6月20日(米時間)より開催される「ビドコン(VidCon)」は、デジタル動画業界の「コミコン(Comic-Con)」ともいえるイベントだ。このビドコンが、デジタルメディア業界や広告業界にとって絶対に参加すべきイベントになりつつある。「カンヌライオンズ」や「CES」に並ぶ存在になっているのだ。

6月の第3週は、ブランドやエージェンシーやメディアの幹部と南フランスで過ごすより、カリフォルニア州アナハイムに行ってビドコンに参加したほうがいい。そう話すのは、グループ・エム(GroupM)傘下のエージェンシー、MECウェイブメーカー(MEC Wavemaker)のノア・マリン氏だ。彼はMECで、ユーザー体験、コンテンツ、スポンサーシップの責任者を務めている。「そうしたとしても、申し訳ないという気持ちにはまったくならない」。

年に1回開催されるビドコンは、2018年で9年目を迎える。人気の高いYouTubeスターとファンが集うイベントとしてはじまったビドコンは、デジタル動画分野のネットワーク、プラットフォーム、ブランド、エージェンシーが一堂に会する場に成長した。だが、マリン氏がビドコンに参加するのは今回がはじめてだ。彼が参加を決めた理由は、誰かのヨットでロゼを飲んでいるより、アナハイムコンベンションセンターに数日間滞在したほうが、有意義な時間を過ごせると感じたためだ。

「ビドコンでは、張り切ってさまざまなことを学び、ほかでは会えないような人たちと話し、クライアントとの仕事に直接結びつく体験ができる」と、マリン氏はいう。「これは実に有意義なことだ」。

プラットフォームが続々参加

2018年にビドコンを優先するようになった幹部は、マリン氏だけではない。2017年に動画プラットフォームをリリースしたLinkedIn(リンクトイン)は、今年のビドコンで動画クリエイターサミットをはじめて開催すると、ビドコンのCEO、ジム・ラウダーバック氏はいう。また、Snapchat(スナップチャット)やAmazon傘下のTwitch(ツイッチ)が、ビドコンの公式スポンサーを務め、YouTubeだけでなく、FacebookやTwitterがメインスポンサーとして名を連ねている。今年のビドコンは、3日間の開催期間中に3万人が来場すると予想されるほか、コンサートや業界幹部向けのプレイベントも開かれるとラウダーバック氏は語った。

Facebookは、今回はじめてファン向けのブースを出し、動画ハブの「Watch(ウォッチ)」を宣伝する予定で、ローラ・クレリーやダグ・ザ・パグといったクリエイターも姿を見せると、同社の広報担当者は述べている。

Twitterは、「ステージでプレゼンテーションを行うすべてのクリエイターに、Twitterの控え室やブースを開放する。会って話をするために、(講演の前後に)ホテルや会場の外に行く必要はもうない」と、Twitter傘下のインフルエンサーマーケティング企業のニッチ(Niche)でクリエイターコミュニティのグローバル責任者を務めるデニス・トディスコ氏はいう。

買収先・バイアコムとの関係

大手動画プラットフォームの多くが正式に参加を決めたことは、今回のビドコンにとって非常に重要かもしれない。バイアコム(Viacom)が2月にこのイベントの運営権を獲得したことを受け、イベントの独立性を示す必要があるからだ。

「ビドコンを買収したときの第1の原則は、じゃまをしないということであり、我々はこの原則を徹底している」と、バイアコム・デジタル・スタジオズ(Viacom Digital Studios)のプレジデント、ケリー・デイ氏はいう。バイアコム傘下のニコロデオン(Nickelodeon)は、長年にわたってビドコンに欠かせない存在であり、同じくバイアコム傘下のMTVもブースを出す予定だ。だが両社とも、ビドコンのほかのスポンサーと同じようにブースの出展料を払っている。デイ氏は、バイアコムの関連会社に割引価格を提供しているのではないかという質問にも、「みなさんが思っているほどではない」と述べている。

しかし、バイアコムによる買収を受けて、ビドコンは変わっていくはずだ。いまのビドコンには、3種類のトラックが用意されている。ビジネス中心の「インダストリー(Industry)」、動画製作者向けの「クリエイター(Creator)」、そしてファンを対象とした「コミュニティ(Community)」だ。デイ氏とラウダーバック氏はこれを拡大し、ビューティーブロガー、動物作品のクリエイター、DIY動画の製作者など、特定の分野に特化したトラックを設けたいと考えている。また、イベントビジネスにとどまらず、自社のメディア企業をビドコンに巻き込む方法を模索している。デイ氏はその例として、今年はじめてビドコンに参加したクリエイターのドキュメンタリー番組を、ビドコンとMTVが共同で製作するというアイデアを挙げた。

以前とは違うビドコン

ビドコンは、規模の拡大に伴って変化している。初期の頃は、トップクリエイターたちがホールでファンのあいだを歩いて登場する演出が行われていた。だが、この数年間は、安全のためにステージとサイン会にしか彼らを登場させず、それ以外のときは近くのホテルの上層階に隔離している。ホテルの出入り口に警備員を配置する徹底ぶりだ。このような隔離策のために、「YouTubeスターにリアルで会える」という雰囲気は失われている。

リーチ・エージェンシー(Reach Agency)は5年前から、ピザブランドのディジョルノ(DiGiorno)やグリーティングカードのホールマーク・カーズ(Hallmark Cards)といったクライアントをビドコンに招待している。彼らがかつて仕事をしたクリエイターや、これから一緒に仕事をする予定のクライアントと直接話をしてもらうためだ。「クライアントは米国中にちらばっている。一緒に仕事をしたいと思える人を探したり、直接話をしたりできる機会はきわめて貴重だ」と、リッチ・エージェンシーでマネージングパートナーを務めるゲイブ・ゴードン氏はいう。「ブランドは(クリエイターと)長期的な関係を築きたいと考え、投資をますます拡大している。そのため、クライアントとクリエイターが直接会える機会を作ることは、リレーションシップマネジメントの点で大いに価値があるのだ」。

カトリーナ・フランク氏は、ゴードン氏とは異なる観点からこのような機会を作っている。デジタル動画ネットワークのキン・コミュニティ(Kin Community)でブランドインテグレーション担当バイスプレジデントを務める彼女は、自社のクリエイターとブランドが取引をする場として、ビドコンを利用しているのだ。ビドコンの場で取引が成立することはないが、「ビドコンをきっかけに決まった取引は間違いなくある」と、彼女は語った。

メディア企業にも重要

ビドコンがきっかけで取引が成立する例は、増える可能性がある。これまでビドコンに参加したことがない企業のあいだで、このイベントへの関心が高まっており、参加を決める企業が出ているからだ。バイアコムによるビドコンの買収は、このイベントがマーケターにとってますます重要になっていることを示していると、マリン氏とゴードン氏は指摘する。

また、フランク氏がいうように、メディア企業にとっても重要なイベントだ。たとえば、バイアコム傘下のテレビ局だけでなく、NBCも以前からビドコンにブースを出している。従来のエンターテインメントとデジタルエンターテインメントの融合が進んでいる状況が、このイベントにますます反映されるようになるというのがフランク氏の見方だ。バイアコム幹部のデイ氏は、Netflix(ネットフリックス)、Hulu(フールー)、Amazonなど、確固たるプレゼンスを築いているストリーミングサービスがビドコンに来るのを「拒むつもりはまったくない」と述べている。

「あらゆる人を集め、彼らを代表するイベントにならなければ、(ビドコンが)オンライン動画業界の現状を反映するようにはならないと思う」と、デイ氏は語った。

Tim Peterson(原文 / 訳:ガリレオ)