サードからファーストへ、 Cookie 変革後の予期せぬ結果

サードパーティCookieは崩壊しつつある。このことは、モバイルデバイスの利用と、そこでのマーケティングが台頭して以来、ずっと語られてきたが、いまになってようやく切迫感を帯びるようになった。

パブリッシャー、アドテクベンダー、エージェンシーは皆、ファーストパーティCookieに基づくモデルを導入し、サードパーティCookieへの依存度を軽減しようと躍起になっている。データプライバシー規制による圧力と、ブラウザのアンチトラッキング機能導入によって、このことが将来のビジネスの存亡にかかわる重大事となった。

市場全体を揺るがす大変革の例に漏れず、この変化も、少なくとも短期的には副作用を伴う。予期せぬ結果の例を、以下にいくつか紹介しよう。

ウォールドガーデンがさらに強大化

米国のテックプラットフォームによる支配を緩和し、消費者のプライバシーを守ろうとするEUの試みである一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:以下、GDPR)が、皮肉なことに、期せずしてGoogleやFacebookをさらに増長させたと指摘する意見は多い。同じことが、オンライン広告のエコシステムをサードパーティでなくファーストパーティCookieを中心に再構築しようとする取り組みにもあてはまる。

当局による規制強化が、以前から囁かれていた「Cookieなき未来」(つまりサードパーティCookieなき未来)を推進したのは確かだ。ただし実際には、SafariやFirefoxなどのブラウザがアンチ広告トラッキング機能を絶え間なく更新するようになってはじめて、パブリッシャー、アドテクベンダー、エージェンシーは本当に危機感を抱き、効果的な代替手段を模索しはじめた。

パブリッシャーはこれまで以上にファーストパーティデータ戦略を積極的に推し進め、ファーストパーティCookieの比重を増やしているが、トップをひた走るのは変わらずGoogleやFacebookだ。「ウォールドガーデンはCookieの死につけこんで勢いづいている」と、メディアコム・ドイツ(MediaCom Germany)のインタラクション担当マネージングパートナー、オリバー・ゲルツ氏はいう。「彼らは自前のIDをもち、ユーザーは常時ログインしているため、その質はきわめて高い。この移行における勝者は彼らだ」。

「消費者により多くの選択肢を」という名目で、さまざまな変化が加えられている。Googleは広告ビジネスを再編し、プライバシーを中心に据えて、初のプライバシー担当責任者を指名したと、アドエクスチェンジャー(AdExchanger)が報じている。これ以前に、GoogleはGDPR対応として、アトリビューションツール「DoubleClick ID」を2018年に廃止したほか、利用者が選択できる広告トラッキング機能をChromeブラウザに追加するなど、ほかの変更も発表している。

「Googleはバランスのとれたアプローチをとっており、移行のスピードは(Appleと比べて)はるかに遅い」と、ソースポイント(Sourcepoint)の共同創業者であるベン・バローカス氏はいう。「GoogleとFacebookは、Appleと比べてはるかに厳しい監視の目にさらされている。プライバシーやブラウザコントロールから反トラスト法(の規制および罰金)まで、綱渡りの状態だ。プライバシー規制を強化すれば、Googleを助け、彼らの『ウォールドガーデン』のエコシステムの支配を促進することになる」と、同氏は述べた。

ログイン戦略やアライアンスに逆風

ログイン戦略の開発において最後尾にいるパブリッシャーは、好位置につけている。そもそも、個々のパブリッシャーのログイン戦略は、サブスクリプションを伸ばすためのものであって、非サードパーティCookieに依存するモデルの構築を目指しているわけではない。多数の媒体のポートフォリオをもつメディア企業は、GoogleやFacebookのログインオーディエンスに対抗するうえで、ログイン戦略を必須要素とみなしていたが、同じことがログインアライアンスにもいえる。ドイツには多数のログインアライアンスが存在し、そのひとつであるNetIDには、パブリッシャー、放送局、ISPが名を連ねる。

しかし、いまや彼らへの逆風が強まっており、先行きは不透明だ。「パブリッシャーは、団結して行動しなければ、緩慢な死を待つのみだと気づいている」と、ゲルツ氏はいう。「だが、ログインコンソーシアムは大きな支持を集めているとは言えない」。重要な問題として、それらは大規模な共通ログインシステムを謳いながら、実際には消費者にログイン状態を維持させることができていない。原因は、ログインを維持することで消費者が得る利益が、GmailやFacebookなどのプロダクトの利用と比べて不明確であるためだと、ゲルツ氏は付け加えた。

似非IDアドテクベンダーの乱立

独立アドテク企業は、サードパーティCookieなき未来について、おおむね楽観的だ。というより、彼らが測定と広告ターゲティングの主要な手段となっている、現在のデジタル広告取引のエコシステムにおいて、移行を円滑化し、ビジネスを存続させるためには、そうならざるを得ないのだ。

共通IDという解決策は数年前からあるが、パブリッシャーはもっと大きな問題の解決に追われていて、注目度は高いとはいえなかった。しかし、ブラウザのアンチトラッキング機能導入と、リアルタイム入札への規制強化により、共通IDがいま再び脚光を浴びている。ただし、IDベンダーやコンソーシアムには本当に良質なものもあるが、ろくでもないたわごとも山ほど喧伝されている。

パブリッシャーは、似非(えせ)IDアドテクベンダーによる売り込みの洪水に備えなくてはならない。すでに乱立しつつあるこうした業者には、機に乗じた大言壮語と実現性のない技術の口約束以外には何もない。「すでに市場はノイズだらけになっている」と、アドテクベンダーのアドフォーム(Adform)の共同創業者で最高技術責任者(CTO)も務める、ジェイコブ・バク氏はいう。IDコンソーシアムのデジトラスト(DigiTrust)のメンバーでもある同氏は、「IDの話をするアドテク企業は多いが、彼らの話はでまかせばかりだ。技術的裏付けはほとんどない」と述べた。

パブリッシャーの短期的損失

パブリッシャーが強烈なボディブローを食らうのはもはや常態化している。2017年のAppleのアンチトラッキング方針変更により、パブリッシャーがSafariユーザーをマネタイズできなくなったのがはじまりだった。Firefoxが主力ブラウザに食い込むドイツなどの市場でも、同じく損害を被っている。

長期的にみれば、ファーストパーティCookieの勝利は、サブスクリプションから広告まですべてのマネタイゼーションにおいて決定権を回復するという、パブリッシャーの悲願達成を後押しするものだ。しかし短期的には、ハードルはさらに高くなるかもしれない。すべてのパブリッシャーからの信任を得た市場規模の共通IDソリューションはまだ存在しないうえ、消費者のプライバシー保護の名のもとに、ブラウザが今後加えるさらなる変更にも備えなくてはならないからだ。

Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)