「 Tumblr のブランドセーフティをさらに高めていく」:ベライゾン・メディアのCBO、I・マークマン氏

2018年12月にオース(Oath)は終りを迎えた。そしてオースを吸収して生まれたのがベライゾン・メディア・グループ(Verizon Media Group)だ。通信事業者のベライゾン(Verizon)が「メディア」の名前を入れたのは、メディアが同社にとって「中核事業」となっていたからだ。

メディア事業を成長させるため、先日ベライゾン・メディアはイバン・マークマン氏を最高業務責任者(Chief Business Officer)として迎えている。マークマン氏はテック系マーケティング分野を10年以上渡り歩いてきた人物で、同社に入る前はコムスコア(Comscore)でコンサルタントを務めていた。同氏はかつてオーバーチュア(Overture)に勤めていたが同社は2003年にヤフーに買収され、その後ヤフーで企業戦略担当バイスプレジデントを務めて2009年に退職している。同氏がヤフーを退職したのはスタートアップを立ち上げるためだ。マークマン氏のスタートアップはその後、ニュースター(Neustar)に買収されている。

米DIGIDAYは今回、マークマン氏にインタビューを行い、成長を続けるプログラマティック事業や5Gが広告に及ぼす影響、次にベライゾン・メディアが買収するであろう企業について尋ねた。なお、以下のインタビューは読みやすさを重視して、若干の編集を加えている。

――ベライゾンに入社したのはなぜか? また現在の役職を引き受けた理由は?

非常にワクワクするような申し出だったからだ。とてもユニークなタイミングで戻ることができた。現在、ソーシャルメディアをはじめ、ユーザー生成コンテンツを取り巻く環境が若干苦戦している。一方でテレビなどのチャネルが手を取りあい、屋外デジタル広告や体験型広告に挑戦し、モバイル動画や従来のテレビコンテンツも勢いを強めている。ユニークなビジネスチャンスがたくさん登場している。ハフポスト(HuffPost)やヤフー、AOLが従来から提供している体験のなかにもユニークで意義深いものがたくさん含まれている。こうしたユニークな体験と広告、コマースを結びつければ驚くほど素晴らしいビジネスチャンスが生まれる。

――ベライゾン・メディアに入社された時点の同社をとりまく環境についてどう捉えている?

ベライゾン・メディアは、人々の生活をより良いものにするため活動している。こういうと楽観的な物言いに聞こえるかもしれないが実際にそうなのだ。消費者の価値を第一に考えるということは、消費者中心の視点につながる。Yahoo!ファイナンス(Yahoo Finance)などの当社のサービスや、当社と提携している企業についても当てはまることだ。当社はマイクロソフト(Microsoft)との提携を強めている。とりわけ強力な関係を築きたいと考えているのだ。そしてそこから出発し、クロスメディアな世界の実現を目指すにあたり、我々にはこれまで獲得してきた信頼関係のあるつながりを有している。

当社はフィオス(Fios)のような先進的なテレビをはじめ、さまざまなチャネルで事業を展開している。動画広告や屋外デジタル広告、従来型のディスプレイ広告、急速に成長を続けるネイティブアドなど、あらゆるチャネルに参入している。こうしたチャネル同士のつながりだけでなく、とてもユニークなファーストパーティデータを抱える体験もある。それらを活用することで、チャネル全体に対する非常に多様な分析も可能だ。そして最後に、当社のネットワーク内外におけるユーザーとの交流の大半はコンテクストの豊富な環境で行われている。そのためブランドセーフティ面でも非常に優れているというのも当社の強みだ。

――ブランドセーフティを維持しつつ、プログラマティック事業を成長させる方法とは?

当社が広告主と一緒に仕事をするうえで重視しているのが透明性だ。当社はオムニスコープ(Omniscope)という透明性のためのツールをローンチしている。広告主のために毎日良い仕事をしていることを示せば、信頼は得られる。だが、信頼には確認も必要だ。透明性のツールが広告主にとって意義があることを明らかにし、当社の仕事内容が優れていることを示すだけでは十分ではない。広告主が望む方法で、確認を行える機会を提供しなければならないのだ。

そしてサプライチェーンも大切だ。業界でもっとも優れたサプライチェーンを維持していかなければならない。当社のネットワークが提供している体験は、我々の誇りだ。そして、それと同じくらい自分たちのパートナー企業を誇りに思っている。当社がマイクロソフトやサムスン(Samsung)と結んだ契約についてご存知だろう。こういった契約をこれからも結んでいく。そしてデジタルメディア環境だけでなく、屋外デジタル広告や音声、テレビコンテンツの進化を推し進めていく。

――ベライゾン・メディアは、ニューフロント(NewFront)でモバイルデバイスにおける広告について強調していた。5Gはそのなかでどういった役割を果たす?

