NFLのフィラデルフィア・イーグルスは、多くのライブ動画を配信してきたが、ライブ価値のあるコンテンツを厳選することで、オンデマンドを好むターゲット層へ最適なコンテンツを届けようとしている。また、ライブストリーム社の技術を活用して、Facebookライブ動画やTwitterには提供出来ない体験を生み出している。
米プロフットボールリーグ(NFL)のフィラデルフィア・イーグルス(Philadelphia Eagles)のメディア戦略は、ライブ動画の導入を検討しているパブリッシャーに重大なメッセージを投げかけている。それを本当にライブする必要があるか自問すべきというものだ。
イーグルスは、以前から動画のライブ配信に取り組んでいる。NFLのシーズン開幕中は、チームのWebサイト、モバイルアプリ、FacebookやTwitterのソーシャルチャネルなどで、毎週10~15時間のライブ動画を配信してきた。
ライブ番組を減らした理由
たとえば、毎試合の前後に、同チームのコンテンツマネージャー、クリス・マクファーソン氏がホストを務める2時間のスタジオ番組を配信。また、レポーターのデイブ・スパダーロ氏がホストを務める、30分番組も毎日配信している。さらに、ハーフタイムレポートや記者会見の完全生中継を、自社プラットフォームやソーシャルチャネルで配信しているのだ。
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彼らのライブ番組は、スポーツファンが見慣れたテレビのそれと、ごく似た構成だ。高画質のカメラとスタジオセットを用意し、試合の動画を流して分析や解説を加えたり、CGやマルチアングル映像を駆使したりしている。こうした番組を制作しているのは、15名の常勤スタッフと15名の臨時スタッフから成る、イーグルスの動画部門だ。
ただし、トータルでみると、イーグルスが制作するライブ番組の配信時間はここ数年減少していると、イーグルスでスタジオライブ制作担当マネージャーを務めるマーク・ルブラン氏は指摘する。その理由は、「制作ができなくなった」からではなく、「ライブ配信すべきものを選ぶときの考え方が変わった」ためだという。
ライブの価値がある内容
たとえば、イーグルスはかつて、2時間の視聴者参加型のライブ番組「イーグルスライブ(Eagles Live)」を制作し、自社のデジタルプラットフォームで毎日配信していた。ルブラン氏によれば、この番組はそれなりのオーディエンスを獲得していたが、それ以上増える見込みはなかった。そのため、質の高いライブ番組の制作にリソースと人員をつぎ込む根拠を見い出せなくなってきたという。イーグルスはいまも、「イーグルス360(Eagles 360)」と呼ばれる同じような番組を配信しているが、これはライブではない。
「人々はいまもこの番組を観に来てくれているが、彼らは自分たちのスケジュールの都合に合わせて視聴している」とルブラン氏は話す。「我々はオンデマンドの世界に生きている。『コンテンツを楽しむのに都合がいい時間はいつか?』と、聞かれれば、『自分が都合がいいと思えるときだ』と、オーディエンスは答えるだろう」。
つまり、コンテンツが「タイムリーでユニークなものであるか、ニュース的価値がある場合以外は、そのコンテンツをライブにする必要はない」と、ルブラン氏は述べる。
いかにライブを実施するか
イーグルスは、試合のある日には多くのライブ動画を配信している。ルブラン氏によれば、シーズン中の試合がある日に配信されるライブコンテンツは、平均で6万~7万のユニーク視聴者数を獲得しているという。視聴者の約85~90%は地元フィラデルフィア以外の地域に住む人々だ。つまりイーグルスは、主要メディアでイーグルスの試合を放送しないエリアのファン層に向けてサービスを提供していることになる。
また、ほかのメディアが報じないコンテンツを提供できる場合にも、ライブ配信は行われている。たとえば11月28日(米国時間)には、新たにイーグルスの殿堂入りを果たした2人の人物を表彰するためのセレモニーが開催された。イーグルスはその模様をライブ中継したが、このイベントを中継したメディアはほかになかった。
イーグルスはFacebookでもストリーミング配信を行っている。ただし、Facebookのライブ動画ツールを使って直接配信しているわけではない。ライブストリーミング技術を提供する企業、ライブストリーム(Livestream)と提携して番組を配信しているのだ。そのため、Facebookやペリスコープ(Periscope)だけでなく、自社のサイトやアプリでも配信ができるという。
Facebookではない理由
このようなやり方をする理由として、Facebookやペリスコープは、何が実現できるのかを考えたときに「欠点」があるからだとルブラン氏は説明する。たとえば、Facebookのライブ動画やTwitterでは、動画から前後の不要な部分をカットすることができないが、ライブストリームならその編集ができる。
「我々は、オンデマンドを好む視聴者に対して、『チャンネルを合わせ続けて』画面を見続ける状況にしたくない。それでは、素晴らしい体験を生み出すことはできない」と、ルブラン氏はコメントした。
Sahil Patel(原文 / 訳:ガリレオ)
Image via the Philadelphia Eagles