一部のメディア企業にとって、コマース(アフィリエイト)はいまや収益を増やす柱のひとつではなく、自社の生命線だ。そこで、関連ページの改良に乗り出すパブリッシャーが現れている。その目的は、コンバージョンレートを高め、増収を狙うと同時に、より頻繁な訪問を人々に促し、信頼と、直接的かつ長期的な関係を構築することである。
一部のメディア企業にとって、コマース(アフィリエイト)はいまや収益を増やす柱のひとつではなく、自社の生命線だ。そこで、コマース関連ページの改良に乗り出すパブリッシャーが現れている。
画一的なテンプレートを使う代わりに、ワイヤーカッター(The Wirecutter)などのパブリッシャーは、多様な製品カテゴリーに合わせてプレゼンテーションのフォーマットを変えている。BuzzFeedなどのサイトは、コンバージョンデータを広告主との関係構築に利用するだけでなく、とりわけ読者に人気の製品をサイト訪問者に知らせるために利用している。また、ストラテジスト(The Strategist)などのサイトは、ウェブページにウィジェットを追加することで、タイムリーなコンテンツが常に閲覧者の目に入るようにしている。
これらの改良は、コンバージョンレートを高め、増収をもたらす狙いもあるが、それと同時に、より頻繁なサイト訪問を人々に促し、読者の信頼と、直接的かつ長期的な関係を構築することを目指したものだ。それらを得ることは、メディア企業にとってますます大きな優先課題となっている。
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「我々はもう完全に2.0のフェーズに突入している」と、BuzzFeedの戦略パートナーシップ担当バイスプレジデントを務めるニラ・アリ氏は、同サイトのコマース製品戦略についてこのように話す。「2.0というのはつまり、いま現在の成功をどのようにすれば拡大できるか、という段階だ」。
実績ある過去記事の活用
7月のAmazonのプライムデー(Prime Day)期間中、BuzzFeedは自社サイトのコマース関連記事の上部にウィジェットを追加し(参考記事)、これまで読者の購入頻度が特に高かった製品をピックアップして表示するようにした。ウィジェットを設置することで、しばしば30項目を超える人気製品のリストを、読者がより手軽にチェックできるようにとの狙いからだ。
ウィジェットを設置した結果、BuzzFeedのクリックスルーレートは、普段の非セール期間の7倍を記録。引き続き、過去の人気記事にウィジェットを追加する動機としては十分な数字だ。
このようなウィジェットを一例として、BuzzFeedのようなコマースパブリッシャーのあいだには、すでに成功しているものを目立たせ、新たな目的に利用しようというトレンドが生まれている。アリ氏によると、BuzzFeedのエディターたちは現在、再パッケージ化を施し、主にはFacebookを通じて再配信できそうなコンテンツを見つけるのに、同社が過去3年にわたって収集してきたアフィリエイトのコンバージョンデータを定期的に利用しているという。「コンテンツを再利用するためだ」とアリ氏は述べている。
セール情報をフィーチャー
そのほか、パフォーマンスの高いコンテンツを、常に目につくところに配置するための変更を加えるパブリッシャーもいる。ニューヨーク・メディア(New York Media)傘下の商品紹介サイトであるストラテジストは、サイトをよく訪れる読者のあいだで特に人気の高い日替わりセールの投稿が、サイトに随時アップされる新しいコンテンツに埋もれていってしまうことに気づいた(ストラテジストのホームページでは、記事が新着順に表示される)。そこでニューヨーク・メディアの開発チームは、日替わりセール記事用のウィジェットを構築し、デスクトップ版サイトを閲覧中、常に日替わりセール記事の情報が表示されるようにした。
さらにユーザーフレンドリーな仕様にするため、同ウィジェットは現在、製品を紹介するストラテジストの記事ではなく、小売業者のサイトへ直接リンクを張るようになっている。9月末に予定されているストラテジストのホームページ刷新では、この種のウィジェットがさらに追加される予定だ。
「我々は読者とのあいだに多くの信頼を築いてきた」と、ニューヨーク・メディアのeコマース担当ゼネラルマネージャー、カミラ・チョー氏は話す。「いまでは安心して製品への直接リンクを載せられるレベルに到達している」。
読者ロイヤルティの向上
特に人気の高いコンテンツを最適化する以外に、読者のブランドロイヤルティをさらに高める方法を模索するパブリッシャーもいる。製品レビューサイトのワイヤーカッターは2019年春から、読者がより幅広い種類の製品を見つけるための手助けとして、リスト形式の記事を配信していると、ワイヤーカッターの製品およびデザイン担当エグゼクティブディレクター、ブレイン・ノース氏は話す。これには製品のリストも含まれるが、今夏に入って、マネタイズにつながるリンクを一切含まないアドバイス記事も試験配信している。最近の例は、サンフランシスコを週末100ドル(約1万円)以下の予算で訪れる方法という記事だ。
「我々にとってもっとも重要なのは、読者の決断の役に立つことだ」と、ノース氏は述べた。
コマースコンテンツのマネタイズ手法は、通常の広告収入ベースのコンテンツとは異なるため、コマースパブリッシャーは早々にページデザインの扱いを変えるようになった。たとえばストラテジストは、ニューヨーク・メディアが展開する他のバーティカルのほとんどでウェブページの下部に配置されているタブーラ(Taboola)のウィジェットを、かなり前に撤去している。そのほか、読み込みを速くするために、パフォーマンスの高いコマース関連ページから一切の広告を排除するという思い切った手段に出るサイトもある。
SNS広告配信で収益拡大
新しいフォーマットやデザインをテストするのに、パブリッシャーの多くは有料のソーシャルディストリビューションを利用して効果のほどを試している。参照トラフィックに注目するコマースパブリッシャーが大半を占めるが、なかには、Facebookを実験場として、特定種類のコンテンツが自社オーディエンスの反響を呼ぶかどうか試しているところもある。パブリッシャーが2019年の現時点までにFacebookを通じたコマースコンテンツの配信に投じた予算は、前年比で75%増加していると、キーウィー(Keywee)の最高商務責任者ジャレド・ランスキー氏は述べている。
しかし、このような拡大戦略を仕掛けるにしても、ある程度の照準を絞ることは必要だ。「実際に成果を上げているのは、パブリッシャーが自社のオーディエンスの特性を理解しているケースだ」と、ランスキー氏はいう。「自社固有のオーディエンスに関連性のないコンテンツを使っても、成功は期待できない」。
Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)