Vice Media(以下Vice)はデジタルメディア発で初めてのメディアコングロマリット(複合体)になった。WPP、ウォルト・ディズニー、ニューズコープ、ハーストなど欧米メディア業界の巨人の出資を受け、テレビメディアの色彩を強めながら、極めて積極的な海外戦略を突き進んでいる。
Vice Media(以下Vice)はデジタルファーストメディアで初めてのメディアコングロマリット(複合体)になった。WPP、ウォルト・ディズニー、ニューズコープ、ハーストなど欧米メディア業界の巨人の出資を受け、テレビメディアの色彩を強めながら、極めて積極的な海外戦略を突き進んでいる。Vice CEOのシェーン・スミス氏は早急な拡大路線を持続するため、来年にIPOかM&Aなどの出口戦略を検討している。
Viceのニュース部門であるVice Newsは「ミレニアル世代のCNN」のポジションを狙っている。Viceは8月初旬、9月26日から大手ネットワークHBOでニュース番組「Vice News Tonight」を放映すると発表した。夜の時間帯で毎週30分間の番組。昨年引き入れた元Bloomberg Media最高コンテンツ責任者(CCO)、ジョシュ・タイランジェル氏がこの番組を担当する。
2008年のリーマン・ショック以降、米国人は海外コンテンツに興味を失ったと言われ、CNNの視聴率は低迷している。一方、Vice Newsはメキシコの麻薬カルテル、ロンドンの穏健なフーリガン、イスラム国潜入など刺激的なコンテンツで国際ニュースに若者を引き寄せている。
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Viceは先月、米最大スポーツ系ネットワークESPNともスポーツ番組を互いに融通することで合意している。ViceはESPN限定でスポーツ番組を制作・提供し、ViceのTVチャンネル「VICELAND」はESPNのドキュメンタリー番組を放映する。ESPNは若年層を中心にロイヤリティの高いファンをもち、デジタル化の波を受けないとみられたが、昨年、視聴者を減らしていることで米テレビ業界に激震が走った。
ESPNの親会社ウォルト・ディズニーはこれまでViceに4億ドル(約400億円)投資し、約20%の株式を保有する。ウォルト・ディズニーは先週、メジャーリーグ・ベースボール(MLB)のストリーミングサービス運営会社BAMTechにも10億ドル(約1000億円)を出資。デジタルと若年層の強化を急いでいる。
地元最大メディアと提携しインド進出
Viceはインドに拠点を置いた最初のデジタルファーストメディアになった。Vice Mediaは6月下旬、インド最大のメディア複合体であるタイムズ・グループ(Times Group)と合弁会社設立で合意。
印英字紙「タイムズ・オブ・インディア(Times of India)」によると、新しい制作拠点をインド最大の都市ムンバイに開設し、コンテンツの共同制作をする。コンテンツはVice Mediaのテレビ、モバイル、デジタルのチャネルで流通される。インド国内のジャーナリストやフィルムメーカーを雇用し、ニュースやライフスタイル番組をタイムズ・グループのネットワークで放送することに加え、北米・英で展開するTVチャンネルVICELANDをインド国内で放映する。
タイムズ・グループは1838年創業でインド最大の英字新聞「タイムズ・オブ・インディア」を保有するほか、英語のニュースチャンネル「タイムズナウ(Times Now)」など8チャンネルを運営する。インドで英語を話す層はほぼ富裕層に該当する。英語ベースのコンテンツ制作のノウハウがVice Mediaとの提携に適していたとみられる。
IPOかM&A?
CEOのスミス氏は6月のCNBCのインタビューで、独自ではなくTimes Groupと提携してインド進出した理由に関して、スピードを重視した。インドやアフリカのような国に50カ所の拠点を築くと語っている。来年を目処に(出口戦略として)IPOかM&Aを考えないといけない。メディア界から出資を集めていることに関しては「彼らは賢い。我々が行う実験の結果を見極めようとしている」と語った。
Text by 吉田拓史
Photo by TechCrunch(CreativeCommon)