当社のなかでとりわけ目覚ましい成長を見せているのがネイティブアドだ。モバイルデバイスに対し、リッチでダイナミックな没入感のある体験を提供していきたいと考えるのは自然だろう。大きく飛躍をとげ、多くのマーケターが採用してきた分野だ。そこからさらに次の段階に進めていく。たとえば、これまで以上の没入感を得られる拡張現実(AR)もそのひとつだろう。当社はIABらと協力して、この分野を切り開いてきた。5Gについていえば、まずこうした体験をさらに優れたものにできるという側面がある。

たとえばARを使って、自宅の居間にある家具を配置したとしよう。リアルな家具を配置しようとすれば多少のレイテンシーが発生する。5Gであれば瞬時によりリアルな家具を配置できるようになる。ほかにも5Gはさまざまな技術を実現しうるし、さまざまな取り組みが急速に台頭しつつある。どこの店でも5Gを活用してカスタマーに届けられるものはたくさんある。

――ベライゾン・メディアが展開する5Gのイメージキャラクターであるハイパージラ(Hypezilla)の印象は強烈だった。Yahooプレイ(Play)はまだリリースされていないが、モバイルのアプリ中心とした体験を強くプッシュしているのはなぜか?

視点を広げれば、これはリアルタイム体験としてさまざまなビジネスチャンスが考えられる。広告主の参加方法も従来のようなスポンサーからショッパブル広告まで多岐にわたる。消費者と商品を共同開発するといった極端な取り組みですら不可能ではない。さまざまな可能性があり、挑戦と学習が求められる。実に楽しみだ。機内番組も提供する予定だ。アプリの爆発的な増加とクロスプラットフォームなユーザー体験が同時で進行しており、このバランスは興味深い。

当社はサービスを複数チャネルから利用できるようにしている。たとえば、スポーツファンがYahooスポーツ(Sports)を見たいと思ったときに、アプリでも視聴可能だし、AOLやYahooから見ることもできる。さらに、ユーザーへ配信しているメールでも通知を行っている。当社が目指しているのは、こうした取り組みをより幅広く結びつけていくことだ。だが、アプリ間を結びつけるのは簡単ではない。あるアプリから別のアプリへと移行してもらうにはどうすれば良いかを考えなければならない。一方で実現すれば、より体験の質を向上させられる。たとえば、スポーツアプリからECを利用できるといったサービスが可能となるだろう。

――ベライズンはこれまでヤフーとAOLの統合に力を注いできた。ほかにも子会社の統合に関する計画はあるだろうか? とりわけメディア系の子会社について伺いたい。たとえばテッククランチ(TechCrunch)とエンガジェット(Engadget)が行っているような取り組みだ。

社は広告面においてたくさんの統合を進めている。たとえばDSPでオムニスコープを購入しやすくしているなどだ。ポートフォリオを改善するための方法は常に模索していて、とりわけオーディエンスに関してはかなり深く取り組んでいる。この体験はオーディエンスにとって何か、というところからスタートしている。さきほどのたとえ(テッククランチとエンガジェット)でいえば、オーディエンスがかぶっているという点があげられるだろう。こうした自問自答は我々も絶えず行っている。だが統合が行われていないというのは、メディア間で十分な差別化がなされているからか、実は統合計画はあるがまだ公開できないかだ。この業界を見渡せば、より広範囲なプログラマティックへの移行とサイト限定の広告展開というふたつの流れがある。全体として広告の立ち位置は進化しているともいえるだろう。

――Tumblr(タンブラー)についてはもう宣伝もしないのだろうか。ベライゾン・メディアにとってTumblrは、いまでもカスタマーに届けたいサービスのひとつなのか?

Tumblrについては、ブランドセーフティをさらに高める取り組みを進めており、多額の投資を行っている。ブランドセーフティの改善のため、広告主やプログラマティックに関するDSP、ネイティブアド部門がオーディエンスなどの評価を進めている。

質問についていえば、当社は水平方向の展開を行う企業だ。たとえばチャネル同士のつながりやブランドセーフティ、多様な分析などは当社の得意分野となっている。たとえば取引先が若い層や芸術に興味のある層を重視しているのであれば、それにあわせたサービスを提供したい。

なかにはユーザー生成コンテンツを必要とせず、そこに道を見出すマーケターも存在する。ベライゾン・メディアにとってTumblr単体がどれほど重要であるとか、そういった考え方はしていない。子会社などについて話すことはあるが、どれがとりわけ重要という見方では全体が見えてこない。それぞれをベライゾン・メディア全体のなかにどのように溶け込ませるかが重要だ。

――買収について、狙いを定めている企業はあるか?

各チャネルを見れば、デジタル屋外広告、音声広告、動画広告が成長分野であることがわかる。当社はさまざまな機能を作り上げてきた。だが一般的に見て、次に進むための絶好のチャンスがあって、そのために買収が必要なのであれば実行するだろう。ベライゾン・メディアは非常に柔軟に物事を捉える企業だ。多様な分析についても、消費者に対するさまざまな関わり方が考えられる。

私の考えでは、個人情報の問題はつまるところ信頼の問題であり、信頼の問題とはつまるところ相手のために正しいことができるかどうかだ。この業界は「消費者のために正しいことを行い支援する」というあり方からはかけ離れた状態にあるように思われる。ブランドセーフティについては、個人情報の観点から固有ID導入の取り組みが進められており、コンテクストに関して新たな取り組みがある。ベライゾン・メディアはこうしたシステムの構築に関しても独自の技術があり、ほかの企業にない立ち位置にある。だがより小規模な企業によるイノベーションも進められている。

Kerry Flynn(原文 / 訳:SI Japan)