米バニティ・フェア、年間20ドルのサブスク事業を立ち上げ:低価格のペイウォール戦略

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バニティ・フェア(Vanity Fair)は、親会社のコンデナスト(Condé Nast)やその他の雑誌社と足並みを揃えはじめようとしている。昨今の広告収入の減少を食い止めるべく、低価格の有料デジタルコンテンツのペイウォール戦略展開を始めているのだ。

2018年4月24日からは、1カ月間に4つの記事を読んだ人は、その後はデジタル限定または紙媒体プラスデジタルの購読料として、年間19.99ドル(約2200円)が必要となる(動画やスライドショーは、この定期購読料には含まれない)。バニティ・フェアはさらなる誘引材料として、記事のアーカイブを検索可能にしたり、購読者限定のニュースレターの発行、さらには購読者に対してライターや編集者へのアクセス権を付与することも検討している。

収益倍増が真の目的

「質の高いジャーナリズムが贅沢品ではなくなり、必需品になってしまっている時代においては、記事や報告書、写真、動画の制作に投資し、新しい分野やプラットフォームに展開するうえでは、これが手助けとなる。もちろん、コアな読者や視聴者を第一に考えている」と、バニティ・フェアの編集長に新たに就任したラディーカ・ジョーンズ氏は読者に向けたコメントで語った。

バニティ・フェアのデジタルディレクターのマイク・ホーガン氏は、ペイウォールの話が持ち上がったのは数年前のことであり、そのきっかけは、低空飛行のトラフィックを通して広告を追っていくのは長期的には良いビジネスモデルとはいえず、バニティ・フェアが追うべきモデルではないということが明確になったからだ、と述べる。雑誌はサイト上でのユーザー体験を向上させ、ビッグネームのリポーターを使い、分析結果および料金を支払ってでも読みたいオーディエンスは多くいるという結果を示したオリジナルリポートを強調することで、ペイウォールの土台を築いた。コムスコア(comScore)によると、2017年度には、サイトのトラフィックは22%向上し、3月の月間ユニークビジター数の合計は、2100万人にのぼったという。

「私たちには、素晴らしいオーディエンスと、プレミアムなコンテンツ、必読のコンテンツがある」と、ホーガン氏は語る。「もちろん多くのオーディエンスを獲得したい。だが私たちの真の目的は、新しい歳入の流れを生み出し、さらなるコンテンツを制作し、収益を倍増させることだ」。

バニティ・フェアはここ数年間で、表紙で元陸上選手のケイトリン・ジェンナー氏をピックアップしたり、トランプタワー内のレストランを酷評する記事を掲載してきたことで、紙媒体である雑誌の定期購読料による収入を大きく伸ばしてきた。ホーガン氏は、この成功によって、「さらなる成長を遂げ、ペイウォール方式のモデルも実現できるはずだという希望を与えてくれた」と語る。

姉妹誌の成功事例

バニティ・フェアの姉妹誌であり、デジタルのペイウォールで大きな成功を収めたといわれる、ザ・ニューヨーカー(The New Yorker)と肩を並べられるようになるのは難しいかもしれない。ザ・ニューヨーカーの紙媒体であり雑誌とデジタルのバンドルの定期購読料は年間120ドル(約13000円)であり、桁が違う。(米AAM – Alliance for Audited Mediaによると、バニティ・フェアの2017年度の定期購読料は平均で16.56ドル[約1813円]だった)。AAMによると、ザ・ニューヨーカーと同様に、バニティ・フェアの雑誌の発行部数も110万部と相当な数であり、いままで通り紙媒体を好む読者も多いため、紙媒体の雑誌とデジタルの両方を購読できるオプションもある。この会社によると、さらなるペイウォール展開も検討中だ。ヴォーグ(Vogue)やGQが候補だとみられているが、まだ詳細は明らかにされていない。「ほかの場所では得られないユニークさや、特別感のある素晴らしいコンテンツに対して、人はお金を惜しまない。私たちは、それをたくさん持っている」と、コンデナストのコンシューマー・マーケティング部門のEVPを務めるモニカ・レイ氏は語る。

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バニティ・フェアのモデルは、姉妹誌のワイアード(Wired)と共通する部分も多い。ワイアードが2018年2月から開始したペイウォールも、4回クリックしたあとは年間20ドル(約2200円)の購読料が必要だが、最初の3カ月間は無料だ(だがバニティ・フェアは、ザ・ニューヨーカーの成功例にならって、定期購読者に無料でトートバックをプレゼントするという方法を取るだろう)。

レイ氏は、ワイアードのペイウォールはまさに「大成功」であり、昨年からの紙媒体とデジタルの定期購読が200%増加した原動力となった、と語る。だが彼女は、バニティ・フェアのペイウォールのターゲットについては言及しなかった。

ペイウォールの現実

タイムズ(Times)やコムスコア(comScore)のデータによると、ペイウォールで成功を収めたパブリッシャーのニューヨーク・タイムズ(The New York Times)ですら、260万人のデジタル限定の定期購読者数、そしてデジタルトラフィック全体の3%を獲得するまでには数年かかっている。

コンデナストやそのほかの企業の出版媒体のいくつかは、多くの人が金銭を払ってでも欲しいと思うようなデジタルコンテンツを持っている。バニティ・フェアにも、エンタメやカルチャー発信系の、魅力的かつ無料の記事コンテンツが数多くある。2017年にRISJ(Reuters Institute for the Study of Journalism)が行なったアンケートによると、アメリカ国内の調査対象者の16%がオンラインで有料ニュースを購入していたが、有料のニュースに金銭を支払うかどうかに関して、79%はいまだに2017年中は「おそらく、または、まずないだろう」と答えている。また、支払う予定があると答えた人も、ライフスタイルやエンタメではなく、ニュース記事に興味があるようだ。

バニティ・フェアは、ペイウォールに行き着くほど、多くの記事を読む人はそう多くないことを認識している。だが、ハイブ(Hive)というバーティカルで、ビジネス、政治やテック系の記事に力を入れており、記事の幅広さや内容でほかよりも優れていることを主張している。ホーガン氏はさらに、ペイウォールのターゲットとなる、月に5つ以上の記事を読んでいるような人が、2017年比で54%増加しているという事実に言及している(オーディエンスのなかで、どのぐらいの割合の人がそれに該当しているかについては語ってくれなかった)。

Lucia Moses(原文 / 訳:Conyac