異端児のドナルド・トランプ候補と、初の女性大統領となるかもしれないヒラリー・クリントン候補。話題が尽きない両候補が激突する米大統領選は、米時間11月8日に実施された。日本のメディアもこぞって、この趨勢を報じている。それぞれデジタルにおいて、どう表現しているのか、まとめてみた。
デジタルテクノロジーは、報道の形も変えつつある。
異端児のドナルド・トランプ候補と、初の女性大統領となるかもしれないヒラリー・クリントン候補。話題が尽きない両候補が激突する米大統領選は、米時間11月8日に実施された。Facebookのライブ動画が正式にリリースされて約9カ月。ABCニュースやニューヨーク・タイムズなどのレガシーメディアから、NowThisなどのニューメディアまで、アメリカのメディアはこぞって、今回の報道にこの機能を利用している。
対して、日本のメディアは、まだそこまで対応はしきれていない。切っても切れない関係の国とはいえ、自国のトピックではないためか、そこまで前のめりになる必要がないところもあるだろう。しかし、デジタルの力は、報道の形を変えている。国内主要メディアのデジタル報道の姿勢をまとめてみた。
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日本経済新聞
いわゆる新聞5紙、読売新聞・朝日新聞・毎日新聞・日本経済新聞・産経新聞のなかで、一番力が入っていたのが日本経済新聞だ。ダイナミックなインフォグラフィックをTOPに押し出した、シンプルで見やすい特設サイトを用意している。しかも、このインフォグラフィック、「議員数」と「実地図」で切り替えて見ることができ、実にわかりやすい。
情報のメインとなるトピックスタイムラインには、本サイトでの速報記事リンクだけでなく、現地記者が直接送ってくる画像もまとめて掲載されている。経済紙らしく、株価の推移なども常に報じているところが印象的だ。
朝日新聞
日経ほどではないが、デジタル時代にうまく対応しているのが、朝日新聞だ。特設サイトのデザインは、いまいち洗練されていないが、速報に両候補の写真と各州の形をコラージュし、新しい演出に挑戦している。
さらに特筆すべきは、現地特派員がTwitterを利用して報じている速報もエンベットしてあるところだ。また、自社特派員だけでなく、ヒラリー候補やミック・ジャガーなど、関係者・著名人のツイートもあわせて掲載。デジタルらしい、とても自由な雰囲気が感じられる。
なお、朝日新聞では、開票速報とは別に特集ページも用意。こちらは基本的には自社の関連コンテンツまとめだが、過去100年における大統領選の開票結果や、今回の大統領選の支持率の推移などを表すインフォグラフィックも掲載され、よりリッチな表現がされている。
毎日新聞
毎日新聞も先述の朝日新聞同様、「がんばっている」という印象だ。サイトのデザインは、朝日新聞とほぼ同様。本サイトの速報とともに、著名人のツイートも合わせて掲載してある。
朝日新聞との違いは、ほとんど現地特派員の姿が見えない点。その一方で、国内識者の反応を集めている点だ。映画評論家の町山智浩氏や、哲学研究者の内田樹氏のツイートもあわせて掲載してある。
毎日新聞でも速報とは別に特集ページが用意されているが、こちらはあくまで過去記事のまとめのようだ。
産経新聞
産経新聞は、よりユーザーの声を重視している。特集ページでは、「教えて!goo」と連携して、ユーザーの声をまとめてある。デジタルの力を活用しているのは理解できるが、TwitterやFacebookなどのサービスではないところに、大人の事情を感じさせなくもない。
なお、産経新聞では、兄弟サイトとして、さまざまな社会問題を議論する「iRONNA」も運営。こちらは速報をメインとしたサイトではないが、よりインタラクティブに日本の読者の投票を実施している。
読売新聞
いまのところ、一番オーソドックスだったのは、読売新聞だ。速報ページでは、本サイトで報道している速報をそのまままとめてある。新聞5紙のなかでも一番の発行部数を誇る同紙が、もっともデジタイズされていないのが、印象的だ。
なお、読売新聞でも朝日新聞同様に、速報とは別に特集ページも用意。こちらでは、両候補の過去の発言をタイムラインで表したり、それとともにさまざまな情報を整理した図版も転載されている。見やすく構成されているが、この図版は、あくまで新聞紙面で利用されたものの流用のようだ。
NHK
なお、新聞5紙ではないが、NHKの特集ページはやはり目を見張るものがある。さまざまなグラフや動画、クイズなども用意されており、実に多角的に報じている。また速報部分でも、米ABCとの提携で、しっかりと抑えられているようだ。
Written by 長田真