アドブロックサービスのアドブロックプラス(AdBlock Plus)は先日、アドエクスチェンジを立ち上げ広告販売を開始するという計画を発表して波紋を呼んだ。英DIGIDAYが大手パブリッシャー6社に話を聞いたところ、肯定的なコメントはまったくなく、 不信から憤慨まで、いずれも否定的な評価しか得られなかった。
アドブロックサービスのアドブロックプラス(AdBlock Plus)は先日、アドエクスチェンジを立ち上げ広告販売を開始するという計画を発表して波紋を呼んだ。発表されたパートナーのGoogleとアップネクサス(AppNexus)は、参加を望まないことを宣言するに至った。
このニュースは、メディア業界が毎年、秋にドイツのケルンで一堂に会する世界最大のアドテクイベント「ドメキシコ(Dmexco)」のタイミングに合わせたものだった。アドブロックプラスのパートナーであるコンボタグ(ComboTag)は声明で、アップネクサスがこのプロジェクトと距離を置いたことについて「驚きであり失望している」と述べ、すでに1000のパブリッシャーが参加していると主張した(どのパブリッシャーかは不明)。
しかし、ケルンに集まったパブリッシャーたちは、アドブロックプラスならこのスキームを実現できるという考え方に冷や水を浴びせた。実際に、英DIGIDAYが大手パブリッシャー6社に話を聞いたところ、肯定的なコメントはまったくなく、 不信から憤慨まで、いずれも否定的な評価しか得られなかった。
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「広告を減らしたいのではない」
グルナー・ヤール(Gruner + Jahr)で成長プロジェクトと戦略パートナーシップを担当するマネージングディレクターのオリバー・フォン・ベルシュ氏は次のように語った。「アップネクサスとGoogleは参加を否定した。単なるPRの話題作りなのだろうが、筋違いすぎて、PRとしてもふさわしくない。彼らはいま、アドネットワークとして行動している。彼らはルールを定めて門番になりたいのだろうが、この動きは犯罪行為の可能性もある。彼らは、所有しているわけではないインベントリを販売したがっているのだ」。
ビジネスインサイダー(Business Insider)のマネージングディレクター、ジュリアン・チャイルズ氏は、このエクスチェンジが実際に影響力をもつことはないだろうと考えている。「これが影響力をもち、質の高いインベントリがエクスチェンジに供給されることになるとすれば驚きだ。このような話に対するパブリッシャーの回答は素っ気ないものになると思う」と、同氏は言う。
「広告からユーザーを守るサービス」と自らを位置付けてきたアドブロックプラスが、「お金を払うユーザーが許容すると同社が見なした広告」は表示されるようにしたことが、本当に驚きを呼んでいる。ビジネスインサイダーのチャイルズ氏は次のように続けた。「ユーザーのためにゴールポストが位置を変え続け、パブリッシャーは無差別に標的にされるというのだから驚きだ。アドブロックプラスが広告の表示を減らしたいのではなく、実は増やしたいのだということが明らかになった。本性を現した」。
「嘘つきのゆすり屋にレベルアップ」
インタラクティブ・アドバタイジング・ビューロー(Interactive Advertising Bureau:以下、IAB)のCEOで、アドブロックプラスへの敵意を明らかにしてきたランダル・ローゼンバーグ氏は、アドブロックプラスを批判せずにはいられなかった。
ABP graduates to lying extortionist: "Google & AppNexus: We're not involved w/ Adblock Plus plan to sell ads" https://t.co/0zWE5eeFnT #iab
— Randall Rothenberg (@r2rothenberg) 2016年9月13日
ABPは、嘘つきのゆすり屋にレベルアップした:”Googleとアップネクサス、アドブロックプラスの広告販売計画には無関係と表明”
businessinsider.de/appnexus-google-refute-adblock-plus-partnership-2016-9 … #iab
アドテク専門のニュースメディア、エクスチェンジ・ワイヤー(ExchangeWire)の創設者、シーラン・オーケン氏は、「どんなに厚かましいアドネットワークもこのようなことはやらないだろう」と語った。
「1周回って興味深い」
ニューヨークタイムズ・インターナショナル(The New York Times International)のグローバルデジタルビジネス担当ディレクター、ミーガン・ロペズ氏は、この新計画のビジネスモデルは異様であり、これに関わるあらゆる当事者は倫理的に問題を生じると語る。
「ユーザーが広告をブロックできるようにしながら、その一方でパブリッシャーから分け前を取って、広告をブロックするサービスであるにもかかわらずそのサイトで広告が動くようにするのだ。3者がどれくらい分け前を取るのか、また実際にはどのような組み合わせになるのかという点が興味深い」とロペズ氏は語る。
フィナンシャル・タイムズ(Financial Times、以下FT)の最高コマーシャル責任者のジョン・スレード氏は、広告は嫌だという立場を明らかにしている人たちへの広告表示はマーケターにとってまったく魅力がないと語る。「そして、サポートするエコシステム内に含まれると思われる、かなり興味深い複雑な優先課題については言うまでもない。私に言わせれば、業界全体に渡るアドブロック問題に役立つところはまったくなく、むしろ逆効果だ。おぞましい」と同氏。
「これは解決法にはならない」
ブランドのマーケターたちも、この発表への冷たい反応では負けていない。ドイツテレコム(Deutsche Telekom)のメディア責任者であるゲルハルト・ロウ氏は、この動きを「愚かだ」としたうえで、業界はアドブロック問題の解決をテクノロジーに頼るべきではないと語った。「我々はアドブロックを非常に憂慮しており、大きな問題だと考えているが、これは解決法にはならない。消費者に関する問題を、テクノロジーで解決しようとするべきではない。消費者がうんざりしているのか、広告が多すぎるのかなど、広告がそもそもブロックされる理由を究明するべきだ。それが我々が解決していく方法だ」とロウ氏は付け加えた。
Jessica Davies (原文 / 訳:ガリレオ)
Image from Thinkstock / Getty Images