Vice Mediaはここ1年、自社のコンテンツで動画広告の販売を開始し、複数のプラットフォームを通じて配信してきた。ブランドセーフな環境でリーチを提供する場として、エージェンシーへの提案にも力を入れてきた。その結果、同社の動画広告収入はグローバルベースで120%伸びたという。
Vice Mediaはここ1年、自社のコンテンツで動画広告の販売を開始し、複数のプラットフォームを通じて配信してきた。ブランドセーフな環境でリーチを提供する場として、エージェンシーへの提案にも力を入れてきた。
「ビデオエブリウェア(Video Everywhere)」と呼ばれるViceの動画広告商品は、昨年9月にスタート。広告バイヤーはViceのサイトはもとより、YouTube、Facebook、Snapchat、Apple News、さらに米国ではロク(Roku)を加えた複数のプラットフォームでインストリーム広告を買い付けられる。このひとつの背景に、Viceが持つインベントリーの直販権がある。昨年、Facebookが一部の大手パブリッシャーにインベントリーの直販を認めて以来、Viceはこれらのプラットフォームで自社のインベントリーを直接販売できるようになった。
以前は、サードパーティのプラットフォームでViceのコンテンツの隣に広告を出したいと思ったら、個々の市場を行き来しながらプラットフォームごとに買い付けるしかなかった。
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成長機会は新興市場に
Viceは若者の支持が厚いメディアだが、断片化した市場とプラットフォームをまたいで動画広告を大規模にパッケージ販売した結果、同社の動画広告収入はグローバルベースで120%伸びたという。さらに、ヨーロッパ、中東、アフリカにおける動画広告収入の伸び率は180%に及んだ。もちろん、米国に比べ、この地域のクロスプラットフォームの広告商品は歴史が浅く、もともとの数字が低かったという事情はある。Viceによると、動画広告商品のパッケージ販売は、年初以来、ヨーロッパでは7桁の収益をもたらしている。Vice Mediaの収益全体に占める欧州の動画収入は年末までには18%に達する見込みだが、グローバルな数字としては23%程度になるだろうとViceは見ている。なお、収益に関する具体的な数字は開示していない。
「ここ数年、もっと顧客中心に、クライアントのニーズに寄り添ったサービスを提供すべく、意識的に軌道修正を図ってきた」と、EMEA市場のチーフデジタルオフィサーでチーフレベニューオフィサーを兼任するルーク・バーンズ氏は述べている。「競争の激しい市場だが、これで他社との差別化が進むだろう」。
「Viceの動画CPMは、地域にもよるが、10%から20%伸びている」と、バーンズ氏は言う。氏によれば、キャンペーンの予算規模は、Viceにとっても、業界全体にとっても、概して縮小傾向にあるが、ひと月に実施されるキャンペーンの数は増加している。もうひとつの要因として、Viceが提供するクロスプラットフォームの動画広告は、プログラマティックではなく、直接バイヤーと取引されており、それだけ高い料金で売れる。Viceとしてはこの取引方法を維持する考えという。
Vice以外のデジタルパブリッシャー、たとえばインサイダー(Insider)、BuzzFeed、Group Nineなども同様の提案を行っている。当然のことながら、これには規模が要求される。分析会社のチューブラーラボ(Tubular Labs)によると、この7月、Facebook、YouTube、Instagram、TwitterをまたいだViceの動画ビューは1億にのぼった。チューブラーの報告によると、Vice EspanaやVice Indiaを含む、Viceのいくつかの地域チャネルにとって、7月はまさに記録的な月となった。7月の数字は、これらのチャネルが過去に達成した動画ビュー総数の10%を超えており、チューブラーの分析によれば、これはViceにとって最大の成長機会が新興市場にあることを示唆している。
デジタルは収益全体の30%
Vice MediaのグローバルCROで国際事業のプレジデントを兼任するドミニク・デルポールは7月に、米DIGIDAYのポッドキャストシリーズに出演している。このときの話によると、デジタルはViceの収益全体の30%を占めるという。Viceにとってデジタルメディアは、Viceニュース (Vice News)、映像制作部門のViceステューディオ (Vice Studio)、テレビとケーブルチャネルのViceland、クリエイティブエージェンシーのバーチュー (Virtue)と並ぶ、5つの収益の柱のひとつにすぎない。ウォールストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)紙が8月29日に報じたところによると、ViceはViceニュースとVicelandを統合し、ニュース部門にテコ入れする計画という。CEOのナンシー・デュバックのもとで収益事業の再編を行った結果、当初の収益目標は今年上半期中に達成されたようだ。
「動画広告に関しては、依然、デマンドに対して良質のサプライが不足している」と、マインドシェア社でフューチャー・アダプティブ・スペシャリスト・チームを率いるアレクシス・フォークナー氏は言う。「我々は断片化した市場で、最高品質の動画在庫を大量に確保しなければならない。この作業を容易にしてくれるものがいるなら、たいへんに魅力的だ。ただし、バランスは必要だ」。
「特定のクライアントに関しては」と、ファークナー氏は続ける。「コンテンツ広告の出稿では必ず、ブランドに照らして一定水準の適切性が問われる。ニュースコンテンツの隣に広告を出すことは、ブランドにとって危険を伴う。ターゲットキーワードも規模を損なわず、しかも適正な量を活用する」。
他社とのパートナーシップも
バーンズ氏にとって、次なるステップはプラットフォーム横断的にオーディエンスを相互参照し、オーディエンスセグメントを構築することだ。Viceは年初に、BuzzFeedとGroup Nineおよびチューブラーラボとアライアンスを組み、異なるプラットフォーム間で効果測定の一本化を図った。
「現在のところ、Snapchat、Facebook、YouTubeその他のギャップを埋める説得力のある方法が存在しない」と、バーンズ氏は言う。「交渉の進捗状況はプラットフォームによって異なる。一部のパートナーとは年末までにこの交渉を大きく前進させたい考えだ。そうすれば、次の一歩たるデータを中心に据えた動画広告の商品提案にも拍車がかかるだろう」。
Lucinda Southern(原文 / 訳:英じゅんこ)